論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

5月

進行結腸・直腸癌患者におけるFOLFOX 4併用経口血管新生阻害薬
PTK787/ZK 222584(PTK/ZK)の第IB相オープンラベル用量漸増試験

Thomas AL, et al., Ann Oncol 2007; 18 (4): 782-788

  PTK787/ZK 222584(PTK/ZK)は血管新生およびリンパ管新生を阻害する経口薬であり、既知のすべてのVEGF受容体チロシンキナーゼ情報伝達をブロックする。進行性・治療抵抗性の結腸・直腸癌患者に対する第I相試験では、PTK/ZK単剤療法の忍容性は良好であり、ある程度の潜在的効果を有することが認められた。本試験は進行結腸・直腸癌患者においてFOLFOX 4療法を併用した場合のPTK/ZKの1日1回投与用量(RD)と安全性・毒性のプロファイルを決定するために実施された。副次目的は全体の薬物動態を検討し、予備的な抗腫瘍効果のエビデンスを集めることである。
 組織学的に確認された35例の進行結腸・直腸癌患者(推定余命3ヵ月以上、WHOのPSが0〜2、測定可能病変を有する、外科手術および補助化学療法経験者は登録可能だが進行病変に対する治療歴のある者は不可)に対してPTK/ZKの用量漸増試験を施行した。まず35例中18例に対して用量漸増試験を施行し、決定されたMTDでその後の17例に投与した。被験者を3〜6例の群に分け、PTK/ZKを用量規定毒性(DLT)が観察されるまで500、1,000〜2,000g/日と段階的に漸増させて投与した。用量増加は1サイクル目のday 3に開始した。1群(3、6例)のうち2例以上がDLTを発現した際は、追加登録および用量増加を中止した。FOLFOX 4療法は各サイクル(14日)のday 1、day 2に実施した。投与は標準プロトコールに従った(J Clin Oncol 2000; 18: 2938-2947)。安全性評価にはNCI-CTC 2.0を使用した。
 PTK/ZKの治療期間中央値は9.5ヵ月であった。MTDは1,250mg/日であった。DLTは概して中枢神経毒性であった。最も頻発したグレード3あるいは4の有害事象は高血圧(23%、グレード3)、好中球減少(37%、グレード3〜4)であった。薬物動態解析の結果、PTK/ZKとLV/5-FU、L-OHPの組み合わせ間の相互作用については併用投与期間中にエビデンスが認められなかった。RRは48.6%であった。PFSの中央値は11.4ヵ月であり、以前に実施されたFOLFOX 4群を含む無作為化試験のPFS(8.7〜9ヵ月)に比較してわずかに延長した。
FOLFOX 4療法併用時のPTK/ZKのMTDは1,250mg/日であり、この組み合わせは実行可能かつ安全性を有し、有意な薬物動態学的相互作用は認められなかった。

考察

第IB相試験で有望でも第III相試験で臨床的有用性が保証されるわけではない

  PTK/ZKは、すべてのVEGF受容体のチロシンキナーゼ阻害剤であり、経口剤であるという利点を有している(bevacizumabはヒト化モノクローナル抗体)。Bevacizumabと類似した範疇の血管新生阻害剤であるが、PTK/ZKのDLTにはめまいや運動失調(bevacizumabでは少ない)もあり、半減期も3〜6時間(bevacizumabは約2週間)と短い。薬剤形態や作用部位が異なるため、効果や副作用に違いが出ていると考えられる。PTK/ZKは消化管穿孔が少なく、半減期が短いので手術との間隔が短くてすむという利点がある。
 Pharmacokineticsを含めたこの第IB相試験の結果から、臨床的有用性に大きな期待が寄せられたが、第III相試験(FOLFOX±PTK/ZK)では生存延長効果が認められなかった。改めて、有効な新薬を作り出す過程の困難さ、ヒトに対する臨床的有用性を証明する第III相試験の重要性を思い知らされる。

監訳・コメント: 国立病院機構大阪医療センター 三嶋 秀行
(外科・医長)

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