昨年の2007年米国臨床腫瘍学会年次集会では、胃癌に対するJCOG 9912試験、SPIRITS試験が発表され、2007、2008年消化器癌シンポジウムでのACTS-GC試験、TOP-002試験を含め、エポックメーキングな年となりました。これらの成績は、胃癌治療ガイドラインへの速報掲載という治療方針に結びつき、臨床試験から実地臨床への距離は短縮されました。S-1を中心として進展してきたこれらの変化が、「世界標準」であるFPとの比較(FLAGS試験)でどのように評価されるのか注目されます。
大腸癌については、本邦でもベバシズマブが承認され、cetuximabの承認も間近とされています。従来型抗癌剤との併用によるこれらの抗体治療の組み合わせは日常臨床となりつつあり、他の癌種に対する応用も進展していくでしょう。さらに、これら現在の主流である単クローナル抗体に続いて、低分子化合物であるtyrosine kinase receptor inhibitorの臨床導入も期待されます。
今年も慶応義塾大学の久保田先生、静岡県立静岡がんセンターの寺島先生とともに、充実したスタッフで米国臨床腫瘍学会年次集会レポートをお届けします。
FOLFIRIとFOLFOXが牽引する大腸癌の化学療法で、抗体製剤がコストに見合った上乗せ効果を示すかについて注視しなくてはなりません。癌化学療法の臨床試験では、第II相試験から第III相試験ヘと症例を積み重ねるに連れて、奏効率の低下がみられます。抗体製剤も例外ではなく、上乗せ効果は徐々に薄れつつあるように思えます。
また、ACTS-GC試験やSPIRITS試験で、胃癌に対するDIFの効果が明らかにされました。米国での成績はどうでしょうか。発表が予想される進行再発胃癌を対象としたTS-1/CDDP vs FP(FLAGS試験)の結果に注目したいと思います。
さらに、化学療法の効果と良好なQOLの維持を同時に得られる投与スケジュールの工夫や、支持療法についての報告を期待します。より安楽な癌化学療法の施行は、癌患者にとって大きな福音です。
今年も久保田哲朗先生、大村健二先生とご一緒に、主要演題の速報を担当させていただくことになりました。興味深い演題を厳選して、迅速にお伝えしたいと思います。
昨年の米国臨床腫瘍学会年次集会では、我が国から進行再発胃癌に対する2つの重要な臨床試験の成績が報告されました。ACTS-GC試験もそうでしたが、我が国からも米国臨床腫瘍学会年次集会の口演に採択されるような質の高い臨床試験成績が報告されるようになったことに感慨深いものがあります。
一方、消化器癌に対する化学療法の現況を顧みますと、世界では分子標的治療薬一辺倒の感があります。この点に関して、我が国はまだ世界の後塵を拝している感が否めませんが、最近行われている臨床試験ではどんどん世界に近づきつつあるか、臓器によっては世界をリードしているものもあります。今年の米国臨床腫瘍学会年次集会では、こういった分子標的治療のさらなる発展の様子と、世界と我が国との距離感について、興味を持って報告していきたいと思っております。どうぞご期待ください。
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