論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

7月

ステージIIおよびIII結腸癌の術後補助化学療法における経口LV/UFT療法と静注LV/5-FU療法の比較:NSABP C-06の結果

Lembersky BC, et al., J Clin Oncol. 2006; 24(13): 2059-2064

 米国NSABPは、結腸・直腸癌化学療法を比較・検討する臨床試験を実施している。1993年のC-03試験では、5-FU単独に対するLV/5-FUの術後補助化学療法としての優位性が明らかにされた。本試験ではステージII〜III原発性結腸腺癌切除後のDFSおよびOS期間に対する経口LV/UFT療法の相対効果を主要評価項目とし、QOLを副次評価項目として静注LV/5-FU療法と比較した。
 1997年2月〜1999年3月、原発巣切除後のステージII(47%)およびステージIII(53%)の結腸癌患者1,608例(ECOGのPS 0〜2)のうち803例をLV/5-FU群に、805例をLV/UFT群に無作為に割り付けた。LV/5-FU群はRoswell Park regimenに基づきLV 500mg/m2を2時間かけて静注し、LV静注開始1時間後に5-FU 500mg/m2を急速静注した。これを6週連続投与、2週休薬の1サイクル8週とし、3サイクル施行した。LV/UFT群はLV 90mg/日とUFT 300mg/m2/日をともに1日3回に分けて4週連続で経口投与した。1サイクル5週とし、5サイクル施行した。
 症例追跡の中央値は62.3ヵ月であった。LV/UFT群のLV/5-FU群に対するOSのハザード比は1.014(95%CI 0.825〜1.246)、DFSのハザード比は1.004(95%CI 0.847〜1.190)であった。年齢(<60歳 vs ≧60歳)、ステージ、転移リンパ節数(0 vs 1〜3 vs ≧4)に関するCox比例ハザードモデル解析でOSまたはDFSとの相関関係は認められなかった。また、毒性は両群間で同等であった。グレード3〜4の有害事象の発現率はLV/UFT群が38.2%、LV/5-FU群が37.8%であった。QOLに関しては両群間で差はみられなかったが、Convenience of Care ScoreではLV/UFT群が優っていた。
 本試験において、経口LV/UFT群はLV/5-FU群と同等のDFSとOSを達成し、両群の毒性は同等であり、総じて忍容性が良好であった。

考察

LV/UFTからさらなる併用療法へ

 ここ数年の間に、日本で開発されたUFTの有用性が各癌領域で明らかにされつつあるが、今回紹介した論文は大腸癌の補助化学療法に関する報告である。これまで、ステージIII(およびII)に対する補助化学療法の世界的標準治療は6ヵ月間のLV/5-FU療法であったが、本試験の結果により、管理がより簡便なLV/UFTが標準治療のオプションの1つとして認識されることになると思われる。最近、経口薬であるcapecitabine(日本では大腸癌に対して未承認)の補助化学療法における有用性も報告されており、今後は各々の位置づけを明らかにする必要がある。
 さらに、最近では補助化学療法としてLV/5-FU+L-OHP(FOLFOX)の有用性も報告され、標準治療そのものが変わる可能性がある。また、現在LV/5-FU+L-OHPに分子標的薬を加える併用療法の試験も進行中であり、今後、大腸癌の補助化学療法の分野における発展はさらに加速しそうである。このような状況においても、LV/UFTやcapecitabineなどの経口薬が、注射薬(LV/5-FU)の有用な代替療法となる可能性は残されており、今後も経口薬をめぐる開発は続いていくものと思われる。

監訳・コメント: 国立がんセンター中央病院 白尾 国昭(消化器内科・内科医長)

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