治療歴を有する転移性結腸・直腸癌に対するLV/5-FU+L-OHP(FOLFOX 4)療法とbevacizumabの併用:ECOGグループスタディE3200の結果
Giantonio BJ, et al., J Clin Oncol.2007; 25(12) 1539-1544
未治療の転移性結腸・直腸癌患者に対する抗血管新生薬bevacizumabを併用する化学療法が、生存期間を改善する。本試験は、CPT-11およびfluoropyrimidineによる治療歴を有する転移性結腸・直腸癌患者に対し、FOLFOX
4療法にbevacizumab(10mg/kg)を併用した際に生存期間に与える影響を検討した、多施設共同オープンラベル第III相試験である。主要エンドポイントはOSとし、副次的にはPFS、奏効率、毒性を評価した。
対象は、2001年11月〜2003年4月にかけ米国および南アフリカの221施設より登録された、進行癌に対しCTP-11およびfluoropyrimidineによる治療歴を有し、L-OHPまたはbevacizumabによる治療歴のない829例の転移性結腸・直腸癌患者(組織学的に証明され、ECOGのPS
0〜2)である。FOLFOX 4+bevacizumab併用群、FOLFOX 4単独群、bevacizumab単独群の3群に、性別・PS・放射線療法歴の有無をマッチングさせて1:1:1の比で無作為に割り付けた。投与法は以下の通りである。FOLFOX
4:day 1にLV 200mg/m2およびL-OHP 85mg/m2を2時間かけて点滴静注、5-FU 400mg/m2をbolus静注後、5-FU 600mg/m2を22時間かけて持続静注。Day
2にはL-OHP以外をday 1と同様に投与。Bevacizumab:day 1に10mg/kgを30〜90分かけて投与した。有効性はRECIST基準により、有害事象はNCI-CTC
version 2により評価した。
Intent-to-treat解析にはFOLFOX 4+bevacizumab併用群286例、FOLFOX 4単独群291例、bevacizumab単独群243例を用いた。OS中央値はFOLFOX
4+bevacizumab併用群で12.9ヵ月、FOLFOX 4単独群で10.8ヵ月(死亡に関するHRは0.75、p=0.0011)、bevacizumab単独群で10.2ヵ月であった。PFS中央値はFOLFOX
4+bevacizumab併用群で7.3ヵ月、FOLFOX 4単独群で4.7ヵ月(増悪に関するHRは0.61、p<0.0001)、bevacizumab単独群で2.7ヵ月であった。全奏効率(RR)はFOLFOX
4+bevacizumab併用群で22.7%、FOLFOX 4単独群で8.6%(この両群での有意差はp<0.0001)、bevacizumab単独群で3.3%であった。Bevacizumabと高血圧、出血、嘔吐との関連が認められた。
本試験により、bevacizumabとFOLFOX 4の併用療法が、CPT-11およびflupropyrimidineによる治療歴を有する転移性結腸・直腸癌患者のOSを改善するという知見が得られた。
BevacizumabのL-OHPに対するsecond lineでの有用性の証明
Bevacizumab(Avastin)はVEGF(vascular endothelial growth factor)に対するヒト化モノクロナール抗体であり、IFL(LV/5-FU+CPT-11)療法に対する生存期間の延長が証明されて欧米ではIFL+bevacizumabが進行・再発大腸癌の患者治療のfirst
lineの1つとされている。また分子標的薬を用いない場合のfirst lineの治療としてはFOLFOX、FOLFIRIどちらを用いてもよいことになっている。
この試験では、IFLまたはFOLFIRIをfirst lineに用いて治療を受けた患者群に対して、second lineにFOLFOX(LV/5-FU+L-OHP)±bevacizumab、
bevacizumab単独の3群比較が行われた。OSはFOLFOX+bevacizumab群12.9ヵ月、FOLFOX単独群10.8ヵ月、bevacizumab単独群10.2ヵ月であり、有意差を持ってFOLFOX+bevacizumab
群が勝っており、second lineでのFOLFOXにbevacizumabを加える科学的根拠が示されたことになる。
この論文後first lineでの有効性が検討され2007年ASCOで発表された。これらの事実からbevacizumabはLV/5-FU+L-OHPまたはCPT-11にfirst
でもsecond でも併用可能であることが示され、広く用いることが可能となった。
監訳・コメント: 青森県立中央病院 斎藤 聡
(消化器内科・化学療法科・部長)