2010年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2010年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #414

切除不能進行再発大腸癌の1st-line治療におけるpanitumumab+FOLFIRI療法の第II相試験
(20060314)の一次解析

Primary analysis of a phase II study (20060314) combining first-line panitumumab (Pmab) with FOLFIRI in the treatment of patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC).

Claus-Henning Köhne, et al.

FOLFIRI+Panitumumab療法は1st-line治療として有望である

瀧内 比呂也先生

 Panitumumab(Pmab)は、既に2nd-line治療の20050181試験において、FOLFIRIとの併用効果が示されている。今回の20060314 試験において、1st-line治療におけるFOLFIRI+Pmabの第II相試験結果が報告された。
 一次エンドポイントである奏効率は、KRAS 野生型では56%、KRAS 変異型では38%であり、CRYSTALにおけるFOLFIRI+cetuximabの57%(KRAS 野生型)と36%(KRAS 変異型)とほぼ同じ結果であった。さらに、奏効率を他の重要な試験と比較すると、OPUSにおけるFOLFOX+cetuximab(KRAS 野生型)は61%、NO16966のFOLFOX/XELOX+bevacizumabは38%であり、今回のデータも有望であることが示唆される。
 また、肝切除率に関するデータも紹介されており、KRAS 野生型では15%、KRAS 変異型では7%と、奏効率と相関する結果となっていた。
 今後、抗EGFR抗体薬の1st-line治療における役割の1つとして、cureを目指した治療戦略、conversion therapyが大きくクローズアップされ、熱く議論されるようになるだろう。

 
背景

 完全ヒト型抗EGFR抗体であるpanitumumab (Pmab)は、切除不能進行再発大腸癌のKRAS 野生型患者における単剤療法での有効性が示されている。1st-line治療としてのPmab+FOLFIRI療法の効果とKRAS statusとの関連をプロスペクティブに解析した。

方法

対象は、切除不能進行再発結腸・直腸癌と診断された、ECOG PS 0-2、前治療歴のない18歳以上の患者である。Pmab(6mg/kg)+FOLFIRI療法を2週に1回施行した。評価項目は下記の通りである。

  • 一次エンドポイント
Objective response rate (ORR)
  • 二次エンドポイント
Disease control rate (DCR)、time to progression (TTP)、duration of response、duration of stable disease、time to response (TTR)、time to treatment failure (TTF)、progression-free survival (PFS)、安全性
結果

 登録患者154例のうち145例(94%)でKRAS statusが確認され、KRAS 野生型は86例(59%)、KRAS 変異型は59例(41%)であった。
 一次エンドポイントであるORRは、KRAS 野生型56%および変異型38%であり、overall resection rate(切除率)は15%および7%と、KRAS 野生型で高値であった。
 Duration of response中央値はKRAS 野生型13ヵ月および変異型7.4ヵ月(HR=0.28 [95%CI:0.13-0.61])、PFS中央値は8.9ヵ月および7.2ヵ月(0.46 [0.31-0.70])、time to disease progression中央値は11.2ヵ月および7.3ヵ月であり(0.40 [0.25-0.62])、KRAS 野生型では変異型に比べて高値であった。
 Grade3以上のinfusion reactionは、KRAS 野生型および変異型のいずれにも認められなかった。

結論

 本解析によって、1st-line治療におけるPmab+FOLFIRI療法の忍容性の高さが示され、KRAS statusと効果の関連について示唆された。
 Pmab+FOLFIRI療法において、KRAS 野生型ではKRAS 変異型に比べて、ORR、PFS、time to disease progressionで改善が認められた。切除率は、KRAS 野生型で15%であり、変異型(7%)に比べて高かった。