次は国立がんセンター東病院 肝胆膵内科 鈴木英一郎先生です。
彼は、がん診療に情熱を燃やす若手医師の1人です。当院(沼津市立病院)で初期研修をされた縁で紹介させていただきます。謙虚に物事をよく学ぶ姿勢には、頭の下がる思いです。将来、きっと大きな舞台で活躍されるものと期待しています。
 

 「がん」という言葉に対して皆さんは、どのような考えを持たれるでしょうか。がんを治療していく際にあれこれ考えていると、がんというものがさまざまな側面を持っていることに気づかされます。今の日本では3人に1人ががんで亡くなられることを考えると、がんが「死」と結びつけて考えられるのは自然なことです。自分ががんにかかったり、あるいは身近な人ががんに蝕まれていると知った時、現代ではとかく忘れがちな「死」を意識します。中世ヨーロッパでは「死を忘れるな!」と説教され、「死」と表裏一体にある「生」を意識することが説かれたそうですが、がんは否応なく 「死」という、非日常の世界を日常に組み込み、人の「生」について考えさせます。

 また、多くの人々の努力により、がんには生活習慣病としての一面や、遺伝子との関わりがあることがわかってきました。がんは、一人ひとりが違ったかたちで増殖していくことがはっきりわかってきたわけです。つまり、がんをきちんと把握するためには、個々人を把握する必要があります。

 こうしたことを踏まえると、がんについて考えるということは、広い意味で人間そのものを考えることとつながるのではないでしょうか。がんについて考えることは必ずしも楽しいことではなく、冷酷な事実を知ることにもなりますし、知ることで苦しみが増すこともあります。ただ、そうした行為により、少しでも何かが変わる…そのような気がしてなりません。

 がん治療の専門病院の末席に身を置いた私も、がんを知ることにより自分自身を知ろうとしているのかもしれません。これからも追求の日々が続きます。

 
 
鈴木先生から石井浩先生(国立がんセンター東病院 肝胆膵内科)をご紹介いただきました。
 
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