論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

8月

進行胃癌における高用量FU毎週静注投与法(HD-FU)、HD-FU+LV毎週投与法(HD-FU/FA)、およびHD-FU/FA+CDDP2週間隔投与法:EORTC消化管グループとArbeitsgemeinschaft Internistische Onkologie による第II相試験 40953

Lutz MP, et al., J Clin Oncol 2007; 25(18): 2580-2585

 本試験は、進行胃癌における第III相試験において評価するレジメを、高用量FU毎週静注投与法(HD-FU)、 HD-FU+LV毎週投与法(HD-FU/FA)、HD-FU/FA+CDDP(HD-FU/FA/Cis)の3種より選択する目的で実施された、2ステージより成る多施設第II相無作為化試験である。
 1996年1月〜1999年8月にかけて17施設より登録された組織学的に確認された、局所進行および切除不能胃癌患者145例(75歳以下、WHOのPS 0〜2、1ヵ所以上の測定可能転移巣を有するものも含む、化学療法・放射線療法歴なし、造血・肝・腎機能正常)をHD-FU群(n=37)、HD-FU/FA群(n=54)、HD-FU/FA/Cis群(n=54)に無作為に割り付けた。投与法は以下の通りである。HD-FU群:週1回、5-FU 3,000mg/m2 を24時間かけて持続静注投与。HD-FU/FA群:週1回、dl-LV 500mg/m2 あるいはl-LV 250mg/m2 を2時間かけて点滴静注後ただちに5-FU 2,600mg/m2 を24時間かけて静注投与。HD-FU/FA/Cis群:Cis 50mg/m2 をday1、15、29に1時間かけて点滴静注、day 1、8、15、22、29、36にdl-LV 500mg/m2 あるいはl-LV 250mg/m2 を2時間かけて点滴静注後ただちに5-FU 2,000mg/m2 を24時間かけて点滴静注。各レジメとも6週投薬1週休薬、増悪あるいは継続不能な有害事象が発現しない限り4サイクル実施した。主要評価項目はRRであった。毒性はNCI-CTC基準およびその拡張版であるカナダNCI基準に、抗腫瘍効果はWHO基準により評価した。ステージ1後の中間解析において奏効率に関する適格条件を満たせば、各群においてSimon two-stage minimax designを実施した。
 RRはHD-FU群で6.1%(33例中2例)、HD-FU/FA群で25.0%(48例中12例、うちCR1例)、HD-FU/FA/Cis群で45.7%(46例中21例、うちCR4例)であった。HD-FU群は最低レベルの奏効数が認められなかったため、ステージ1後に登録を中止した。PFSとOSの中央値はそれぞれHD-FU群1.9ヵ月・7.1ヵ月、HD-FU/FA群4.0ヵ月・8.9ヵ月、HD-FU/FA/Cis群6.1ヵ月・9.7ヵ月であった。1年OSはHD-FU群24.3%、HD-FU/FA群30.3%、HD-FU/FA/Cis群45.3%であった。グレード4の毒性はまれにしか発現しなかった。最も頻発したグレード3/4の毒性は好中球減少と下痢で、それぞれHD-FU群1.9%、2.7%、HD-FU/FA群で5.4%、1.9%、HD-FU/FA/Cis群で19.6%、3.9%であった。
 結論として、FU/FAの毎週投与とCDDPの2週間隔投与を組み合わせたレジメは胃癌において有効で安全性も有すると思われる。

考察

持続静注からの回避

 現在、欧州では進行・再発胃癌に対する化学療法としてECF療法(epirubicin、Cis、FU)が標準的治療と考えられているが、ECF療法では5-FUを28日間持続静注するため、カテーテルトラブルや、患者の利便性低下が問題とされている。そこで、本研究ではECFに変わる治療法を探索する目的で、外来通院で実施可能なweeklyのHD-FUをbaseにしたFAもしくはFA/Cisの併用療法について無作為化比較第II相試験にて検討した。
 結果は5-FU/FA/Cisが奏効率、生存期間に優れ、次の第III相試験の候補となるというもので、極めてreasonableな結果であると思われる。しかし、本研究が開始されたのは10年以上も前であり、現在ではより利便性の高い経口剤により優れた効果が得られる事が既に第III相試験において証明されている。
 そうは言ってもこのregimenが胃癌に対してactiveであることは間違いなさそうなので、今後対象症例や、治療時期などを考慮し、第III相試験において検証されることが期待される。

監訳・コメント: 福島県立医科大学 寺島 雅典
(第一外科・准教授、臨床腫瘍センター・部長)

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