CPT-11抵抗性結腸・直腸癌におけるcetuximab+bevacizumab+CPT-11併用療法とcetuximab+bevacizumab併用療法の無作為化第II相試験:BOND-2試験
Saltz LB, et al., J Clin Oncol. 2007; 25(29) : 4557-4561
本試験は、CPT-11抵抗性の転移性結腸・直腸癌患者に対する2種類のモノクローナル抗体cetuximabおよびbevacizumabの併用について、安全性および有効性を評価した無作為化第II相試験である。
Cetuximab、bevacizumabおよび他の抗EGFR製剤、抗VEGF製剤の使用歴がなく、転移巣に対するCPT-11療法から脱落した転移性結腸・直腸癌患者83例(18歳以上、EOCGのPS 0〜1、推定余命3ヵ月超、測定可能転移巣を有する者)をcetuximab+bevacizumab+CPT-11を併用するarm A(CBI群、43例)、cetuximab+bevacizumabを併用するarm B(CB群、40例)に無作為割り付けした。投与法は以下の通りである。CBI群:cetuximabは初回用量400mg/m2をday 1に2時間かけて点滴静注、day 8からは250mg/m2を週1回投与。Bevacizumab 5mg/kgを1サイクル目のみday 2に投与し、以降1週おきにcetuximabと同日に投与した。CPT-11は前治療と同用量・スケジュールで投与した。CB群:cetuximabおよびbevacizumabをCBI群と同様に投与した。
主要評価項目はcetuximab±CPT-11療法にbevacizumabを加えた際のtime to progression(TTP)に対する効果であり、本試験の群間比較ではなく、historical controls(他試験にてbevacizumab未使用の患者にcetuximab±CPT-11を投与した集団)に対する比較を行った。副次評価項目は奏効率(RR)およびOSである。RECIST基準による評価を試験開始時、および治療開始より6週間ごとに施行した。毒性はNCI-CTCAE version 3.0に基づき評価した。
治療の結果、TTP中央値はCBI群7.3ヵ月およびCB群4.9ヵ月、RRは37%および20%であった。追跡期間中央値28ヵ月におけるOSは14.5ヵ月および11.4ヵ月であった。毒性はcetuximab単剤投与から推測された通り、座瘡様皮疹が両群で最も高発現し(抗体関連毒性)、cetuximabによる毒性であると考えられた。また、好中球減少、下痢、倦怠感はCB群に比較してCBI群で発現率が非常に高く、これらはCPT-11による毒性と考えられる。
結論として、cetuximabとbevacizumabの毒性発現パターンが、それぞれを単独投与した際に推測されたものと同様であったために、併用しうることが示された。この組み合わせに対するCPT-11の併用も忍容可能と考えられる。Bevacizumabをcetuximab±CPT-11に併用する有用性は、bevacizumab未使用の患者にcetuximab±CPT-11を投与したhistorical controlsよりも高いことが明らかとなった。
イリノテカン(CPT-11)抵抗性結腸直腸癌に対するcetuximab/CPT-11併用療法に、bevacizumabを上乗せすることの安全性と有効性が証明された
Cetuximabに関する最初のランダム化比較試験として、CPT-11抵抗性のEGFR陽性患者に対して、cetuximab単独とcetuximabCPT-11併用療法の比較が行われ、その結果から2004年2月に米国FDAは単独療法、cetuximabCPT-11併用療法を承認した。この試験はBOND試験と呼ばれており、今回のレポートにおけるhistorical controlである。
今回のBOND-2試験は、BOND試験における両群にbevacizumabを上乗せした場合の安全性と有効性を示した。この試験は、bevacizumabとcetuximab併用の安全性を確認したという意義があるだけでなく、既に複数のレジメにPDとなった症例に対しても、分子標的薬の使用歴がない場合は、分子標的薬の併用療法を行う意義があることを示している。
監訳・コメント:九州大学大学院医学研究院 沖 英次(消化器・総合外科 助手)