結腸癌に対する血管の高位結紮と全結腸間膜切除は、これらを伴わない標準的な術式と比較して腫瘍学的に優れた標本が得られる
Complete mesocolic excision with central vascular ligation produces an oncologically superior specimen compared with standard surgery for carcinoma of the colon
West NP, Hohenberger W, Weber K, Perrakis A, Finan PJ, Quirke P.
J Clin Oncol. 2010; 28: 272-278.
結腸癌の手術における適切な間膜切除の範囲はいまだ明確でない。ドイツのエルランゲン大学病院では、血管の高位結紮と全結腸間膜切除により89%以上の5年生存率が得られることが示されている。
高位結紮と全結腸間膜切除の重要性について検討するために、ドイツのエルランゲン大学病院で行われた結腸癌切除49検体と英国のリーズ教育病院で行われた結腸癌40検体を用いて、血管結紮部位から腫瘍までの距離・切除された結腸間膜の面積やリンパ節個数について前向きに比較した。
エルランゲンの標本は、高位結紮と全結腸間膜切除を行っていない英国リーズ教育病院と比較して、血管結紮部位から腫瘍までの距離が131mm対90mm、結腸間膜の範囲が19,657mm2 対 11,829mm2、リンパ節摘出個数が30個対18個といずれも有意に高かった(p<0.0001)。
エルランゲンでは、血管の高位結紮と結腸間膜全切除を行って多くのリンパ節を切除するので高い5年生存率が得られていると推測された。
欧米では直腸癌手術において直腸間膜に切り込まずに一括して切除するTMEが治療成績を向上させることが認知されつつある。ドイツのエルランゲン大学病院では、結腸癌手術において日本で一般的に行われている高位結紮と全結腸間膜切除を行うことにより5年生存率が15%向上したと報告されているが、英国のリーズ教育病院では高位結紮と全結腸間膜切除はまだ一般的に行われていない。日本と欧米では結腸癌の手術手技(血管結紮の部位やリンパ節郭清範囲)が異なるために手術単独の生存率が約10%異なるとされている。日本と欧米の差はエルランゲン大学と英国のリーズ教育病院の差に当てはめることができる。欧米でも国や施設において違いがあるので、欧米の手術手技と治療成績が悪いとは一概に言えなくなっている。血管の高位結紮の有無で生存率が改善されたという報告と改善されないという報告が混在するのは、全結腸間膜切除の有無が原因ではないかと推測されている。今後、直腸癌のTMEと同様、欧米の結腸癌手術においても高位結紮と全結腸間膜切除の術式が優れることが示されて一般化されれば、欧米の結腸癌手術の治療成績も向上し、日本と欧米の格差は少なくなるであろう。
監訳・コメント:国立病院機構大阪医療センター 三嶋 秀行(外来化学療法室長 外科医長)
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