論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

2月

結腸癌術後補助療法試験の主要エンドポイントとしてのDFSとOS:18の無作為化試験20,898例の患者データ

Sargent DJ, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(34): 8664-8670

 結腸癌術後補助療法の臨床試験において従来から全生存期間(Overall Survival; OS)がエンドポイントとされ、その追跡期間としては5年間が適切であるとされてきた。しかし、より短い期間で評価しうるエンドポイントを用いて、治療法の比較が可能な説得力のある根拠が得られれば、臨床試験から日常診療へのよりすみやかな移行が可能となるであろう。
 5-FUベースの結腸癌術後補助療法について検討された18件の第III相無作為化試験から、個々の患者データを用いたプール解析を実施した。対象の試験は43群を含み、プールされたサンプルサイズは20,898例であった。3年無増悪生存期間(Disease Free Survival; DFS)を主要エンドポイントとして、5年OSに置き換えることが適切であるとの仮説を立て、検討を行った。
 1〜5年後の年間再発率はそれぞれ12%、14%、8%、5%、3%であった。再発から死亡までの期間の中央値は12ヵ月であった。再発の80%は術後3年以内に認められ、術後3年以内に再発した患者の91%は術後5年以内に死亡した。3年DFSと5年OSとの相関係数は0.88であった。各試験における対照群と実験群を比較すると、3年DFSと5年OSとのハザード比の相関係数は0.94であった。各試験についてDFSとOSの両エンドポイントでlog-rank検定を行ったところ、25試験のうち23試験(92%)で結論が一致した。従来のエンドポイントである5年OSに代わり3年DFSを用いることは妥当と考えられた。
 結腸癌術後補助療法の第III相試験において、DFSとOSは各患者および横断的な試験でともにきわめて相関していた。これらの結果は、中央値3年の追跡によるDFSは5-FUベースのレジメンによる結腸癌術後補助療法臨床試験において適切なエンドポイントであることを示唆する。ただしDFSのぎりぎり有意な改善は必ずしも有意なOSの有意な改善と同義とは捉えられないかもしれない。

考察

結腸癌術後補助化学療法におけるDFSのOSに対する代替性が明らかに

 本論文は、1977年から1999年までに登録が行われた18のPhase IIIを統合することで、およそ20,900人ものデータを集め、今後5-FUベースのレジメンによる結腸癌術後補助療法臨床試験を行う際のDFSのOSに対する代替性を示した。代替性を検討する際には、一般に両エンドポイントに対する治療効果が十分相関しているか、またDFSに基づいた結論とOSに基づいた結論が一致しているかどうかが重要である。本論文では、OS・DFSに対する5-FUベースレジメンの治療効果を表す両ハザード比の相関が0.94と驚くほど高く、25試験のうち23試験(92%)で結論が一致していたため、十分に代替性があると考えてよいだろう。一方で注意すべきこととしては、代替性の妥当性は疾患や治療方法に依存するため、他の疾患、例えば胃癌や乳癌においても同様の結論が言えるか、また作用機序の異なる治療法においても同様の結論が言えるかどうかについては明らかではない。今後、他の疾患や他の治療法における同様の検討も重要となってくるものと思われる。

監訳・コメント:京都大学大学院医学研究科 大庭 幸治(疫学研究情報管理学分野・助手)

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