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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 大腸癌肝転移に対する切除は広く行われているが、治癒切除された場合においても高率に再発を認め、臨床的に問題となる。そこで、大腸癌肝転移切除後の補助化学療法について、本試験が計画された。

対象と方法

 肝外転移を認めない大腸癌肝転移R0切除例 (PS 0-2、20-80歳) が対象とされた。これらの症例をUFT/LV群 (UFT 300mg/m2 + LV 75mg/day 4週投与1週休薬を1サイクルとして、5サイクル投与) と手術単独群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は無再発生存期間 (recurrence-free survival: RFS)、副次評価項目はOSと安全性とした。大腸癌肝転移切除後の3年RFSがUFT/LV内服により20%から35%になることを期待し、有意水準5%、検出力75%における目標症例数を180例と設定した。

結果

 2004年2月から2010年12月までに180例が登録され、UFT/LV群と手術単独群ともに90例が無作為に割り付けられた。なお、UFT/LV群2例、手術単独群1例が除外基準に抵触したため、解析対象はUFT/LV群88例、手術単独群89例となった。両群の臨床病理学的背景に有意差を認めなかった。

 UFT/LV群の治療完遂率は1サイクル目85.4%であり、以後2サイクル目 78.0%、3サイクル目 69.5%、4サイクル目64.6%と推移し、予定された5サイクルまで完遂できた症例は54.9%であった。有害事象として高ビリルビン血症 (28.0%)、肝機能障害 (23.2%)、下痢 (26.9%)、食思不振 (28.0%) がみられたが、化学療法関連死は認められなかった。

 観察期間中央値4.76年の時点において、3年RFSはUFT/LV群38.6%、手術単独群32.3%、5年RFSはそれぞれ35.6%、32.3%であり、両群間に有意差が認められた (HR=0.56, 95% CI: 0.38-0.83, p=0.003)。OSについては、3年OSはUFT/LV群81.6%、手術単独群82.8%、5年OSはそれぞれ66.1%、66.8% (HR=0.80, 95% CI: 0.48-1.35, p=0.41) と有意差を認めなかった。再発形式 (肝転移のみ、肺転移のみ、肝と肺、肝と肺以外)、再発後の切除率について、両群間に有意差は認められなかった。

結論

 大腸癌肝転移切除後のUFT/LVによる補助化学療法は、再発予防に有用であった。なお、OSに有意差は認められなかったことから、2年後に最終解析を行う予定である。

コメント

 本研究の登録には2004年2月から6年10ヵ月を要しており、R0切除が行われた孤立性の肝転移症例を集積することの困難さがうかがえる。肝転移切除術後の5-FU/LVによる術後補助化学療法と手術単独を比較した海外のRCTが2つあるが、いずれも症例数は本研究の登録数の180未満であった1, 2)。なお、NSABP C-063) やJCOG02054) の結果から、大腸癌の術後補助化学療法においてUFT/LVは5-FU/LVと同等であるとされている。肝転移巣切除術後の補助化学療法でも、5-FU/LVとUFT/LVをほぼ同等と考えてよいであろう。

 本研究では、主要評価項目である3年後のRFSは有意にUFT/LV群が良好であった。しかし、両群のOS曲線は重なっており、RFS曲線と対照的であった。演者らは「両群のOS曲線がほぼ重なる理由は不明であり、2年後の最終解析で明らかになるであろう」と述べている。なお、肝切除術後の再発部位をみると、肝、肺、肝および肺、肝外および肺外が、手術単独群で各21例 (34.4%)、10例 (16.4%)、8例 (13.1%)、22例 (36.1%)、UFT/LV群で24例 (40.7%)、13例 (22.0%)、4例 (6.8%)、18例 (30.5%) であった。いずれにしても本研究の結果は、わが国における大腸癌肝転移切除術後の補助化学療法のstandardにUFT/LVを位置付けるものと考えられる。

(レポート:中村 将人 監修・コメント:大村 健二)

Reference
  1. 1) Langer B, et al.: 2002 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #592
  2. 2) Portier G, et al.: J Clin Oncol. 24(31): 4976-4982, 2006[PubMed
  3. 3) Lembersky BC, et al.: J Clin Oncol. 24(13): 2059-2064, 2006[PubMed][論文紹介
  4. 4) Shimada Y, et al.: 2012 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3524

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