切除不能結腸・直腸癌肝転移例におけるFUDR肝動注と
L-OHPベースの全身化学療法の併用に関する臨床第I相試験
Kemeny N, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(22): 4888-4896
切除不能結腸・直腸癌肝転移例を対象とする第I相試験を実施し、肝動注とL-OHPベースの全身化学療法の併用時のMTDを検討した。
組織学的に確認された結腸・直腸癌かつ切除不能肝転移を有する36例(肝外病変なし、肝照射歴なし、FUDR投与歴なし、KarnofskyのPS<60%、既治療あり89%)に対して、CPT-11+L-OHP(A群)またはLV/5-FU+L-OHP(B群)による全身化学療法と、FUDR+DEX肝動注の併用療法を行った。全身化学療法は2週間毎に行い、FUDRは2週間毎、DEXは28日毎に肝動注で投与した。全身化学療法は、A群6段階、B群4段階のdose escalationを検討した。
A群(21例)のMTDは、L-OHP 100mg/m2、CPT-11 150mg/m2、FUDR 0.12mg/kg×30mL/ポンプ流量率であった。B群(15例)のMTDはL-OHP 100mg/m2、LV 400mg/m2、5-FU 1,400mg/m2(48時間持続静注)であり、FUDRはA群と同じであった。A群とB群におけるグレード3または4の毒性は、下痢(24% vs. 20%)、好中球減少(10% vs. 7%)、神経毒性(24% vs. 20%)、ビリルビン値>3mg/mL(5% vs. 7%)であった。奏効率はA群90%、B群87%であった。OS中央値はA群、B群でそれぞれ36ヵ月、22ヵ月であった。A群の7例は最終的に肝切除可能となった。
FUDRとDEXの肝動注+L-OHP全身投与による併用療法は、結腸・直腸癌患者に安全に投与でき、忍容性のある治療法であった。本検討の前に実施された全身療法中に病変が増悪したにもかかわらず、高い奏効率(88%)が得られ切除の可能性が出てきたことは、結腸・直腸癌肝転移例に対するfirst lineまたはsecond line治療として、本併用療法をより大規模な試験において評価すべきであることを示唆する。
肝動注に理解あるオンコロジストからの一提案
Nancy Kemeny先生のFUDR肝動注+L-OHPベース全身化学療法についての第I相試験である。併用する全身化学療法として、FOLFOX 6、FOLFOXIRIに似た2つのレジメが用意されている。欧米を中心に普及した肝動注化学療法は、相次いで展開された多数のRCTで否定され、「無駄な30年間」とも酷評された。一方、わが国ではIVR技術を用いた肝動注化学療法の開発とともに、安全に長期間の治療が可能となり、今日まで大腸癌肝転移の一戦略として日常診療のなかで重要な地位を占めてきた。しかしながら、L-OHPの保険認可とともに、その適応が一気に制限されつつあり、最近の局所療法関連の学会では動注療法の存続について真剣に議論されている。直接効果に優れている肝動注の特性を生かしながら、信頼度の高い全身化学療法を併用することで予後延長効果を得ようとする本論文の治療主旨は共感できる点が多い。第I相ではあるが、安全性が確認されたことに加えて、奏効率や中央生存値に関しても従来のWHF動注療法やL-OHPベース療法と比べて、見劣りしないことも注目すべきである。
監訳・コメント:京都第一赤十字病院 竹内義人(放射線科・副部長)