論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

5月

結腸癌における高頻度マイクロサテライト不安定性の予後因子および補助化学療法の効果予測因子としての役割:NCI-NSABP共同研究

Kim GP, et al., J Clin Oncol. 2007; 25(7) : 767-772

  高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)が、結腸癌補助化学療法の効果を予測する予測因子であるかについては未だ結論がでていない。そこでNSABPが実施した結腸癌の補助化学療法に関する4つの試験で得られた腫瘍組織のマイクロサテライト不安定性(MSI)を解析し、予後因子および補助化学療法の効果予測因子となるか検討した。
 Dukes’ B/C結腸癌に対する補助化学療法の有効性を検討する目的で行われたNSABP の4つのRCTのうち、C-01、C-02試験の登録症例からは手術単独173例(未治療群)、C-03、C-04試験からはLV/5-FU補助化学療法369例(治療群)を無作為抽出した。これら対象542例の切除標本のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから切片を作成し、その面積の50%以上を腫瘍が占めることを確認したのち、DNAを抽出した。Bat25、Bat26、Mfd15、D2S123、D5S346(Bethesdaガイドライン委員会による5つの遺伝子座)およびTGFβRII遺伝子座に関してPCR法を行い、National Cancer Institute(NCI)方式でMSI-Hとマイクロサテライト安定性および低頻度マイクロサテライト不安定性(MSS/MSI-L)の2群に分類した。その結果98例(18.1%)がMSI-Hであった。また(その他のマーカーとして)p53、thymidylate synthase(TS)、Ki-67についても免疫組織化学的染色強度を解析した。
 MSI-H群とMSS/MSI-L群の間でDukes病期、年齢、性別に有意差はなかったが、MSI-H群で右側結腸癌の占める割合が高かった(p<0.001)。MSS/MSI-L群と比較しMSI-H群の無再発生存期間(RFS)が長い傾向にあったが(p=0.10)、OSでは差がなかった(p=0.67)。またMSIの状態と術後補助化学療法の有無の間の交互作用は、RFS、OSどちらに対しても認められなかった(それぞれp=0.68、p=0.62)。
 TGFβRII変異(MSI-H例の55.1%にみられた)は、未治療群、治療群ともにOS、RFSとの明らかな相関はみられなかった。MSI-Hはp53変異との間には強い負の相関関係が認められ(p<0.001)、Ki67との間には正の相関が示唆されたが(p=0.03)、TSとの間には相関はなかった。OS、RFS に対するMSI-Hと他のマーカーとの交互作用は、TS、Ki-67には認められなかったが、p53変異ではRFSのみ長い傾向がみられた。しかしこの傾向が真の交互作用によるものなのか、統計学的アーチファクトなのかは不明である。
 以上の結果は後ろ向きの検討ではあるが、MSI-Hを、Dukes’ B/C結腸癌に対するLV/5-FU補助化学療法の効果予測因子として用いることは支持できないと結論している。

考察

テーラーメード化学療法をめざす臨床研究における1つの結論
−MSI-Hは結腸癌LV/5-FU補助化学療法の効果予測因子としては使えない

  大腸癌化学療法の有効性が高まると同時に、その経費も急速に高額になり、さらに分子標的治療薬が加わると、毎月大腸癌の標準的手術を行っているのと同等かそれ以上の医療費がかかるようになる。もし化学療法の有効性が予測出来るようになれば、効果の期待できない化学療法によるQOL低下、経済的負担を回避できるなど、患者サイドの利益は多大である。残念ながら、今回のNSABP C-01〜04 studyの結果と検体を利用した後ろ向き検討では、MSIのグレードは、大腸癌のLV/5-FU補助化学療法の効果予測因子としては推奨できないとの結論であった。すでにASCO勧告(2006年アップデート版)にも、MSI-Hは大腸癌の予後予測因子、化学療法の効果予測因子として推奨できるほどに十分なデータがない旨TS、DPD、TP、18q-LOH/DCCとともに記載されている。しかしながら、この分野ではL-OHPなども検討対象に含めた前向き研究が今後も実施されるであろうし、その結果予測因子が明らかになり、オーダーメイド化学療法が可能になることが期待される。

監訳・コメント: 市立秋田総合病院 高橋 賢一
(外科・科長)

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