論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

7月

LV/5-FUとbevacizumabの併用療法:
転移性結腸・直腸癌に対するfirst line治療として有効

Hurwitz HI, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(15): 3502-3508

 著者らは以前に、転移性結腸・直腸癌患者に対する第III相試験を実施し、first line治療において、血管内皮成長因子(VEGF)を標的とする遺伝子組換えヒト化モノクロナール抗体bevacizumab(BV)をLV/bolus 5-FU/CPT-11(IFL療法)に併用すると、IFL療法単独よりも生存率が向上することを報告している(IFL/BV療法 と IFL/プラセボ療法との比較試験)。今回、この第III相試験の第3集団コホートにおいて、LV/5-FU/BV併用療法の安全性と有効性をIFL単独療法と比較した。
 対象は、年齢18歳以上、組織学的に確認された転移性結腸・直腸癌患者で、2方向測定可能病変を有し、ECOG PS 0〜1の未治療患者(n=923)であり、IFL/プラセボ群(対照群)、あるいはBV併用群(IFL/BV群ないしLV/5-FU/BV[RPMI/BV]群)に無作為に割り付けた。BV併用群では、BV 5mg/kgを2週間毎に静脈内投与した。IFL/BV群における安全性を確認するため、313例を1:1:1の割合でこれら3群に割り付けて中間解析を実施したところ、IFL/BVの安全性は許容可能であることが確認された。このため、以後のIFL/BV群への割り付けを継続する一方で、LV/5-FU/BV群への新規割り付けは中止された。
 OS中央値はLV/5-FU/BV群(n=110)、IFL/プラセボ群(n=100)でそれぞれ18.3ヵ月と15.1ヵ月、PFSの中央値はそれぞれ8.8ヵ月と6.8ヵ月であった。全奏効率(CR+PR)はそれぞれ40.0%と37.0%、奏効期間の中央値はそれぞれ8.5ヵ月と7.2ヵ月であった。有害事象は、LV/5-FUまたはIFLを基本とする治療から予測されたものであり、BV投与群にはグレード3の血圧上昇と出血が発現したが、概ね容易に対処できた。
 LV/5-FU/BV療法はIFL単独療法と同程度に有効で、忍容性は概ね良好であった。LV/5-FU/BV療法は、未治療の転移性結腸・直腸癌患者に対する有効なfirst line治療の候補となると考えられる。

考察

Bevacizumab併用化学療法:
今後、結腸・直腸癌において期待されるregimen

 Bevacizumab(BV)は結腸・直腸癌のみならず、肺癌、乳癌など様々な癌で、殺細胞性抗癌剤との併用療法で良好な成績を上げている。結腸・直腸癌ではIFL療法にBVを併用することで、OSが併用群で20.3ヵ月、非併用群で15.6ヵ月と有意な延長を示している。本論文のLV/5-FU/BV療法は忍容性に優れ、有効性は有意差こそ出なかったもののIFLと同等以上の成績を示した。IFLとLV/5-FU/BVの毒性の比較では、IFLは好中球減少が出現しやすい傾向があり、かたやLV/5-FU/BV療法は高血圧、脱毛以外の皮膚毒性、味覚障害、流涙の異常が出現しやすい傾向が認められた。IFL療法は、CPT-11の消化管毒性のために、消化管の通過障害や胆汁排泄に障害がある患者などで使用を制限されるが、これらの患者に対して、本療法は初回治療の候補となりうる。ASCO 2005においてBV併用療法のQOLの評価が報告されたが、IFLにおいてもFLにおいてもBVはQOLを損なうことなくOSの延長をもたらしていた。また、FOLFOX 4との併用、非併用の比較第III相試験で併用群に有意なOS、PFSの延長が認められている。BVは本邦で臨床試験が開始されたところであるが、早い時期での国内承認が待たれる薬剤である。

監訳・コメント:埼玉県立がんセンター 山口研成(消化器内科・副部長)

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