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大腸癌に関する注目演題
2nd-lineの新たな治療選択――BBP、Aflibercept、Panitumumab
#CRA3503:TML試験
OSの延長は有意ながらもBRiTEで期待されたほどの差は示されず。
BBPは2nd-line治療のスタンダードとなり得るか
室:続いて2nd-lineの話題を3つ取り上げます。まずは、2012年 米国臨床腫瘍学会年次集会の消化器癌領域で最も大きな話題となったBBP (Bevacizumab Beyond First Progression) を検討したTML試験です。結城先生、お願いします。
結城:BRiTE6)、ARIES7) などの観察研究においてBBP によるOSの延長が示唆されていましたが、今回はBBPに関する無作為化第III相試験です。1st-lineでBev併用化学療法によりPDとなった患者を対象に、2nd-lineにおける化学療法±Bevの効果を比較しました[図2]。その結果、主要評価項目である無作為化後のOSは化学療法群で9.8ヵ月、Bev併用群で11.2ヵ月とBev併用により有意に延長しました (Unstratified HR=0.81, p=0.0062)[図3]。PFSもBev併用群で有意に延長しています。有害事象も既報告と同等でした。
室:寺島先生はどう思われましたか。
寺島:今回、初めて前向きの第III相試験でBBPの有効性が検証されました。適格基準は1st-line治療のPFSが3ヵ月以上の症例ですから、Bev併用化学療法がある程度有効であった症例という条件付きで推奨されるべきだと考えます。ただ、1.4ヵ月というOSの差と医療費の増加をどう考えるかという問題があります。
小松:BRiTE6)で示されたような大幅な延長が期待されていたので少し残念ですが、大腸癌領域で有意なOSの延長が示されることは少ないため、その点は評価できます。
室:実臨床でもこれを標準治療として使っていきますか。
小松:副作用も管理しやすいですし、使うことになると思います。ただコストの問題はありますので、今後、Bevの薬価が下がることを期待します。
佐藤 (温):実臨床では、KRAS 変異型の場合は全く問題ないと思います。
山﨑:KRAS statusに関係なくポジティブな結果が得られたので、基本的には使用する方向になると思います。2nd-lineで抗EGFR抗体薬の併用によってOSが延長した試験はありませんから、KRAS 野生型の患者さんに対してもBBPを提示することになると思います。
室:確かにCetuximabのEPIC試験8)でも、Panitumumabの20050181試験9)でもOSの延長は示されていませんね。岩本先生はいかがですか。
岩本:OSのサブグループ解析では、女性や1st-line治療のPFS が9ヵ月以下の患者など、いくつかのサブグループでBev併用群が良好とはいえませんでした[表1]。それも患者選択時の判断のポイントになると思います。
吉野:女性のHRは0.99ですが、使わないほうがよいのでしょうか。
室:これは単変量解析ですし、サブグループ解析では確定的なことは言えないのではないでしょうか。
大村:ひとまず色々な要素を考えずに、OSとPFSの延長が認められたという今回の結果をそのまま受け止めていいのではないかと思います。しかし単変量解析とはいえ、女性は294例もありますから、判断が難しいですね。このデータから何らかのバイオマーカーが示されるのを期待します。
室:Bevに関してはplasma VEGFなど、さまざまなバイオマーカーが検討されているので期待したいところですね10-12)。VEGF阻害薬は新規のAflibercept、Regorafenibなどが登場し、CORRECT 試験13)によって3rd-lineでもRegorafenibを使える状況になってきました。肺癌領域ではすべてのラインでBevを使い続けるという試験も進行中です14)。このような状況で、今後の大腸癌領域はどうなっていくのか、抗EGFR抗体薬の位置づけなども含めてご意見をお聞かせいただけますか。
佐藤 (温):私は1st-lineでの薬剤選択と同様に、2nd-lineでも KRAS 野生型の場合は抗EGFR抗体薬か、Bev継続かの判断が必要になると考えています。
室:患者さんに対しどのような治療選択肢を提示するのか、我々医師の判断とインフォームドコンセントが必要になってくるということでしょうか。2nd-lineの抗EGFR抗体薬とBev継続投与の比較に関しては、SPIRITT試験15)が進行中です。日本でもWJOGで試験が行われていますので (WJOG 6210G試験)、その結果待ちですね。
中島:この試験はBevと抗EGFR抗体薬の使用順序を決定する試験ではありませんから、どのような患者さんでBevではなく抗EGFR抗体薬を先に使うかという臨床的判断は、今までと変わらないと思います。1st-line治療でBevを3ヵ月以上使えた患者さんには、KRAS 遺伝子型にかかわらず2nd-line治療でBevを継続することになると思いますが、佐藤先生のおっしゃるように、2nd-line開始時にaggressiveな病状進行を示して、速いレスポンスを得たい場合には、抗EGFR抗体薬を選択する場合も臨床現場ではあり得ると思います。2nd-lineでのBBP vs. 抗EGFR抗体薬の直接比較の試験結果を待ちたいところです。
山﨑:費用の問題はありますが、特にKRAS 変異型の患者さんにも新しい治療法ができたのは非常に喜ばしいことだと思います。
小松:Bevが3rd-line以降に効果があるというエビデンスはないので、2nd-lineでの継続投与の有用性が証明されたのであれば、対象となる患者さんには使いたいところです。もちろん佐藤先生がおっしゃるように、2nd-lineで抗EGFR抗体薬が必要な患者さんもいると思いますので、その見きわめは必要だと思います。
Lessons from #CRA3503
- BBPによって無作為化後のOSが有意に延長した (Unstratified HR=0.81, p=0.0062)。
- 今後はKRAS 遺伝子変異の有無に関係なく、一部の症例を除いてBBPが2nd-lineの治療選択肢の1つとなる。
- KRAS 野生型では、2nd-lineでBBPではなく抗EGFR抗体薬を投与すべきケースもあるため、症例選択など、担当医の適切な判断が求められる。