Cetuximabを併用した術前補助化学療法後の腫瘍反応と大腸癌肝転移の二次的切除の可能性:第U相無作為化試験CELIMの結果
Tumour response and secondary resectability of colorectal liver metastases following neoadjuvant chemotherapy with cetuximab: the CELIM randomised phase 2 trial.
Folprecht G, Gruenberger T, Bechstein WO, Raab HR, Lordick F, Hartmann JT, Lang H, Frilling A, Stoehlmacher J, Weitz J, Konopke R, Stroszczynski C, Liersch T, Ockert D, Herrmann T, Goekkurt E, Parisi F, Kohne CH.
Lancet Oncol. 2010; 11, 38-47.
切除不能な肝転移を有する大腸癌患者111例を対象に、術前化学療法としてcetuximabをFOLFOX6またはFOLFIRIと併用した場合の奏効率および治療後の肝転移巣の切除率を第U相無作為化試験CELIMにより比較検討した。
この結果、奏効率はFOLFOX6群、FOLFIRI群ともに同等に良好で(68% vs 57%、オッズ比[OR] 1.62、p=0.23)、KRAS野生型(vs 変異型;70% vs 41%、p=0.0080)およびKRAS/BRAF野生型(vs いずれかが変異型;72% vs 40%、p=0.0030)では有意に高値となった(表)。R0切除率はFOLFOX6群38%、FOLFIRI群30%となり、画像所見の客観的な再評価から、切除可能例はベースライン32%から治療後60%に有意に増加した(p<0.0001)。なお、高頻度に認められたgrade 3/4の有害事象は皮膚毒性および好中球減少であった。
以上より、このような患者に対してFOLFOXやFOLFIRIといった標準的化学療法レジメンにcetuximabを併用することで良好な奏効率が得られ、肝転移巣切除の可能性が高まることが示された。
大腸癌肝転移の治療は全身化学療法の進歩により、最近大きく変化した。本試験では、切除不能な肝転移を有する大腸癌症例111例を対象に、術前化学療法としてFOLFOX6またはFOLFIRIにcetuximabを併用した第U相試験である。いずれの群でも高い奏効率を示したが、この論文でのポイントは、R0肝切除率がFOLFOX6群で38%、FOLFIRI群で30%であり、きわめて高率にR0の肝切除が可能となっている。肝切除の適応はばらついているのが現状であるが、この論文では肝切除が可能かどうかを7人のReviewerに判定させた結果についても掲載しており、大変興味深い。これまでの術前化学療法でのR0肝切除率は10−20%である報告が一般的であることを考慮すると、明らかに治療成績は向上しており、肝転移の治療が新しい時代に入ったといえる。特にKRAS野生型でR0肝切除率が高いことを考慮すると、今後は、KRAS野生型に対しては、cetuximabを中心とした化学療法を行うことで、治療前に分子標的治療薬の投与を中止することなく、肝切除まで実施できることも利点となり、今後ファーストラインとして本療法が選択される可能性は十分あると思われる。
監訳・コメント:がん・感染症センター都立駒込病院 高橋 慶一(大腸外科部長)
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