論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

10月

進行結腸・直腸癌におけるFOLFIRIとFOLFOX 4との無作為化比較第III相試験:
Oncologico Dell’Italia Meridionaleグループによる多施設共同試験

Colucci G, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(22): 4866-4875

 未治療の進行結腸・直腸癌患者を対象として、LV/5-FU+CPT-11(FOLFIRI)とLV/5-FU+L-OHP(FOLFOX 4)を比較する臨床第III相試験を実施した。
 合計360例の化学療法未施行の結腸・直腸癌患者(年齢18〜75歳、組織学的に確認された局所進行/転移結腸・直腸癌、2方向評価可能病変を有し、推定余命3ヵ月以上、ECOGのPSが0〜2)について、2群に無作為割り付けを行った。A群(FOLFIRI)ではday 1にCPT-11 180mg/m2とLV 100mg/m2を2時間かけて点滴静注し、5-FU 400mg/m2 bolus静注後、5-FU 600mg/m2を22時間かけて持続静注、day 2にはCPT-11以外をday 1と同様に投与した。またB群(FOLFOX 4)では、day 1にL-OHP 85mg/m2とLV 100mg/m2を2時間かけて点滴静注し、5-FU 400mg/m2をbolus静注後、5-FU 600mg/m2を22時間かけて持続静注、day 2にはL-OHP以外をday 1と同様に投与した。化学療法は2週間毎に繰り返した。
 A群およびB群の評価可能症例数は164例および172例であった。奏効率(CR+PR)は、評価可能症例集団、ITT集団とも両群に有意差はなく、ITT集団ではA群で31%(95%CI 24.6〜38.3%)、B群で34%(95%CI 27.2〜41.5%)であった(p=0.60)。A群およびB群は、TTP中央値(7 vs. 7ヵ月)、奏効期間(9 vs. 10ヵ月)、OS(14 vs. 15ヵ月)のいずれも同等で、両群間に有意差は認められなかった。毒性は両群とも軽度であり、A群では脱毛と胃腸障害が最も多く、B群では血小板減少と感覚神経毒性が最も多かった。グレード3と4の毒性は両群とも少なく、両群間に有意差は認められなかった。
 FOLFIRIまたはFOLFOX 4を受けた患者の奏効率、TTP、およびOSに差は認められなかった。両治療法とも、未治療の進行結腸・直腸癌患者に対するfirst line治療として有効と考えられた。2つの併用療法の違いは主に毒性プロファイルであった。

考察

毒性プロファイルを考慮したCPT-11、L-OHP選択の可能性を示す

 本論文はイタリアのグループによるFOLFOX 4とFOLFIRIの無作為化比較試験の報告である。世界的な標準療法であるFOLFOX、FOLFIRIの報告は数多く存在するが、直接、両レジメを比較した報告は意外と少ない。その点からも興味深い報告である。
 両レジメ間の効果および有害事象発現頻度には差がみられなかったことから、いずれもfirst line治療として選択可能であると考えられる。既報告の各トライアルに比べると、奏効率、TTP、OSともに低い結果であったが、著者らは本報告とこれらの報告との間に患者subsetの差があったものと考察している。一方、有害事象に関してFOLFOX 4群には神経毒性と血小板減少が、FOLFIRI群には消化管毒性と脱毛というそれぞれ特徴的な毒性プロファイルがみられている。この点が症例により両レジメを使い分ける1つのポイントになると考えられる。

監訳・コメント: 旭川医科大学医学部 河野 透(外科学第2講座・助教授)

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