消化器癌治療の広場
BAD NEWSのGOODな伝え方
Answer1 Case:胃がん


Aを選んだ方

 がんの告知はKさん,家族(妻)にとって,これまでの人生で最大のBAD NEWSの1つであると考えられます。そのため,告知を行う場合は,まず説明のための十分な時間を確保する必要があります.その際,もしできればPHSなどはつながないよう,事前にスタッフに伝えておくなどの配慮が求められます.この点で,【S:環境設定】が不十分です.また,事前の検査時に「胃がんが疑われる」と伝えてあるのですから,Kさん,家族(妻)とも「早く結果が聞きたい」というよりはむしろ「不安と緊張でいっぱい」であると考えられます.そのため,着席後すぐに検査結果を伝えることは【RE:情緒的サポート】が欠けており,好ましくありません.「寒い日が続いていますが体調はいかがですか?」,「検査をたくさん受けて大変でしたね」といった時節の挨拶や個人的な関心事など,Kさんの気持ちをやわらげる言葉かけ(【RE:安心感の提供】)ができると良いでしょう.

Bを選んだ方

 状況によって,がんの告知の際に看護師やその他のスタッフが退席したほうが良い場合もあるでしょう.同席する場合は「なぜ同席が必要なのか」をKさんに説明し,了承を得る(【S:意向の確認】)必要があります.
  患者は医師に対し,本人のみならず家族への配慮も強く希望している場合が多いですから,初対面のKさんの家族(妻)に自己紹介をしたことは【S:初対面の挨拶】【RE:家族への配慮】が行われているといえます.しかし告知の準備の際,Kさんにのみ目線を向ける行為は【RE:家族への配慮】を欠くことになります.Kさんと家族(妻)双方に目線を向けるべきでしょう.さらに,告知の前には,「残念なのですが」,「大切なお話をします」など【RE:心の準備ができるような言葉】をかけることも大切です.

Cを選んだ方

 Kさんと家族(妻)に対し挨拶と自己紹介(【S:最初の挨拶】)ができており,さらにKさんの症状経過の振り返り(【H:認識の確認】)ができています.告知の前に振り返りをすることでKさんが病気についてどのように認識しているのかを知ることができます(その認識と,これから話す内容との間にギャップがないかを事前に確認しておくことは,告知前の重要な作業です).また,Kさんだけでなく,家族(妻)へも目線が向けられていて【RE:家族への配慮】も十分です.
  検査結果を聞きにきているKさんに対し,再度,この場で検査結果を伝えても良いかの確認(【S:意向の確認】)もされており,告知までの導入として非常に良い対応ができているといえます.