消化器癌治療の広場
BAD NEWSのGOODな伝え方
Answer1 Case:結腸がん


Aを選んだ方

 BAD NEWSを伝える際は,「長い沈黙・無言の時間をいかに上手に使うことができるか」がポイントの1つです.このため,落胆し,うつむいたOさんに対しては,無言の時間を共有し,気持ちが落ち着くまで待つ(【RE:感情の肯定】)ことがとても大切です.その後「やはりショックですよね」,「おつらいですよね」など【RE:共感を示す言葉】がかけられるとさらに良いでしょう.
 また,矢継ぎ早に繰り出される医学的情報は,はたしてOさんに正しく伝わったでしょうか?残念ながら,【H:医学情報の伝え方】【RE:安心感と情緒的サポートの提供】のいずれも不十分といわざるを得ません.また,「がん」という言葉は侵襲性が高いため,繰り返し用いることも避けるべきでしょう.

Bを選んだ方

 【RE:心の準備を促したうえで】告知が行われています.しかも,最初の説明段階では「がん細胞がみつかりました」で留めており,一気にすべてを伝えないこととあわせて「がん」という言葉の繰り返しを避ける配慮(【RE:患者の気持ちへの配慮】)がされています.また,長い沈黙を共有した後(【RE:感情の肯定】),Oさんの【RE:気持ちに共感した言葉をかける】ことにより,Oさんからの説明の要求につながり,医師と患者のコミュニケーションが成立しています.
 看護師であるOさんに対してもなるべく【H:専門用語を避け】【H:理解度を確認しながら説明を続ける姿勢】は,とても理想的な対応といえます.

Cを選んだ方

 前置きの言葉で,Oさんに【RE:心の準備ができるよう配慮】されています. 若年で看護師でもあるOさんに詳しい説明を行っていますが,「医療従事者のOさん」としてとらえるのではなく,まずは「ひとりの患者」として対応するべきでしょう.より専門的な説明は,Oさんの【S:意向を確認】してから行われるのが理想的です.
 また残念なことに,治療方法について質問したOさんに対し,「後で説明する」と質問を遮ってしまっています.なぜOさんは医師の説明を遮ったのでしょうか?治療のことが早く聞きたい,ということもあるでしょうが,告知に伴う精神的動揺が大きく,医師の提供する医療情報についていけないのかもしれません.したがって,「そうですよね,治療のことが気になりますよね」などの言葉を用いて,一度,Oさん気持ちを受け止める(【RE:肯定する】)ことが大切です.
 さらに,続けて説明が必要だと感じた場合は,「治療のことをお話しする前に,もう少し病気のことをお話しさせていただいていいですか」などの言葉をかけてから,もう一度必要な医学情報を伝える作業に戻るのが理想的です.