論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

1月

消化器癌における腫瘍マーカーの実地臨床使用に関するASCO勧告(2006年最新版)

Locker GY,et al., J Clin Oncol. 2006; 24(33): 5313-1327

  ASCOは、1996年に結腸・直腸癌の予防・スクリーニング・治療および予後判定における腫瘍マーカーの臨床使用に関して初めての診療ガイドラインを発行した。ASCOガイドラインは、専門家から構成される委員会により定期的に改訂されている。腫瘍マーカーのガイドラインは、2000年の改訂が最後となっていたが、委員会は2006年の改訂にあたり、結腸・直腸癌のマーカーのみならず、新たに膵癌のマーカーに言及した。
  2000年版のガイドラインに記載のある腫瘍マーカーに関しては、1999年〜2005年11月に発表された文献を、新しいマーカーについては、1966年〜2005年11月の文献を用いて評価した。Medlineデータベースを用いて、結腸癌・直腸癌・膵癌に対応する各マーカーに関する語句により文献検索した。検索は英語で記述された臨床の論文に限定した。Cochrane Collaboration Libraryでは、「腫瘍マーカー」「バイオマーカー」という語句をもとに、Hayesらのevidence分類に基づきシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。
  今回の勧告の要点は以下の通りである。
  結腸・直腸癌における血清CEA測定は、スクリーニング目的には推奨されない。 術前は、病期分類・術式決定の一助となるのなら行ってよい。術前値は、術後補助化学療法の根拠とはならない。 術後は、stageII、IIIの患者において最低3年間、3ヵ月毎に測定するべきである。上昇が確認されれば画像検査を行い再発巣の評価を行う。転移性結腸・直腸癌に対して全身化学療法を行っている患者においては、治療開始時、その後1〜3ヵ月毎に測定するべきである。PD判定の一助となる。
   結腸・直腸癌におけるCA19-9測定は、スクリーニング・診断・病期分類・サーベイランス・治療評価いずれにおいても推奨するに足るデータが不十分である。
  結腸・直腸癌においては他に、DNA ploidy または flow cytometry、p53ras、新たにTS、DPD、TP、MSI/hMSH2 または hMLH1、18q-/DCCがあげられているが、いずれも日常臨床での使用を推奨できるほど十分なデータはなかった。
  膵癌における血清CA19-9 測定については、以下のとおりである。
  スクリーニングには推奨されない。単独では手術適応の決定の指標には推奨できない。単独では再発の指標とはならず、画像検査や生検が必要である。局所進行または転移性膵癌に対して化学療法、放射線療法を受けている患者においては、推奨する十分なデータがないものの、治療開始時、その後1〜3ヵ月ごとに測定してよい。上昇を認めればPD判定のための画像検査を行う。
   新規マーカーや今回検討したマーカーの利用を裏付ける新たなエビデンスは、今後のガイドライン改訂においてさらに評価されるであろう。

考察

エビデンスに基づいた腫瘍マーカーの用い方について

  消化器癌における腫瘍マーカーに関する勧告が6年ぶりに大幅改訂された。今回の主な改訂点は、(1)転移性大腸癌の全身化学療法においてCEAは治療効果モニターの指標のひとつに推奨された点(2000年は「治療応答性をモニターする他の検査が有用でない時に限り治療開始時から2〜3ヵ月毎に測定するべき」であった)、ただし新治療開始4〜6週後の見かけ上の上昇(特にOHP使用時)の解釈には慎重であるべきである、(2)大腸癌には「有用性の証明にはデータ不十分」の記載ながらTS、 DPD、TP、MSI/hMSH2 または MSH1、18q-/DCCの項目が加わった点、(3)膵癌におけるCA19-9が加わった点である。しかし現時点では、大腸癌における血清CEA以外の項目については、更なるデータの集積が必要である。これらの中から将来stage分類に優る臨床的有用性が確定されることを期待する。分子標的を含めた個人差の克服や効果予測も今後の課題である。
   日本の大腸癌治療ガイドラインでは、Stage I(mp)〜Stage III治癒切除後のサーベイランスの項目に、「3ヵ月ごとのCEA、 CA19-9測定」があり、CA19-9に関しては、今回の勧告を踏まえて議論の余地があると思われる。
   日常診療において、大腸癌スクリーニングにCEAやCA19-9を安易に用いていませんか?
   大腸癌の全身化学療法施行中、1コース後のCEA値の上昇のみで、画像検査を行わず安易に化学療法のメニューを変更していませんか?

監訳・コメント: 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 杉本 直俊(臨床腫瘍学・助手)

このページのトップへ
  • トップ
  • 論文紹介 | 最新の論文要約とドクターコメントを掲載しています。
    • 2008年
    • 2007年
    • 2005年
    • 2005年
    • 2004年
    • 2003年
  • 消化器癌のトピックス | 専門の先生方が図表・写真を用いて解説します。
  • WEBカンファレンス | 具体的症例を取り上げ、治療方針をテーマに討論展開します。
  • 学会報告 | 国内外の学会から、消化器癌関連の報告をレポートします。
  • Doctor's Personal Episode | 「消化器癌治療」をテーマにエッセイを綴っています。
  • リレーエッセイ | 「消化器癌」をテーマにエッセイを綴っています。