論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

7月

切除不能転移・再発大腸癌へのfirst line治療としての静注LV/5-FU/L-OHP/CPT-11療法(FOLFOXIRI)と静注LV/5-FU/CPT-11療法(FOLFIRI)の比較第III相試験:The Gruppo Oncologico Nord Ovest(GONO)

Falcone A, et al., J Clin Oncol. 2007; 25(13): 1670-1676

 本試験はイタリアの研究グループGONOにより実施された切除不能転移・再発大腸癌患者に対するFOLFOXIRIとFOLFIRIを比較する第III相試験である。
 2001年11月〜2005年4月にかけてイタリアの15施設より登録された測定可能な切除不能病変を有する大腸癌患者(18〜75歳、ECOGのPS;70歳以下0〜2、71〜75歳0、進行病変に対する化学療法の治療歴がないもの、ただしfluoropyrimidineベースの補助療法を無作為化の6ヵ月以前に終了している場合は対象に含める)244例を無作為にFOLFIRI群(n=122)とFOLFOXIRI群(n=122)に割り付けた。投与方法は以下のごとくである。FOLFIRI群:day 1にl-LV 100mg/m2 を 2時間、CPT-11 180mg/m2 を1時間かけて静注し、5-FU 400mg/m2 bolus静注後、5-FU 600mg/m2 を22時間かけて持続静注、day 2にはCPT-11以外をday 1と同様に投与した。FOLFOXIRI群:day 1にl-LV 200mg/m2 とL-OHP 85mg/m2 を2時間、CPT-11 165mg/m2 を1時間かけて静注し、5-FU 3200mg/m2 を48時間かけて持続静注した。投与は2週間ごとに実施した。毒性評価はNCI-CTC version 2.0に基づいて行った。主要評価項目はWHOの基準による奏効率(RR)、副次的評価項目はPFS、OS、化学療法後のR0切除、安全性、QOLである。
 両群ともに忍容性は良好で、発現した有害事象は対処可能であった。FOLFIRI群に比較してFOLFOXIRI群で有意に発現率の高かった有害事象はグレード2〜3の末梢神経毒性(0% vs 19%、p<0.001)とグレード3〜4の好中球減少(28% vs 50%、p<0.0006)であった。発熱性好中球減少とグレード3〜4の下痢の発現率は両群で同程度であった(FOLFIRI群 vs FOLFOXIRI群;好中球減少:3% vs 5%、下痢:12% vs 20%)。RR評価は実施施設によるとFOLFIRI群 41%(CR 6%、PR 35%)、FOLFOXIRI群66%(CR 8%、PR 58%)であり(p=0.0002)、外部評価ではFOLFIRI群34%(CR 6%、PR 28%)、FOLFOXIRI群60%(CR 7%、PR 53%)であった(p<0.0001)。転移巣のR0切除率はFOLFIRI群に比較してFOLFOXIRI群で高かった(全244例では6% vs 15%、p=0.033、肝転移のみの例では12% vs 36%、p=0.017)。PFSとOSの中央値についてはFOLFOXIRI群でそれぞれ有意に改善を認めた(FOLFIRI群 vs FOLFOXIRI群;PFS:6.9ヵ月vs 9.8ヵ月、HR 0.63、p=0.0006、OS:16.7ヵ月vs 22.6ヵ月、HR 0.70、p=0.032)。QOLに関しては両群併せて89例と評価可能例数が少なくはっきりした結論は出せないが、両群間に有意差は認めなかった。
 First lineにおいてFOLFOXIRIではFOLFIRIに比較してRR、PFS、OSが改善された。毒性はFOLFIRIより発現率が高かったが対処可能なものであり、切除不能転移・再発大腸癌患者への分子標的薬剤との併用療法および術前補助療法における実施に関して、さらに研究が求められる。

考察

併用療法か逐次投与か

 切除不能転移・再発大腸癌症例には5-FU、CPT-11、L-OHPをすべて投与することにより生存期間が延長することが確認されている。LV/5-FUが基本投与となり、CPT-11、L-OHPをどちらを先に投与するかが問題となるが、どちらを先に投与しても全生存期間には差が無いことが報告されている。本研究は、三剤をすべて同時に投与するレジメン(FOLFOXIRI)をFOLFIRIと比較し、FOLFOXIRIのPFSとOSが有意に良好であったと結論している。
 しかし、前述したように、現在は治療期間中に5-FU、CPT-11、L-OHPをすべて投与することが基本であることから、対照群をFOLFIRIのみではなくFOLFIRIの二次治療としてFOLFOXを加えたレジメンを対照群とすべきである。また、グレード2〜3の毒性も有意に高いことから(19%)、FOLFOXIRIは、実地臨床としては奨められないレジメンと思う。

監訳・コメント: 東京医科歯科大学大学院 杉原 健一
(腫瘍外科学・教授)

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