論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

4月

進行結腸・直腸癌におけるfirst line治療に関する無作為化比較第III相試験:高用量5-FU持続静注によるLV/L-OHP vs bolus LV/5-FU

Hospers GAP et al., Ann Oncol. 2006; 17(3): 443-449

 最近5年間に報告された、進行結腸・直腸癌患者に対して、LV/5-FUと新薬(capecitabine、CPT-11、L-OHP、bevacizumab、およびcetuximab)を組み合わせた第III相試験が行われている。LV/5-FUにL-OHPを併用すると奏効率(RR)が20〜50%、PFSが7.5〜9.0ヵ月となることが示されている。そこで、結腸・直腸癌のfirst line治療におけるLV/5-FU/L-OHPレジメとオランダの標準療法であるLV/5-FUレジメの効果および毒性の比較検討を目的とした第III相試験を行った。RRを主要評価項目とした。
 化学療法未治療の切除不能結腸・直腸腺癌患者(18歳以上、直径1cm以上の1方向評価可能病変を1つ以上有する、WHOのPS 0〜2)302例のうち、151例をLV/5-FU群に、151例をLV/5-FU/L-OHP群に割り付けた。LV/5-FU群は4週ごとにMayo regimenを行い、LV/5-FU/L-OHP群は2週間ごとにL-OHP 85mg/m2を2時間かけて静注、LV 200mg/m2を1時間かけて静注後に5-FU 2,600mg/m2を24時間かけて持続静注した。
 追跡期間中央値は31.8ヵ月で、その間に90.4%が死亡した。RRはLV/5-FU群で18.5%(95%CI 12.3〜24.7)、LV/5-FU/L-OHP群で33.8%(95%CI 26.2〜41.4)であった(p=0.004)。PFS中央値はLV/5-FU群で5.6ヵ月(95%CI 4.8〜6.3ヵ月)、LV/5-FU/L-OHP群で6.7ヵ月(95%CI 5.7〜7.7ヵ月)であった(p=0.016)。OS中央値はLV/5-FU群で13.3ヵ月(95%CI 11.2〜15.4ヵ月)、LV/5-FU/L-OHP群で13.8ヵ月(95%CI 11.7〜15.9ヵ月)であり、有意差はなかった(p=0.619)。QOLについても両群間での差は認められなかった。サルベージに関するプロトコール規定は設けていなかったが、62.3%がsecond line治療に移行し、LV/5-FUからLV/5-FU/L-OHPへのクロスオーバー率は19.9%であった。LV/5-FU/L-OHP群ではLV/5-FU群に比較してグレード3〜4の下痢および口内炎の発現率は低かったが、神経毒性はLV/5-FU/L-OHP群のみにみられた。アナフィラキシー等の薬剤特有の反応もLV/5-FU/L-OHP群のみにみられた。
 本試験ではfirst lineにおけるL-OHPの併用がRRとPFSを改善し、口内炎および下痢を減少させた。しかし、L-OHP特有の副作用には注意が必要であると考察された。治療法のクロスオーバー率は低かったものの、両群のOSに差はなかった。

考察

Mayo regimen(bolus LV/5-FU)とLV/5FU持続静注+L-OHPとの比較

 1999年から開始されたオランダの試験で、開始当時オランダの標準療法であったMayo regimenと、LV/5-FU持続静注+L-OHP regimenを比較したものである。用いられたLV/5-FU持続静注+L-OHP regimenは、独自のregimenと思われ、AIOをベースとしたFUFOXに近いものである。FUFOXに比べるとLV投与量が少なく、投与もFUFOXの週ごとに比べ、2週ごととなっている点が異なる。このLV/5-FU持続静注+L-OHP regimen 群でRRとPFSの有意な延長が認められ、全体的な毒性の発現率も低いという結果であった。LV/5-FU持続静注+L-OHP 群は、5-FUのdose intensityもMayo regimenに比べ2倍近くになっているにもかかわらず、5-FUにみられる下痢や口内炎などの発現が少ないのは意外である。投与間隔の違いによるものなのであろうか。両群のOSに差がみられなかったことについて、著者は試験デザインやサルベージ治療の未実施などを考察しているが、OSを検討するためには生存に影響を与えるsecond line治療以降についても規定したプロトコールでの試験実施が重要であると考える。

監訳・コメント: 福井県済生会病院 宗本 義則(外科・部長)

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