論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

8月

ステージIII結腸癌に対するadjuvant療法としてのcapecitabineの有用性

Twelves C, et al., N Engl J Med. 2005; 352(26): 2696-2704

 Bolus LV/5-FU投与は、結腸癌に対する標準的adjuvant療法である。一方、経口fluoropyrimidine製剤のcapecitabineは、転移性結腸・直腸癌患者に対するfirst line治療においてLV/5-FU療法の代替療法として確立されている。今回、結腸癌患者に対してcapecitabineをadjuvant療法として用い、その有用性を評価した。
 年齢18〜75歳、ECOG PS 0〜1で、ステージIII結腸癌の治癒切除例1,987例についてcapecitabine投与群(1,004例;1,250mg/m2の1日2回経口投与を2週間継続して1週間休薬、3週ごと8サイクル繰り返し)、またはbolus LV/5-FU投与群(983例;Mayo regimenを5-FU 425mg/m2、4週ごと6サイクル繰り返し)に無作為割り付けし、24週間にわたり治療した。Capecitabine投与群がbolus LV/5-FU群と少なくとも同等のDFSを示すかを有効性に関する主要評価項目とし、グレード3または4の毒性発現を安全性に関する主要評価項目とした。
 中央値3.8年の追跡の結果、capecitabine群のDFSはbolus LV/5-FU群と比べて少なくとも同等であった(intention-to-treat解析で非劣性の限界値を1.20とした場合、ハザード比上限の比較においてp<0.001)。また、capecitabineはRFSを有意に改善した(ハザード比0.86;95%信頼区間0.74〜0.99;p=0.04)。OSについては両群に有意差がなかった(p=0.07)。グレード3または4の有害事象発現はbolus LV/5-FU群よりも有意に少なかった(p<0.001)。
 結腸癌のadjuvant療法として、capecitabine経口投与はbolus LV/5-FU療法の有効な代替療法となることが示唆された。

考察

本邦で生まれた結腸・直腸癌治療薬capecitabineの有用性

 本論文の結果はASCO 2004において報告された(X-ACT trial)。このX-ACT trialにより、ステージIII結腸癌に対する補助化学療法としてcapecitabineはLV/5-FU(Mayo regimen)に劣らない(RFSは有意に改善される)ことが証明された。さらにASCO 2005では追跡中央値51ヵ月の最新の結果が報告され、capecitabineの有用性は変わらないことが証明されている。毒性としてはhand-foot syndromeがあるものの、グレード3または4の副作用はcapecitabine群で有意に低い。Capecitabineは経口剤であるため外来通院での投与が容易なことも、実地臨床において有利な点である。今後、欧米ではL-OHPやCPT-11との併用療法に関しても研究が進むと思われる。本邦では臨床試験が終了しているものの、未だ結腸・直腸癌に対して使用できない状態である。本邦で生まれたこの標準治療薬の早期の承認が望まれる。

監訳・コメント:国立病院機構名古屋医療センター 近藤 建(外科・部長)

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