演題速報レポート American Society of Clinical Oncology 48th Annual Meeting 2012 June 1st-5th at CHICAGO,ILLINOIS

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現地座談会

大腸癌に関する注目演題

術後補助化学療法、日本と欧米からの最新報告

#3522 / #3523

術後補助化学療法4試験のプール解析:L-OHPの上乗せ効果を再検討

室:続いてはL-OHPに関する術後補助化学療法のプール解析の報告です。中島先生、2演題続けて概要をご紹介ください。

中島:#3522、#3523ともにstage III結腸癌における 4つのRCT (X-ACT試験35)XELOXA試験36)NSABP C-08試験37)AVANT試験38)) の統合解析です[図12]
 #3522では、年齢と合併症がL-OHPの上乗せ効果に与える影響を見ています。年齢を70歳未満と70歳以上で分け、合併症をCharlson Comorbidity Index (CCI) とNCI Combined Index (NCI) のスコアで解析しました。DFSとOSに関する単変量解析では、年齢、合併症の有無にかかわらず、5-FU/LVへのL-OHPの有意な上乗せ効果が認められました[表5]
 一方、#3523では、L-OHPを含む術後補助化学療法の再発後の生存 (PRS : post-relapse survival) に与える影響をみています。結果としては、L-OHP使用の有無はPRSに影響を与えませんでした[図13]

室:L-OHPを使うとその後に使える治療がなくなり、PRSが不良になるのではないかという議論がありますが、今回はそれが否定されたということでした。#3522に関しては、ACCENT研究により、高齢者に対するL-OHPベースの術後補助化学療法は5-FU/LVと比べて有意な上乗せ効果はないという結果が報告されていますが39)、今回の統合解析では高齢者においても有意な上乗せ効果が示されていますね (p=0.045)。

佐藤 (温)先生佐藤 (温):今回の報告では、高齢と合併症はL-OHPの上乗せ効果に関係しないという結果でしたが、高齢者ではL-OHPの上乗せ効果が弱まる傾向があるため、何らかの影響が出てくるかもしれないと演者も指摘していました。PRSに関しては何ら影響しないということで、実臨床において治療方針を決める際に役立つデータといえます。基本路線としては、L-OHPの併用に問題はないけれど、高齢者では生物学的年齢に個人差が大きいため、実臨床の場で個々の患者さんにL-OHPが必要かどうかを判断していく形になると思います。

室:一方で、先ほど議論した通り、日本からはJCOG 0205試験 (#3524) でフッ化ピリミジン系薬剤による良好な生存成績が報告されました。今後、わが国では術後補助化学療法をどのような方向で考えればよいと思われますか。

佐藤 (武):日本として、stageのなかで選ぶレジメンを決めていくべきだと思います。例えばこのレベルでは5-FUベース、このレベルにはL-OHP併用、といったことを検証していく必要があります。

室:吉野先生はいかがでしょう。

吉野:L-OHPに関する試験としてはstage II/III結腸癌を対象としたmFOLFOX6の忍容性を検証するJFMC41 (JOIN) 試験40) と、stage IIIB症例におけるSOX vs. UFT/LVの比較試験の2本が走っており、現在はまだL-OHPが必要な症例、不要な症例に関してYes/Noが言えない状態です。
 また、今年の8月からstage III 症例を対象に、FOLFOXの6ヵ月投与と3ヵ月投与を比較するJFMC47 (ACHIEVE) 試験41)を始めることになりました。本試験はL-OHPベース化学療法の3ヵ月 vs. 6ヵ月投与の比較試験を実施中の計6ヵ国で統合解析を行うIDEAというプロジェクトに参加しており41)、共同でL-OHPに関するデータをつくる予定です。サブグループ解析で日本の成績を他国と比較することで、日本の外科手術についても評価できるのではないかと考えています。

室:日本のエビデンスだけで実臨床が成り立つわけではありませんが、かといって日本の手術の質の高さは無視できない事実であり、海外のエビデンスをすべて唯々諾々と受け入れればよいわけでもありません。これらをうまく協調させて、エビデンスを積み上げていくことが大事ですね。日本の手術の質を外国にアピールする一方で、海外の試験にも参加していくという両面が必要だと思います。

Lessons from #3522 / #3523 / #3524

  • [#3524]日本のstage III大腸癌の術後補助化学療法において、UFT/LVのRPMIに対する非劣性が証明された。海外の試験と比べて非常に成績がよく、その理由は主に患者背景と手術の質の差によるものと考えられる。
  • [#3522]欧米の4試験のプール解析では、L-OHP併用術後補助化学療法は毒性の管理に注意が必要であるが、高齢者 (70歳以上)、合併症の有無にかかわらず有用であることが確認された。
  • [#3523]L-OHPの使用が再発後の生存期間に悪影響を及ぼすことはなかった。
  • 本邦において術後補助化学療法にL-OHPが必要か否か、また、海外のエビデンスを外挿するのかしないのか、外挿する場合にはどのようにしていくのかが今後の課題である。
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