進行胃癌および食道胃接合部腺癌に対するCDDP+5-FUとdocetaxel+CDDP+5-FUの臨床的利益*1 および生命の質(QOL)*2 の比較第III相試験:V325研究
*1 :Ajani JA, et al., J Clin Oncol.2007; 25(22): 3205-3209
*2 :Ajani JA, et al., J Clin Oncol.2007; 25(22): 3210-3216
進行胃癌および進行食道胃接合部癌(AGGEC)患者においては、早期から症状があることから、症状の軽減およびQOLの改善を提供することが望ましく、臨床的利益の追求および疼痛緩和の改善が強く求められているが、AGGEC患者においてこれらを評価する前向き第III相試験が実施されたことはない。V325試験のサブ解析であり、副次評価項目としてQOL、臨床的利益について検討している2つの報告を紹介する。
16ヵ国72施設より1999年11月〜2003年1月に登録されたAGGEC患者(転移性あるいは局所再発、18〜75歳、KarnofskyのPS(KPS)超、化学療法歴なし、造血・腎・肝機能正常)445例を、docetaxel+CDDP+5-FU(DCF)群(n=221)とCDDP+5-FU(CF)群(n=224)に無作為に割り付けた。
投与は以下の通りに行った。DCF群:docetaxel 75mg/m2 およびCDDP 75mg/m2 をday 1に静注後、5-FU 750mg/m2 /日をday 1〜5に持続点滴静注、これを3週間ごとに実施。CF群:CDDP 100mg/m2 をday 1に静注後、5-FU 1,000mg/m2 /日をday 1〜5に持続点滴静注、これを4週間ごとに実施した。
臨床的利益の主要評価項目は、KPSの悪化に至るまでの期間、副次評価項目は5%の体重減少に至るまでの期間、Osoba grading scaleの1グレードの食欲低下に至るまでの期間、疼痛生存期間(最初の疼痛発現までの期間)、癌性疼痛によるオピオイド鎮痛薬投与に至るまでの期間である。各施設への来院時に記録した。
QOLはEORTC QLQ-C30およびEuroQOL EQ-5D質問票によりベースライン時から進行が認められるまでは8週間ごとに、その後死亡まで3ヵ月ごとに評価し、QOLパラメータの最終的悪化に至るまでの期間を解析した。QOLの主要評価項目は、全身の健康状態の5%低下に至るまでの期間、副次評価項目は全般的健康状態の10%以上の低下、身体的機能の5%以上の低下、悪心・嘔吐の10%以上の低下、社会的機能の10%以上の低下、疼痛の10%以上の低下、食欲減退の20%以上の低下、EQ-5D thermometerの5%以上の低下に至るまでの期間である。
試験期間中、患者の75%以上で臨床的利益を評価した。CF群に比較してDCF群で、KPSの悪化までの期間が有意に延長された(中央値6.1ヵ月 vs 4.8ヵ月、HR 1.38、95%CI 1.08〜1.76、log-rank p=0.009)。体重減少および食欲低下までの期間はCF群に比較してDCF群で長かったが、統計的な有意性は認められなかった。無疼痛期間とオピオイド鎮痛薬の初回投与までの期間は両群で同程度であった。QOLに関しては、ベースライン時におけるEORTC QLQ-C30およびEuroQOL EQ-5Dの有効回答率はDCF群で86.0%および78.7%、CF群で89.7%および92.8%であった。全般的健康状態の5%低下までの期間はCF群に比較してDCF群で有意に長かった(6.5ヵ月 vs 4.2ヵ月、HR 1.45、95%CI 1.08〜1.93、log-rank p=0.01)。10%、20%、および30%の低下に至るまでの期間解析においては、CF群に比較してDCF群でより優位であった(log rank p=0.007〜0.03)。
V325試験の結果により、CF療法にdocetaxelを併用する療法はCF療法に対して、OSとTTPだけでなく、臨床的利益およびQOLも有意に改善した。
V325 studyにおける副次項目であるClinical Benefit、QOLの成績
V325 studyの結果、DCFが欧米でのfirst line化学療法の1つとして認められた。しかしながら、必発に近いgrade 3、4の血液毒性からこのレジメに抵抗感があることも事実である。
Ajaniらは第III相試験の開始前から、副次項目として臨床的利益、QOLを取り上げ、今回その成績が報告された。結果として、KPSの悪化までの期間の延長、すべてのQOL項目でDCFはCFに比べ有意に良好であった。
日本のSPIRITS trialではTS-1単独とTS-1/CDDP併用で併用群が2ヵ月の生命延長効果を示した。しかしながら、CDDPの併用には入院が必要であり、QOLを著しく損ねる。もし、SPIRITS trialでKPSあるいはQOLを測定しており、臨床的利益、QOLも同等以上であれば、真の標準化学療法になり得ると考えている。
監訳・コメント:日本大学医学部 藤井 雅志(外科・准教授)