2014年 米国臨床腫瘍学会年次集会 現地座談会 CRC編

肺切除および肝切除

#3528:肺切除の日本における多施設共同研究
肺転移のR0切除が行われた症例の切除成績と周術期化学療法の効果を後ろ向きに検討

室:次は、肺切除と肝切除に関する日本からの報告です。まずは肺転移切除について、中村先生にレポートしていただきます。

中村:本試験は、肺転移切除の効果を後ろ向きに検討した報告です。2004~2008年に国内46施設から1,237例が登録され、肺転移に対して初回R0手術が行われた898例が解析対象となりました。そして、周術期治療については、手術単独群、術後化学療法 (Post-C) 群、術前化学療法 (Pre-C) 群、術前および術後化学療法 (Pre-and post-C) 群の4群に分けて検討されました。

 結果は、5年DFSが35.3%、5年OSが65.7%と、非常に優れた成績が得られています (図3)。予後因子としては、年齢、DFI (disease free interval)、胸腔外病変、肺切除前のCEA値、肺転移の個数と腫瘍径が挙げられました。

 周術期治療は、手術単独が45%、Post-Cが42%、Pre-Cが6%、Pre-and post-Cが7%で、DFS、OSともに手術単独群およびPost-C群で良好でしたが、Pre-C群とPre-and Post-C群の割合が少ないので比較は難しいと思います (図4)。なお、Post-C群におけるレジメン別の検討では、L-OHPベース、5-FUベースいずれも、DFS、OSともに手術単独群と差がありませんでした。

室:大村先生、いかがでしょうか。

大村:近年、切除不能進行・再発大腸癌のOSは30ヵ月に届こうとしていますが、新規抗癌剤の導入はもちろん、転移巣を積極的に切除するようになったことが大きく寄与していると考えられます。肺転移の切除は肝転移ほど積極的に行っていない施設が多いと思いますが、今回のデータは驚くほど良好で、特にR0切除例の5年OS 65.7%は、これまでの肝切除の報告を上回るほどです。

 今後、肺転移に対する術前術後の化学療法の研究を進めるとともに、腫瘍内科医、消化器外科医、呼吸器外科医が力を合わせることで、より良い治療成績が得られると期待されます。

寺島:OSの結果は、参加施設により成績が異なると思いますが、本試験はどうだったのでしょうか。

室:本試験は、筑波大学の兵頭先生が中心となって多施設に広げ、WJOG参加施設も含まれているようです。

寺島:つまり、日本の標準的な施設ではなく、high volume centerが多いわけですね。

室:5年OSが肝転移の成績よりも良好だった理由として、何が考えられるでしょうか。

小松:肺転移数1個の症例が71%と、転移数が比較的少なかったことも影響していると思います。

佐藤 (武):大腸癌研究会の肺転移プロジェクト研究 (1991~2003年の症例) では、5年生存率が47%でした。術後化学療法が53%に入っていますが、当時はフッ化ピリミジン系製剤くらいしか使えなかった時代です。

大村:ただ、薬剤の進歩だけで5年OSがこれだけ延長するとは考えにくいですね。

室:CT等の画像による診断能が向上し、最近では微小病変の診断能の精度が格段に上がってきています。そのことから、患者選択がよりselectiveになったことも要因の1つと考えられます。

 本試験では、DFSとOSのKaplan-Meier曲線の形が大きく異なっています。原因は再手術 (35%) などが考えられますが、こうなるとDFSをOSの代替評価項目としていいのか、問題になるかもしれません。

Lessons from #3528
  • R0肺切除を行った大腸癌患者の5年OSは65.7%と極めて良好で、これまでの肝切除の成績を上回った。
  • OSの延長には、化学療法の進歩に加え、再手術、画像機器の進歩による患者選択の改善なども寄与していると考えられる。
  • 今後は腫瘍内科医、消化器外科医、呼吸器外科医などが協力していくことが重要である。

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