局所進行直腸癌患者に対する術前L-OHP+5-FUおよび外部照射療法の第 I / II 相試験: CALGB 89901
Ryan DP, et al., J Clin Oncol. 2006; 24(16) : 2557-2562
進行結腸・直腸癌患者に対する5-FU療法にL-OHPを併用すると生存率が改善される。またL-OHPには放射線感受性増強作用が認められる。本研究は、局所進行直腸癌患者において術前の5-FU持続静注と外部照射放射線治療に対し、週1回のL-OHP投与を加えた療法を評価した第 I / II 相試験である。
2000年12月〜2003年11月にかけて登録された、臨床的T3〜4の局所進行直腸癌患者(肛門縁より12cm以内、腹部CT検査で転移が認められず、神経障害の既往のないもの)44例を対象とした。1サイクル7日間として、5-FU 200mg/m2/日を24時間かけて持続静注で7日連続投与、L-OHPを各サイクルday 1に5-FUと同時に投与開始し、1時間かけて静注した。治療は6サイクルまでとした。また外部照射療法は後方および両側方からの三門照射もしくは前後および両側方からの四門照射で行い、原発巣および周囲軟部組織、内腸骨、仙骨前リンパ節に対して1回につき1.8Gy、約5週間かけて45Gy照射した。ブースト照射は5.4Gy/3回とした。照射に対する感受性を最大にするため、L-OHP投与後2時間以上おいて照射した。
第 I 相(18例)において、L-OHP投与量を30〜60mg/m2/サイクルとし、その最大耐用量(MTD)を検討して60mg/m2/サイクルと決定した。第 II 相(26例)においては、L-OHPのMTD投与における毒性を検討した。この際、第 I 相においてL-OHP 60mg/m2(MTD)を投与した6例の結果も含め計32例に関して解析した。その結果、12例(38%)でグレード3〜4の下痢を発現した。重篤な神経障害はなく、21例(66%)がグレード1〜2の神経障害を発現した。骨髄抑制に関しての毒性では2例がグレード3の好中球減少、1例がグレード3の血小板減少を発現した。18例(56%)が6サイクルの投与を完逐した。また8例(25%)が病理学的CRを示した(95%CI 11〜43%)。
局所進行直腸癌患者に対する術前放射線化学療法において、5-FU+L-OHP併用療法は、高い病理学的CR率を示したが5-FU単独療法に比較して毒性が強かった。本レジメによる治療法は現在、NSABPにおいて検討されている。
L-OHPを用いた直腸癌に対する術前化学放射線療法の評価
最近報告されたEORTCの臨床試験でも行われているように、直腸癌の術前放射線療法では照射療法にchemothrapyを併用するchemoradiothrapyが広く行われている。これらの多くは5-FU療法を併用するものであるが、本論文は、これらにさらにL-OHP投与を加えた療法の第I/II相試験の検討である。本論文ではL-OHPの最大耐用量を60mg/m2/サイクルとして検討した結果、38%にグレード3〜4の下痢が認められ、25%が病理学的CRを示している。術後合併症は縫合不全1例、感染1例といずれも高頻度ではないが、これまでの5-FU単独療法に比較して毒性が強い結果である。本療法のCR率は25%であったが、本論文でも触れられているように5-FU単独療法を併用した場合のCR率は、これまで5〜29%と報告されている。本療法の臨床応用においては毒性が強い点が問題となり、この点からも、現在進行中であるNSABPの解析結果が待たれる。
監訳・コメント: 帝京大学医学部 渡邉 聡明(外科・教授)