論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

大腸癌肝転移例におけるロボットによるフレームレスの単回放射線手術的照射

Frameless single-session robotic radiosurgery of liver metastases in colorectal cancer patients
Stintzing S, Hoffmann RT, Heinemann V, Kufeld M, Muacevic A.
Eur J Cancer. 2010; 46 (6) : 1026-1032.

 大腸癌肝転移例での肝切除は良好な予後を得るうえで重要な役割を果たすものの、切除が困難もしくは患者が高齢あるいは合併症を認めるような場合は、この適応とならない。そこで今回、侵襲性のより少ない手技として開発されたロボットによるフレームレスの単回放射線手術的照射(24Gy)の有用性について、切除不能大腸癌肝転移患者14例(年齢65歳[中央値]、肝転移数19)を対象としてプロスペクティブに検討した。
 その結果、観察期間中央値16.8ヵ月において、1年局所コントロール率は87%となった。19病変中9病変で縮小(完全または部分奏効)が認められ、5病変は不変、5病変は増大(病勢進行)した。無増悪生存期間中央値は9.2ヵ月となった。
 今回の検討は少数例、短期間の評価であるが、この新しく簡便性の高い手技は大腸癌肝転移例の局所コントロールに良好な有用性を示すと考えられる。

監訳者コメント

 体幹部定位放射線治療(SBRT)は転移性の大腸癌治療において新しい、利用価値の高い治療法と考えられる。今回の報告は、少数の症例で比較的短いフォローアップにもかかわらず、肝腫瘍の局所腫瘍制御を可能にする、実行可能で安全な方法であることを示された。特に全身合併症を有する症例、技術的に切除不能な転移を有する症例において、化学療法後に残存した腫瘍に対し、余命を延長する有望な治療法であると期待される。
 大腸癌治療ガイドラインには、血行性転移症例における治療方針のなかで、切除不可能な症例に対してP.S.0〜2の場合、局所療法として熱凝固療法の一つであるラジオ波焼灼療法の低侵襲性が利点であり、局所制御効果および長期生存例が報告されていると記載されている。しかし、いまだ十分な症例集積によって長期予後を検討した報告はなく、有効性の評価は定まっていない。この新しい技術のさらなる検証、症例の増加と長期のフォローアップにより、その有効性の確認や最適な用量を決定する必要があるものの、SBRTは切除不能な肝転移の治療に重要な役割を持つであろうと考えられる。
 今後、RTOG0438の結果が肝腫瘍に対するSBRTの更なる知見と臨床的な証拠をもたらすことを期待する。

監訳・コメント:済生会福岡総合病院・外科 江見 泰徳(部長)

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