論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

2月

直腸癌患者を対象としたL-OHP/capecitabine+外照射による術前療法の臨床第II相試験:RadiOxCape study

Machiels J-P et al., Ann Oncol. 2005; 16(12): 1898-1905

 術前放射線療法は局所進行直腸癌患者の局所再発率を低下させることが示されている。また、capecitabineとL-OHPは、いずれも進行結腸・直腸癌患者の治療において抗腫瘍作用を示す薬剤であり、しかも放射線感受性増強作用を有する。それゆえこれらの薬剤は、術前放射線療法の局所コントロール効果と遠隔転移予防効果を向上させることが期待される。
 組織学的に証明された直腸腺癌患者(T3〜T4および/またはN+、年齢≧18歳、ECOGのPS≦2、骨盤照射歴のない患者)40例(中央値63歳、33〜80歳)を対象として、放射線治療(1.8Gy×5回/週×5週以上、総照射量45Gy、3次元原体照射)に、L-OHP静脈内投与(50mg/m2/週×5週)とcapecitabine経口投与(825mg/m2を照射日ごとに1日2回)を併用した。放射線照射完了6〜8週間後に手術を施行した。主要エンドポイントは安全性と病理学的奏効率(pCR)による有効性であった。
 最も高率に発現したグレード3/4の有害事象は下痢であり30%の患者に発現した。5例の患者(14%)にpCRが認められた。Dworak分類によれば、さらに6例(18%)の患者に良好な腫瘍縮小が認められた。
 術前の放射線療法とcapecitabine/L-OHPの併用療法は直腸癌のdown stageに有効である。

考察

局所進行直腸癌に対する術前放射線化学療法の組織学的治療効果への期待

 本研究は局所進行直腸癌患者に対する術前放射線療法とcapecitabine/L-OHPの併用療法により、5例の患者(14%)にpCRが認められたことに意義があると思われる。局所に対する治療効果は放射線のみならず化学療法の直接効果と放射線感受性増強効果が期待されている。またこれらの主な効果は主病巣と周辺組織への浸潤病巣や所属リンパ節転移病巣だけではなく、全身療法である化学療法は遠隔転移巣に対する効果も期待できる。進行直腸癌の局所再発率を抑制する意味で本療法は有効であると結論している。
 以上のことから本研究では病理学的奏効率(pCR)をプライマリーエンドポイントとしたことが重要な点である。病理学的組織効果で治療効果を判定することは新しい試みであり今後のさまざまな局所進行消化器癌に対する術前療法のよい指標になるものと思われる。

監訳・コメント:聖マリアンナ医科大学医学部 木村 正之(消化器・一般外科・講師)

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