Point 1:抗体製剤と併用するベースレジメン
瀧内:それでは、ディスカッションに移りたいと思います。山ア先生は「抗EGFR抗体のほうが有効性が高い」というご意見ですね。
山ア:奏効率の上乗せはIFL+Bevacizumab療法でも認められていますが14)、FOLFOXやFOLFIRI療法に対する奏効率の上乗せが示されているのは抗EGFR抗体です。Conversion therapyを狙うのであれば、より可能性の高い薬剤を選択するべきだと思います。
瀧内:ベースとなるレジメンは何を選びますか。
山ア:Conversion therapyとして直接評価した試験はないので難しいところですが、各抗癌剤の効果から推測すると、L-OHPベースのほうがCPT-11ベースよりも適しているように思います。Palliative chemotherapy としてあまり差がないのであれば、肝転移によさそうなFOLFOXを使いたいと思います。
瀧内:L-OHPベースであれば、XELOXでもよいと思いますか。
山ア:いえ、COIN試験22)のデータがありますし、XELOXと抗EGFR抗体は手足症候群、爪囲炎、下痢など、重複する副作用が多いので、今のところは考えていません。
江見:私もXELOXとの併用は考えていません。これまでの歴史的な流れからいっても、やはりFOLFOXあるいはFOLFIRIとの併用になると思います。FOLFOXのほうが手術に持ち込みやすい17)というデータもありますが、CELIM試験のR0切除率をみると、FOLFOX6+Cetuximab群が38%、FOLFIRI+Cetuximab群が30%11)とそれほど大きな差があるわけではないので、症例によってはFOLFIRIを選択してもよいと考えています。
瀧内:抗VEGF抗体派も、併用するレジメンはL-OHPベースでよろしいですか。
橋:そうですね。L-OHPベースのほうが切除率が高い17)という報告がありますので、当院ではL-OHPベースで施行しています。
仁科:CPT-11は脂肪性肝炎の問題もあるので、術後の合併症の可能性も考えると、L-OHPベースのほうがよいと考えます。BOXER試験19)の結果をみるとXELOXとの併用でもよさそうですが、やはりFOLFOXのほうが好ましいですね。
瀧内:最適なベースレジメンに関しては、抗EGFR抗体派、抗VEGF抗体派ともFOLFOXということで意見は一致しているようですが、抗EGFR抗体派ではFOLFIRI、抗VEGF派はXELOXとの併用も選択肢として考えられるということですね。