進行胃癌に対するCPT-11+5-FU/LV(ILF)とCDDP+ILF(PILF)の無作為化第II相試験
Park SH, et al., Ann Oncol. 2008; 19(4): 729-733
進行胃癌を対象とした過去の無作為化試験では、CPT-11+5-FU/LV(ILF)はCPT-11+CDDP(IP)よりも奏効率および生存期間が有意に優れることが示されている。しかし、CDDPは依然として胃癌治療のキードラッグと考えられており、化学療法歴のない進行胃癌を対象として著者らが実施したパイロット試験からは、ILFレジメンへのCDDP 30mg/m2の追加(PILF)は有望であることが示された。今回の第II相試験では、進行胃癌に対するfirst-line治療としてのILFとPILFの安全性および抗腫瘍効果を比較検討した。
2004年10月から2006年11月に、75歳以下でECOG PS≦2の進行胃癌患者91例をILF群(46例)またはPILF群(45例)に無作為に割り付けた。ILF群のレジメンはCPT-11 150mg/m2(day 1)およびLV 20mg/m2+5-FU 1,000mg/m2 22時間持続注入(day 1、2)であり、PILF群ではこれらにCDDP 30mg/m2(day 2)を追加した。1コースは2週間とし、増悪または許容不能な毒性が認められるまで繰り返した。
主要評価項目は奏効率で、そのほかにも有効性と安全性の評価を行った。
奏効率は両群とも42%(いずれもCR 1例、PR 18例)で、SDはILF群10例(22%)、PILF群17例(38%)に認められた。追跡期間中央値は17.1ヵ月であった。PFSはILF群4.8ヵ月 vs PILF群6.2ヵ月(p=0.523)、OSは10.7ヵ月 vs 10.5ヵ月(p=0.850)で、いずれも有意差はみられなかった。
投与コース数の合計はILF群335コース(中央値7、範囲1〜16)、PILF群352コース(中央値8、範囲1〜16)で、主な治療中止理由は増悪(ILF群71% vs PILF群47%)および有害事象(9% vs 29%)であった。いずれのレジメンも全般的な忍容性は良好であり、グレード3/4の有害事象の発現率に明確な差はなかった(ILF群37% vs PILF群46%、p=0.431)。治療関連死はILF群1例、PILF群3例に認められた。
今回の成績から、進行胃癌に対するfirst-line治療としてPILFは適用可能であり、有効性が認められたものの、ILFに対する奏効率および生存の優越性は示されなかった。治療成績が同様であることから、未治療の進行胃癌に対する合理的な治療はILFであると考えられる。しかし、ここに報告した成績が最良というわけではなく、今後はL-OHPや分子標的治療薬などをILFに追加することにより、安全性を損なうことなく治療効果が改善する可能性がある。
本試験において、CPT-11+5-FU/LV(ILF)療法へのCDDPの上乗せ効果は証明できなかった
進行再発胃癌に対するfirst-line化学療法として、CPT-11+5-FU/LV(ILF)療法にCDDPの上乗せ効果があるかどうかを検証した無作為化第II相試験の報告である。大腸癌では、FOLFILIは有効な治療法として広く認識されているが、胃癌においてもCPT-11+5-FU/LV療法に関する臨床試験が行われている。
2004年のJCOにフランスのFFCDグループより、進行胃癌に対する隔週投与5-FU/LV vs 5-FU/LV+CDDP vs 5-FU/LV+CPT-11の試験結果が報告されたが、この試験では、隔週5-FU/LV+CPT-11の成績が奏効率:40%、無増悪生存期間:6.9ヵ月、全生存期間:11.3ヵ月と有意に良好であった(J Clin Oncol. 2004; 22(21): 4319-4328)。その後もILFに関する報告がなされ、胃癌の first-line化学療法として有効性が証明されている。
一方、ILFレジメンにCDDPを加えたPILF療法においても高い奏効率が報告されているが、顆粒球減少をはじめとする有害事象の発現頻度が高いことが問題である。
本試験では、ILF療法へのCDDPの上乗せ効果が期待されたが、結果的には奏効率・全生存期間ともに同等であり、同時併用によるCDDPの有効性は証明できなかった。
日本では胃癌治療においてTS-1が標準的に用いられているが、欧米人ではTS-1のコンプライアンスが黄色人種ほど高くなく、5-FUの持続投与を含むepirubicin+CDDP+5-FU(ECF)やdocetaxel+CDDP+5-FU(DCF)が広く行われている。欧米で標準治療とされているECFやDCFは3つのキードラッグを併用したレジメンであるが、筆者らが述べているように、ILF療法においても今後、相性のよい第3の薬剤を組み合わせることで、さらなる有効なレジメンを期待したい。
監訳・コメント:鹿児島大学大学院腫瘍制御学 中条 哲浩(消化器・内分泌外科・助教)