維持療法
#3503:AIO KRK 0207試験
切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとしてのフッ化ピリミジン系製剤 (FP) + L-OHP + Bevacizumab (Bev) 後の維持療法としてのFP + Bev、Bev単剤、無治療 (chemo-holiday) を比較
室:2014年の米国臨床腫瘍学会年次集会も、本日をもって終了しました。今年も注目演題が多くみられましたが、今年の現地座談会は、non-CRCとCRCとに分けて開催したいと思います。今回、大腸癌の維持療法ではoralで2つの報告がありました。昨年も報告されたCAIRO3試験では追加解析について発表されましたが (#3504)、ここでは新しく発表されたAIO KRK 0207試験を取り上げます。
坂井:本試験では、フッ化ピリミジン系製剤 (FP) + L-OHP + Bevacizumab (Bev) による導入療法後の維持療法において、FP + Bevに対する無治療およびBev単剤の非劣性が検討されました。FPは一般的な標準治療となっているので、FP + L-OHPはFOLFOXだけでなくCapeOxも含まれます。
24週間の導入療法後に3群に無作為に割り付けられ、それぞれ維持療法をPDまで行い、無作為化からPDまでの期間をPFS1と設定しました。その後、導入療法として使用されていたレジメンを再導入してPDまで行い、無作為化から2度目のPDまでの期間をTFS (time to failure strategy) としています。
主要評価項目であるTFSの中央値は、FP + Bev群6.8ヵ月、Bev群6.5ヵ月、無治療群6.1ヵ月であり、FP + Bev群に対するBev群の非劣性は認められましたが (HR=0.98, 95% CI: 0.76-1.26, p=0.85)、無治療群の非劣性に関しては、非劣性マージンの1.43を超えたため認められませんでした (HR=1.22, 95% CI: 0.96-1.57, p=0.11) (図1)。なお、PFS1の中央値は、それぞれ6.2ヵ月、4.8ヵ月、3.6ヵ月で、FP + Bev群はBev群 (p=0.13)、無治療群 (p<0.001) いずれに対しても有意な延長を認めました (図2)。
維持療法の中止理由は、FP + Bev群では毒性や患者拒否が多く、再導入率も21%と、Bev群 (43%)、無治療群 (45%) に比べて低値でした。なお、OSの中央値は、それぞれ23.8ヵ月、26.2ヵ月、23.1ヵ月で有意差はなく、PFS1の延長を目指すのであれば、FP + Bevが最良という結論でした。
室:佐藤温先生はどうお考えでしょうか。
佐藤 (温):OPTIMOX2試験でchemo-holidayは否定されましたが1)、毒性を和らげる維持療法については、本試験とCAIRO3試験で肯定的な結果が出ています。昨年の米国臨床腫瘍学会年次集会では、intermittentかcontinuousかが論点になりましたが、本報告の後にdiscussantのSaltz先生は、「維持療法は確かに有用だと言えるが、OSに差がないのであれば、患者にとってはchemo-holidayもメリットがある」と、踏み込んだコメントをされていました。化学療法を行っていない時期における患者の時間的拘束、副作用の影響を排除できる可能性はあり、患者の価値観によってはchemo-holidayも選択肢に入るとのことで、今後の医療の方向性として考えられると思います。
室:今回、非劣性マージンが1.43と大きいですね。
佐藤 (武):恐らく、FP + Bevに対する無治療の非劣性もあるので、大きく設定したのではないでしょうか。
室:維持療法は、試験デザインと評価項目の設定が難しいですね。本試験の導入療法24週というのも長すぎると思います。また、本試験の主要評価項目はTFSで、CAIRO3試験では同様の評価項目でPFS2という名称でしたが、本質的なことを言えば、OSで優位性が示す必要があると思いますが、いかがでしょうか。
大村:我々は最終的にはOSを延ばすことを目的としており、chemo-holidayと比べてOSに差がないのであれば、FP + BevやBevを行う意味があるのか疑問に思います。
寺島:ただ、OSに関してはまだ中間解析で、Kaplan-Meier曲線を見ると前半にヒゲが立っているため、長期追跡をすれば差は出てくる可能性はあると思います。
室:これまでFP + Bev、Bev単剤、無治療の3群における比較試験はありませんでしたが、無治療群とFP + Bev群の間に、ちょうどBev群が来ており、単剤では効果が乏しいと考えられていたBevも維持療法では単剤投与が選択肢になり得るかもしれません。
維持療法には、本試験やCAIRO3試験のようなcontinuation maintenanceに加えて、肺癌で話題になっている、別の薬剤を使用するswitch maintenanceも可能性があるでしょう。今後は、維持療法でも日本人ならではの試験を考える必要があると思っています。
Reference
- 1) Chibaudel B, et al.: J Clin Oncol. 27(34): 5727-5733, 2009[PubMed]
Lessons from #3503
- FP + L-OHP + Bev後の維持療法として、PFS1延長の観点からはFP + Bevが最良の選択肢であったが、Bev 単剤もTFSで非劣性が示された。
- ただし、OSは3群間で有意差を認めなかったことから、患者にとってはchemo-holidayもメリットがあり、選択肢の1つになり得る。