論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

10月
2012年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

75歳以上でステージIII結腸癌と診断された患者における術後補助化学療法の延命効果

Sanoff HK, et al., J Clin Oncol, 2012 ; 30(21) : 2624-2634

 大腸癌は加齢に伴って増加する病気であり、2011年アメリカでは患者の40%を、また大腸癌死の半数を75歳以上が占めると見込まれている。ステージIII結腸癌では、LV+5-FUを用いた術後補助化学療法による予後改善が報告されており、MOSAIC、NSABP C07の2大試験ではこれにL-OHPを加えた併用療法の効果が明らかにされている。しかし化学療法の臨床試験に高齢患者が登録されることはほとんどなく、上記2試験でも75歳以上の患者は6%に満たない。そのため、75歳以上の患者がどの程度術後補助化学療法のベネフィットを受けるかはわかっていない。そこで、この問題に注目するとともに、生命予後に関するL-OHPの上乗せ効果を検討した。
 患者データはSEER-Medicare(以下SEER)、NYSCR-Medicare(以下NYSCR)、CanCORS、NCCN Outcome Databaseから収集した。解析対象は、診断時(2004〜2007年)75歳以上、組織学的にステージIII結腸癌腺癌と確認され、診断から90日以内に切除術を受け、術後30日以上生存している患者である。SEER、NYSCRでは、保健維持機構に登録されている患者、診断から6ヵ月以内にMedicare PartsAおよびBに継続的に登録されていない患者は除外した。
 比較は化学療法群 vs 非化学療法群、また化学療法を受けた患者群ではL-OHP使用群 vs 非使用群で行った。データは予後因子偏りの調整を行い、propensity score(PS)をマッチさせた比例ハザードモデルを用いて並列に解析した。主要評価項目はOSで、術後30日から死亡までの期間とした。
 適格症例は5,489例(SEER 4,226例、NYSCR 998例、CanCORS121例、NCCN 144例)であった。
 SEER 42%、NYSCR 45%、CanCORS 52%、NCCN 75%が切除術後に化学療法を受け、そのうちSEER 34%、NYSCR 28%、NCCN 61%が L-OHP投与を受けていた。CanCORSでL-OHP投与を受けた例は少なかったので解析には含めなかった。 術後120日以内の死亡はSEER-Medicare 364例(9%)、NYSCR-Medicare 78例(8%)で、うち生前に化学療法を受けていたのはそれぞれ50例、13例であった。したがって化学療法を受けた患者群での術後120日以内の死亡率はそれぞれ3%に過ぎなかったことになる。NCCNでの死亡は1例、CanCORSに死亡はみられなかった。
 化学療法実施状況およびL-OHP投与状況をSEERのデータでみると、化学療法は75〜79歳では63%、80〜84歳では43%(オッズ比0.44、95%CI 0.38-0.51)、85歳以上は14%(オッズ比0.10、95%CI 0.08-0.12)で実施されており、L-OHP投与はそれぞれ46%、25%(オッズ比0.37、95%CI 0.29-0.46)、7%(オッズ比0.08、95%CI 0.05-0.15)が受けていた。このように、化学療法実施率もL-OHP投与率も年齢が上がるとともに低下していた。多変量解析では年齢は化学療法実施とL-OHP投与に最も強力に関連する因子であった。
 次に化学療法実施状況別にOSを解析した。化学療法実施群は非実施群に比べ有意にOSが優れていた。PSをマッチさせた3年OS(化学療法実施群 vs 非実施群)はSEERコホートでは68% vs 53%(死亡のハザード比 0.60、95%CI 0.53-0.68)、NYSCRコホートでは60% vs 53%(0.76、0.58-1.01)、CanCORSでは71% vs 50%(0.48、0.19-1.21)と、どのコホートでも死亡率の有意な低下がみられた。またCox比例ハザードで補正したNCCNコホートでも死亡率の低下がみられた(ハザード比0.42、95%CI 0.17-1.03)。
 L-OHP投与についても同様に死亡率を低下させる傾向が認められた。PSをマッチさせた3年OS(L-OHP投与群vs非投与群)はSEER73% vs 68%(ハザード比0.84、95%CI0.69-1.04)、NYSCR 66% vs 61%(0.82、0.51-1.33)で、どちらも3年生存率で約5%の改善をみたことになる。NCCNコホートでは3年生存率がL-OHP投与群84%、非投与群88%と高く、L-OHPによる明らかな延命効果は認められなかった(1.84、0.48-7.05)。
 以上のように、75歳以上のステージIII大腸癌患者においては、術後補助化学療法によって諸研究で若年患者に認められているのと同等の延命効果が期待されることが示唆されたが、L-OHPの上乗せ効果は少なかった。治療方針は個々の患者のリスクのプロフィルと希望で決定される必要があるが、本研究にて行われた生存成績の評価は、75歳以上の患者に対する術後補助化学療法を考慮する上での指標になり、また予後に関する議論に情報を提供するものであると考える。

監訳者コメント

高齢者の術後補助化学療法はOSを改善するが、L-OHPの効果は少ない

 高齢者における術後補助化学療法の有用性の解析は本年のASCO2012においても、NSABP C-08試験、XELOXA試験、 X-ACT試験、 AVANT試験の4試験に参加したステージIII結腸癌患者のプール解析が報告されている。DFSとOSでは、LV/5-FUへのL-OHPの上乗せ効果はあるが、70歳以上ではL-OHPの上乗せ効果が少なかったと報告している。
 わが国では、MOSAIC、NSABP-C07の結果を受けてステージIII術後補助化学療法のL-OHPを含むFOLFOX4とmFOLFOX6がガイドラインで追加され、臨床でも使われるようになってきている。ただ我が国と欧米ではリンパ節の病理組織学的な検索の精度や手術のクオリティの違いで我が国での成績が上回る点、L-OHPの神経毒性の観点から年齢にかかわらずL-OHPの上乗せに消極的な先生方もおられるのが現状であろう。本論文でもL-OHPの上乗せ効果は少ないと結論している。現在、国内においても、JFMC41(JOIN)試験などL-OHPの有用性を検証する臨床試験が進行中である。
 今回の75歳以上のステージIII結腸癌の成績も非常に興味があり、かつ重要な報告であり、積極的に術後補助化学療法を検討させられる内容である。今後国内での高齢者にしぼった臨床試験の検討、解析が重要になるであろう。

監訳・コメント 福井県済生会病院 宗本 義則(集学的がん診療センター長・外科部長)

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