論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

3月

多施設第II相試験における未治療進行胃癌患者へのTS-1+CDDP療法に関する安全性と有用性の拡張データ

Lenz H-J, et al., Cancer 2007; 109(1): 33-40

  進行胃癌に対するTS-1の使用は欧米において急速に受け入れられてきている。MTD、有効性を評価した第II相試験の結果を受けて、より大規模な第III相試験FLAGSが計画され、TS-1+CDDP併用が5-FU+CDDP併用を対照として比較されることになった。しかし、欧米人におけるTS-1+CDDP併用療法のデータ蓄積は十分ではないため、第II相試験参加者47例および追加症例においてTS-1+CDDP併用療法に関する多施設第II相試験を行った。本論文は安全性と有効性に関するデータを示す。
  組織学的に確認された切除不能進行胃癌あるいは食道・胃接合部腺癌に対して未治療の患者(18歳以上、KarnofskyのPS(KPS)が70%以上、推定余命が12週超、正常な肝・腎・骨髄機能を有する、補助化学療法経験者は治療終了から6ヵ月以上経過している、錠剤を嚥下できる)72例に対して、1サイクル28日間のTS-1+CDDP併用療法を実施した。TS-1 25mg/m2を1日2回(食事の前後1時間を避ける)経口でday 1〜21に投与後、7日間休薬。CDDP 75mg/m2をday 1に2時間かけて静注。CDDPによる有害事象が限界を超えた場合にはTS-1の単独投与に切り替えた。両剤ともグレード3/4の毒性発現によってTS-1は5mg/m2/回、CDDPは25%/回を減量したが、腫瘍進行、忍容不可能な有害事象発現、脱落により中止した。安全性は化学療法中、週1回の血算と血液生化学検査により評価した。有効性は外部査読者がRECIST基準に従い 1サイクル後に評価し、CRあるいはPRが示唆される場合は2サイクルごとに再評価した。有害事象の評価にはNCI-CTC(version 2.0)を使用した。
  72例に対して安全性と生存を、2サイクル以上の治療を受けた64例に対して確定全奏効率(CORR)など有効性を評価した。KPS中央値は90%、サイクル中央値は4(1〜16、合計332)であった。外部査読者評価によるCORRは55%(95%CI 42〜67%)であった。反応期間の中央値は10.3ヵ月(95%CI 5.3〜− ヵ月)であった。6ヵ月で腫瘍が進行したのは38%であった。生存期間中央値は10.4ヵ月(95%CI 8.6〜12.9ヵ月)であった。重篤な有害事象は44%に発現した。グレード3/4の毒性は10%超の患者に発現し、倦怠感/無力症(24%)、嘔吐(17%)、悪心(15%)、下痢(13%)および好中球減少(19%)の頻度が高かった。発熱性好中球減少とグレード4の下痢発現率はいずれも1.4%であった。
  本試験の結果により、欧米人において、TS-1+CDDP併用療法は良好な安全性プロファイルを有すること、進行胃癌の治療における有用性が示唆された。FLAGSは2006年12月までに登録患者を1,050例まで集積し、有効性および安全性をさらに検討する予定である。

考察

未治療の進行胃癌に対するTS-1+CDDP併用療法は将来Global Standardになり得るか?

  現在、グローバルで5-FU+CDDPをreference armとした未治療の進行胃癌に対するTS-1+CDDP併用療法の多施設第III相試験FLAGS(First Line Advanced Gastric Cancer)が進行中であるが、この論文はTS-1+CDDP療法に関する安全性と有効性についてAjaniらが2006年に47例で検討した報告(J Clin Oncol 2006; 24: 663-667)を、さらに72例に増やして再検証したものである。本邦では欧米よりも一足早く、小泉らが2003年に第I/II相試験にてTS-1+CDDP療法の有効性と安全性を報告し、引き続いてTS-1単独療法に対する優越性を検証する第III相試験が遂行され、その結果は発表目前に迫っている。
  一方、欧米では第I相臨床試験の薬物動態の結果より、白人と日本人におけるCYP2A6の遺伝子多型の違いが指摘され、副作用の下痢によりTS-1が50mg/m2/日でCDDPが75mg/ m2に設定されており、本論文のように安全性のprofileには特に気を使っているのが伺える。
  2007年は1月のASCO-GI(Orland)のACTS-GC(胃癌術後補助療法におけるTS-1投与の優越性)を皮切りに、6月のASCO(Chicago)では我が国からJCOG9912(TS-1 vs CPT-11+CDDP vs 5FU c.i.)、SPIRIT(TS-1+CDDP vs TS-1)の結果が発表される予定であり盛りだくさんの年である。FLAGSはすでに1,050例の登録は終了しており、来年2008年に発表予定とされているが、今年のASCOでTS-1+CDDPの優越性が示されれば、来年には日本発のglobal standardが決定されるかもしれない。

監訳・コメント: 京都大学大学院医学研究科 松本 繁巳
(探索臨床腫瘍学講座・助手)

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