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企業資本から完全に独立した学術研究グループ |
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坂本: 今回のASCOでは、de Gramont先生がACCENT共同研究の最新報告をなさいましたね
(#4007)。本日は、ACCENT共同研究とその研究内容について、詳しくおうかがいしたいと思います。 |
Sargent: それでは、まずはACCENT共同研究の成り立ちについてお話ししましょう。ご存知の通り、ACCENTは、結腸癌に対する術後補助化学療法における新たなエンドポイントを検討するための研究グループです。世界中の大規模無作為化第III相臨床試験の患者データを集め、プール解析を行っています。
我々はこの共同研究を実現するために、オープンなプロセスによって世界中からデータを集積しました。長い年月がかかりましたが、多くの臨床試験の責任医師がACCENT研究にデータを提供してくれました。我々はデータの透明性を保つため、何かを行う際は必ずすべての共同研究者の合意をとるようにしました。また、データを提供してくれた治験責任医師に対しては、いかなる質問にも対応し、検討することを約束しました。ACCENT共同研究はこうしてスタートしたのです。
データ集積のプロセスは容易ではありませんでしたが、Buyse先生も言われているように、個々の患者データを集めることはきわめて重要です。このような形でデータの収集をしていなければ、FDAの認可基準を変えられるような研究など、到底できないでしょう*。
*2004年のSargent先生らによるACCENT共同研究の報告を受けて、FDAは結腸癌術後補助化学療法の申請に3年DFSをエンドポイントとするよう推奨した。
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坂本: そうですね。あれだけの患者データを集めるのは、非常に困難だったと思います。ACCENT共同研究は実に素晴らしい仕事ですよ。 |
Sargent: ACCENT共同研究には大勢の研究者がかかわっているため、エンドポイントを立証する方法に関して、全員が一致することはおそらくないでしょう。ですから、我々は提案された方法はすべて、たとえそれがシンプルなものであろうと複雑なものであろうと、1つ残らず試してみることにしています。もしその方法が上手く行ったのであれば、その方法の信頼性がより高まることになりますし、うまく行かないのであれば、なぜうまく行かなかったのかを検証し、理解しなくてはなりません。
これまでに我々が発表した回帰分散プロットの図は非常にシンプルで、多くの統計学者から「単純すぎる。複雑な要素が少しも入っていない」と批判されてきました。しかし、エンドポイントを立証する際に重要なのは、臨床医と統計学者の双方にとって説得力があるということであって、その方法が複雑であるかシンプルであるかということは、重要な問題ではないと思います。
また、ACCENT共同研究のもう1つの重要な点は、いずれの企業からも1ペニーも受け取っていないということ。完全に独立した学術研究なのです。利害の衝突などまったくありません。どこかの企業が我々の検討課題を操作した、などと言う人はいません。ACCENT共同研究には、業界の関与は一切ないのですから。 |
坂本: 研究資金は自ら準備されたのですか。 |
Sargent: ええ、そうです。米国国立癌研究所から資金援助を受けました。それ以外の資金援助は受けていません。実際には多くの企業から資金提供の申し出があったのですが、企業からの資金提供を受けないことによって、我々は完全に独立した学術研究グループとして研究を行うことができるのです。これは、我々ACCENTの信頼性を確保するためには非常に重要な点だと思います。 |