演題速報 デイリーランキング
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大腸癌に関する注目演題
維持療法とVEGF阻害薬+EGFR阻害薬併用の意義
#LBA3500:GERCOR DREAM試験
1st-line治療後の維持療法としてのBevacizumab単剤投与 vs. Bevacizumab+Erlotinib療法
室:2012年 米国臨床腫瘍学会年次集会は本日最終日を迎えました。そのなかから注目すべき演題を取り上げていきたいと思います。例年同様、演題速報のレポーターの先生方に各演題の概要を紹介いただいた後、監修の先生にコメントしていただき、その後にディスカッションしていきます。最初はフランスのGERCORによるDREAM試験です。
中島:Bevacizumab (Bev) を含む1st-line化学療法を6-12サイクル行い、PDと判断されなかった患者を対象に、維持療法としてのBev±Erlotinib療法を比較した試験です。主要評価項目であるmaintenance PFS (維持療法におけるprogression-free survival) はBev群4.57ヵ月、Bev+Erlotinib群5.75ヵ月と、Erlotinibの併用により有意に延長しました (HR=0.73, p=0.0050) [図1]。Erlotinib併用群ではgrade 3以上の下痢や皮膚毒性が多く認められましたが、血液毒性はほぼ同等でした。
室:監修を担当された佐藤先生はどう思われましたか。
佐藤 (温):大腸癌における維持療法はGERCORのOPTIMOX試験1)をベースとして出てきたわけですが、今回は分子標的薬による維持療法の報告です。BevにErlotinibを上乗せすることでmaintenance PFSが約1ヵ月延長しましたが、今回はOS (overall survival) の結果は示されませんでした。大腸癌領域ではBevと抗EGFR抗体薬の併用で負の効果が示されたため2,3)、これまでは分子標的薬2剤の併用そのものに抵抗感がありましたが、この試験を機に再び分子標的薬2剤の併用に対する期待が少し膨らむのではないでしょうか。今後臨床に導入するためには、Erlotinib併用によって得られる生存期間の延長が有害事象やコストの増加に見合うかどうかを検討する必要があると思います。
室:山﨑先生はいかがですか。
山﨑:主要評価項目をmaintenance PFSとしたことが妥当なのか、疑問が残ります。また、比較対照のBev単剤が標準治療でない点も釈然としません。
吉野:同感です。維持療法を検討したMACRO試験4)では、XELOX+Bevacizumab療法に対するBev単剤投与の非劣性が示されておらず、Bev単剤投与がreference armとして成立していないという問題があります。また、非小細胞肺癌に対する維持療法としてのBev±Erlotinib療法の第III相試験では、PFSは延長したものの、OSの延長は示されませんでした5)。他の癌腫をみる限りでは、抗体薬とチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の併用は相性がよいので、あり得る組み合わせだったとは思います。
大村:胃癌や大腸癌の分野では、低分子化合物は最近まで目立った成績が出ていませんでしたが、今回は抗体薬との併用でポジティブな結果が出たわけですね。ただ、maintenance PFSの1ヵ月の延長がどれだけの意味をもつのかは疑問です。
室:確かに疑問の残る結果ではありますね。ただ、非小細胞肺癌では最近、DocetaxelやBev、Pemetrexed、Erlotinib、Bev+Erlotinibなど、1st-line化学療法とは別の薬剤を用いる維持療法 (switch maintenance) が新たな治療戦略として注目されてきており、さらに1st-line化学療法の一部薬剤 (GemcitabineやPemetrexedなど) を継続する維持療法 (continuation maintenance) にも耳目が集まっています。本試験は大腸癌において初めて統計学的にポジティブな結果の得られた維持療法 (switch maintenance) の報告であり、Oxaliplatin (L-OHP) のStop-and-Goを考える場合には、今後このような維持療法が治療戦略の1つになり得るという期待をもたせてくれる結果だったと思います。
Lessons from #LBA3500
- Bevを含む1st-line化学療法後の維持療法としてのBev+Erlotinib療法は、Bev単剤と比べてPFSを有意に延長させた (HR=0.73, p=0.0050)。
- これまで抗VEGF抗体薬 (Bev) と抗EGFR抗体薬 (Cetuximab、Panitumumab) との併用では、毒性増強もあり、効果の減弱した報告が続いていたが (CAIRO2試験2)、PACCE試験3))、BevとEGFR-TKIの併用が有用である可能性が示唆された。
- Bev単剤による維持療法の効果が証明されておらず、reference armとして問題がある。
- L-OHPのStop-and-Goを考える上で、今後は維持療法が大腸癌の有力な治療戦略の1つになり得る可能性がある。