ステージIII結腸癌に対する補助化学療法としてのcapecitabine+L-OHP併用療法:第III相試験における1,864例の安全性解析
Schmoll H-J, et al., J Clin Oncol. 2007; 25(1):102-109
経口fluoropyrimidine薬capecitabineは転移性結腸・直腸癌の治療において有用性が示され、単剤によるbolus LV/5-FU補助化学療法の代替療法にも使用されている。また、capecitabine/L-OHP併用療法は結腸癌の異種移植モデルにおいて相加効果を示したと、前臨床試験にて報告されている。本論文ではステージIII結腸癌に対する補助化学療法としてのcapecitabine+L-OHP併用療法(CapOX)とbolus LV/5-FU療法の安全性を、第III相試験の安全性解析データから報告する。
2003年4月から2004年10月に226施設より登録した、ステージIII結腸癌患者(18歳以上、組織学的にステージIII、[Dukes’ C]の結腸癌であることを確認、無作為割り付け前8週間以内に実施した治癒切除術より回復、ECOGのPSが0〜1)から、1,864例を安全性解析の対象とした。被験者はCapOX群938例、LV/5-FU群926例に無作為に割り付けし、LV/5-FU群は参加施設単位でMayoレジメ(657例)とRPMIレジメ(269例)のいずれかを選択した。CapOX;day 1に2時間かけてL-OHP 130mg/m2を静注、day 1の夜からday 15の朝にかけて14日間連続で経口capecitabine 1,000 mg/m2を1日2回投与(1サイクル3週間、8サイクル施行)。Mayoレジメ;毎週day 1〜5に連続でbolus LV 20mg/m2を投与後、bolus 5-FU 425 mg/m2を投与(1サイクル4週間、6サイクル施行)。RPMIレジメ;1〜6週のday 1に静注により2時間かけてLV 500 mg/m2と5-FU 500mg/m2を投与。(1サイクル8週間、4サイクル施行)。有害事象の発現に応じて適宜減量・中止した。
23.5ヵ月(中央値)の追跡において、CapOX群でのcapecitabine、L-OHP、のdose intensityはそれずれ84%、87%でありLV/5-FUは85%(Mayo 87%, RP 84%)であった。20%以上に認められた治療関連有害事象は両群で同率であったが、CapOX群ではLV/5-FU群に比較して、いずれのグレードにおいても下痢、脱毛の発現率が低く、知覚神経障害、嘔吐、手足症候群の発現率が有意(p<0.05)に高かった。また、Mayoレジメ群に比較してCapOX群ではグレード3/4の血液毒性発現率が有意(p<0.05)に低く、グレード3/4の消化管毒性発現率が有意(p<0.05)に高かった。一方、RPMIレジメ群と比較すると、消化管毒性発現率が低く、血液毒性は高かった(それぞれp<0.05)。予想されたように、CapOX群では、L-OHP投与によると考えられるグレード3/4の知覚神経障害、グレード3の手足症候群の発現率が高かった。最後の投与から28日以内の治療関連死亡率は両群とも0.6%であった。
結論として、CapOXは補助化学療法として使用した場合の有害事象はいずれも対処可能な程度であることが示された。有効性に関するデータは今後24ヵ月以内に得られる予定である。
経口5-FU系抗癌剤capecitabineによる大腸癌術後補助化学療法
大腸癌の術後補助化学療法は、従来の静注の単剤5-FUレジメンから、1990年代初めの5-FU/LEVを経て、LV/5-FUレジメンと変遷を重ねており、特にstage III結腸癌においては標準治療と考えられている。
1990年代末より転移性大腸癌に対する治療薬としてオキサリプラチン(L-OHP)や塩酸イリノテカン(CPT-11)が登場し、LV/5-FUレジメンにL-OHPを併用したFOLFOXレジメンやCPT-11を併用したFOLFIRIレジメンも相次いで報告されてきた。一方では経口5-FU系の抗癌剤とLV/5-FUとの比較試験も行われており、X-ACTではcapecitabineの有用性が報告されている。
今回の有害事象発現調査においても注射のLV/5-FUをcapecitabineに変えたCapOXレジメンにおけるgrade 3/4の血液毒性、ことに好中球減少の発現頻度がLV/5-FUに比較して有意に低いことは比較的容易に外来治療が選択できる治療法と考えられ、患者のQOLの改善も大いに期待できる。CapOXレジメンは今後、注射のFOLFOXレジメンに代わる可能性がうかがわれる。従来、5-FUのコンプライアンス確保のために注射薬が選択されていたが、経口5-FU系抗癌剤のcapecitabineがこれに代わる薬剤として評価されるためにも2年後の有効性の報告が待たれる。
経口5-FU剤は本邦で盛んに使用され、改良されてきているがなかなかその有用性が評価されなかった。有効性が徐々に認められつつある現在、分子標的薬も多く開発され、これらとの併用も考えられており、大腸癌の術後補助化学療法が大きく転換しつつあると考えられる。
監訳・コメント: 岡山大学医学部・歯学部附属病院 合地 明
(医療情報部・助教授)