論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

5月

切除不能高度進行胃癌(胃および食道・胃接合部腺癌)患者に対するTXTとcapecitabineの併用療法:North Central Cancer Treatment group(NCCTG)による第II相試験

Giordano KF et al., Ann Oncol. 2006; 17(4): 652-656

 切除不能高度進行胃癌(胃および食道・胃接合部腺癌)患者の生存率は依然として低く、より効果的な治療レジメが求められている。様々な試みがなされるなか、TXTとcapecitabineの併用療法に関して、さらなる臨床試験への移行を促すに足る治療成績が得られた。本研究では多施設第II相臨床試験にてfirst lineとしてのTXT/capecitabine併用療法の効果と安全性を評価した。
 病理診あるいは細胞診にて確定された切除不能高度進行胃癌(胃および食道・胃接合部腺癌)患者44例 を対象に、day 1にTXT 75mg/m2の静注、day 1〜14にcapecitabine 825mg/m2を1日2回経口投与する併用投与法を1サイクル、21日間として実施した。
 解析対象症例のPSは0:59%、1:39%、2:2%で、年齢は中央値57歳(32〜77歳)、投与サイクルの中央値は6(1〜14サイクル)であった。奏効率は39%(95%CI 23〜55%)で、奏効17例のうちCRは2例、PRは15例であった。OSは中央値9.4ヵ月(95%CI 6.3〜10.7ヵ月)、time-to-progressionは中央値4.2ヵ月(95%CI 3.6〜5.6ヵ月)であった。安全性評価は、プロトコールに基づき治療された不適格症例1例を含めた45例で行い、心筋梗塞と不整脈による治療関連死が1例認められた。高頻度に観察されたグレード3の有害事象は好中球減少(11例)、感染症(5例)、便秘(3例)、血栓症(3例)、呼吸困難(3例)、手足症候群(3例)で、グレード4の好中球減少が45例中24例で認められた。
 TXTとcapecitabine併用療法は切除不能高度進行胃癌(胃および食道・胃接合部腺癌)に対し有効であり、今後さらなる臨床試験によって有用性評価を継承すべきレジメと考えられた。

考察

Taxane系薬剤、CPT-11、新規経口fluoropyrimidineを含む胃癌併用化学療法とその評価

 Taxane系薬剤、CPT-11、およびTS-1をはじめとする新規経口fluoropyrimidineの登場により胃癌化学療法は新たな展開を迎えている。それらの併用レジメの奏効率は軒並み40%を超え、CDDP/TS-1では74%との驚くべき報告もある。その成績は、CFやECFを凌駕するものといえ、実際phase III TAX 325 studyでもTXT/CDDP/5-FUのCFに対する治療優位性が示されている。
 課題はOS延長への貢献であり、その目安はOS中央値にして12ヵ月であろう。この点、本報告における成績はややインパクトに欠ける。また、切除不能症例が対象であるのに、術前後の補助療法であればTaxane系薬剤、capecitabine、さらには放射線化学療法を許すとした設定や、45例で安全性評価が行えた計算などにも違和感がある。
 本報告の価値は、欧米の胃癌化学療法においても経口剤が重要な地位を確保しつつあることを示唆した点にとどまるのかもしれない。

監訳・コメント: 広島大学原爆放射線医科学研究所 西山 正彦(ゲノム疾患治療研究部門・教授)

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