瀧内:それでは、これまでのディスカッションの内容を踏まえ、各派からFOLFOX、XELOXに適していると考えられる具体的な症例を提示していただきます。まずはFOLFOX派からお願いします。
仁科:基本的には、両方のレジメンに関してそれぞれのメリット、デメリットを説明して患者さんに選んでいただきますので、日常臨床ではどちらかを強く勧めることはありませんが、大体8〜9割の患者さんがXELOXを選ばれます。利便性があって副作用もあまり変わらないというデータを示すと、XELOXに傾きます。
ただ、コンプライアンスが悪そうな患者さんや高齢の患者さんには、FOLFOXを強くお勧めします。そういう方に「きちんと飲めますか」と尋ねても、その場では「飲み薬でいいよ」と言われそうですから、チーム医療で患者さんの性格や状況をしっかり判断することが大切です。Conversion therapyを念頭に置いて行う場合は確実に投与したいので、FOLFOXのほうが適当と考えています。
また、capecitabineは腎障害のある患者には慎重投与とされていますし、重篤な腎障害のある場合には禁忌です。クレアチニン・クリアランス(Ccr)が30mL/minの症例ではcapecitabineは投与しませんが、それに近い数値の症例でも、脱水などでクレアチニンが上昇した際には致死的な毒性が生じる可能性がありますので、Ccrが40mL/min近い方にはFOLFOXが適していると思います。そういう意味では、高齢者にはFOLFOXをお勧めしたいですね。
江見:手術を前提として考えた場合、外科医としては短期間でしっかりと奏効を得たいという点を強調して説明し、FOLFOXをお勧めします。
瀧内:それでは、XELOX派はどのような症例がXELOXに適しているとお考えでしょうか。
山ア:実臨床では、患者さんと医療者双方の利便性を考えて、基本的にXELOXを行うという流れになっています。また、仁科先生は、高齢者にはFOLFOXがよいというご意見でしたが、高齢者はポートの扱いができない方も多いので、臓器機能に問題がない限りはXELOXがよいと思います。
ただし、高度の腎機能障害がある方や麻痺がある方、義足をつけている方にはFOLFOXを選んでいます。麻痺があると、手足症候群が起こっても重篤度がわかりませんし、義足をつけていると、その部分に圧がかかり、手足症候群が起こりやすいのです。
橋:私も奏効率がFOLFOXとほぼ同等であると考えれば、今後はほぼ全例がXELOXに移行していくと推測しています。外科医としては、ポート造設の必要性がなくなることやポートによるリスクが無いことは大きいですし、また高齢の患者さんにはポートの管理が負担になります。実際、抜針の指導をしても「怖くて抜けない」とおっしゃって、抜針だけを開業医にお願いしているケースもあります。XELOXの導入前は私もFOLFOX派でしたが、今はXELOX派になりつつあります。
瀧内:私自身FOLFOX、XELOXともにエビデンスがあり、どちらも優れた治療法だと思います。実臨床では今後も両レジメンが広く使用されていくことと思いますが、本日のディスカッションは、改めて両者の特徴やメリット・デメリットを振り返るよい機会となりました。どうもありがとうございました。