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　2004年に行われた第III相CAO/ARO/AIO-94の結果が発表されて以来、ドイツでは5-FU静注を用いた術前放射線化学療法、全直腸間膜切除術（TME）、5-FUによる術後補助化学療法がステージII/III直腸癌の標準療法となっている。しかしTMEベースの手術と術前放射線療法または5-FUを用いた放射線化学療法を組み合わせた治療法に延命効果をみたというランダム化試験はこれまでのところない。そこでGerman Rectal Cancer Study Groupは、5-FUベースの術前放射線化学療法、TME、術後補助療法からなるレジメンのうち、術前放射線化学療法および術後補助療法にL-OHPを組み込んだレジメンを用い、CAO/ARO/AIO-94試験を対照としてL-OHPの上乗せ効果を検討した多施設共同第III相オープンラベルランダム化試験CAO/ARO/AIO-04を実施した。本稿ではその初回解析結果を報告する。
　対象は、ECOG PS≦2、組織学的に直腸癌（肛門縁から12cm以内）と認められた転移のない18歳以上の患者で、放射線化学療法の適応はcT3/4またはcN＋の症例とした。
　対照群（5-FU群）には術前放射線化学療法として50.4 Gy（28分割）の照射＋5-FU 1,000 mg/m²持続静注（day 1〜5およびday 22〜33）、5〜6週後にTMEを行い、術後4週で5-FU 500 mg/m²のbolus投与（day 1〜5およびday 29、4コース）を行った。試験群（5-FU＋L-OHP群）には同様のスケジュールで、術前放射線化学療法として50.4 Gyの照射＋5-FU 250 mg/m²の持続静注（day 1〜14およびday 22〜35）＋L-OHP 50 mg/m²静注（day 1、8、22、29に2時間で）、術後はL-OHP 100 mg/m²（day 1、15に2時間で）＋LV 400 mg/m² （day 1、15に2時間で）、5-FU 2,400 mg/m²（day 1およびday 15に46時間で）静注を8コース行った。
　主要評価項目はDFS、副次評価項目は毒性、コンプライアンス、病理組織学的CR（pCR）、R0切除率で、安全性とコンプライアンスは治療を受けた患者について、有効性についてはintention-to-treatの原則で解析した。今回は安全性、コンプライアンス、pCR等について報告する（統計学的有意差は設定していない）。
　2006年7月〜2010年2月に1,265例が登録され、適格患者1,236例を試験群613例、対照群623例にランダムに割り付けた。年齢中央値は試験群64歳、対照群63歳、男性は71％、71％、ステージIIは24％、25％、腺癌は97％、96％であった。
　実際に術前放射線化学療法を受けたのは試験群606例、対照群624例で、グレード3/4の副作用はそれぞれ23％、20％で発生した。試験群では対照群に比べグレード3/4の消化管毒性の頻度が高かった（20％ vs 15％）が、これはおもに下痢、悪心・嘔吐によるものであった。術前放射線化学療法からTMEまでの間に6例（試験群4例、対照群2例）が死亡した。
　術前放射線化学療法中のL-OHPの累積用量は200 mg/m²で、グレード2以上の神経障害が2％にみられた。予定された放射線化学療法は試験群94％、対照群96％が、化学療法はそれぞれ85％、79％が完遂した。TMEを受けたのは試験群591例、対照群606例で、術式は低位前方切除が66％、69％、腹会陰式直腸切除が25％、24％であった。TMEに関し手術のqualityは76％、77％で上質であった。R0切除は94％、95％、術後合併症は47％、44％と両群ほぼ同様で、試験群3例、対照群4例が術後60日以内に死亡した。
　原発腫瘍のCR率（ypT0、腫瘍縮小グレード4）は試験群19％、対照群14％であった。中央値で試験群14、対照群15のリンパ節が検査され、各群70％、69％がリンパ節陰性であった。pCR（ypT0 N0）率は19％ vs 14％（オッズ比1.40、95％ CI 1.02-1.92、p＝0.038）と試験群が有意に優れていた。周術期に4％、6％で遠隔転移が認められた。 術後化学療法を受けたのは435例、463例で、両群22％ずつが治療を受けなかった。
　術後化学療法を受けた症例のうち試験群35％、対照群36％がグレード3/4の急性副作用を発症した。血液毒性は対照群が高頻度であったが（18％ vs 36％）、感覚神経障害はおもに試験群でみられた（9％ vs 1％）。全コースを完遂したのは試験群81％、対照群83％で、それぞれ44％、65％が減量せずに予定された治療を終えた。
　局所進行直腸癌治療として5-FUベースの併用療法にL-OHPを組み込んだ治療法について第1回解析を行ったところ、本法は忍容性に優れ、コンプライアンスも高く、標準的な5-FUベースの治療法に比べpCRが上昇した。本試験のほかにACCORD 12/0405-Prodige 2、STAR-01、NSAPB-04の3試験がL-OHPの上乗せ効果を検討しているが、これらの試験では対照群に比べ急性毒性が高頻度で、pCRの改善もみられていない。本試験では手術品質も管理されており、組織学的に質の高いTMEは75％を超えた。術前放射線化学療法後に検査されたリンパ節の中央値が両群とも14〜15であったことは、多施設共同試験として病理学的にも質が高いと言えよう。主要評価項目であるDFSの結果は2013年末に得られる予定である。

　欧米では局所進行直腸癌に対し、術前放射線化学療法は標準とされ、日本においても術前放射線化学療法を施行する施設は増えていると思われる。CAO/ARO/AIO-94試験の結果以後、併用標準化学療法は5-FU単独療法とされる。新規抗癌剤が使用できる現在、いったいどの併用化学療法レジメンが局所進行直腸癌に対し、術前放射線化学療法として最適であるのかclinical questionである。
　本試験（CAO/ARO/AIO-04）は5-FUベースの術前放射線化学療法と術後補助療法からなるレジメンに、L-OHPを組み込んだレジメンを用い、L-OHPの上乗せ効果を検討した多施設共同第III相オープンラベルランダム化試験である。今回の発表は初回解析結果で、局所進行直腸癌治療として5-FUベースの併用療法にL-OHPを組み込んだ治療法は忍容性に優れ、コンプライアンスも高く、標準的な5-FUベースの治療法に比べpCRが有意に上昇したという結果であった。本試験のほかにACCORD 12/0405-Prodige 2、STAR-01、NSAPB-04の3試験がL-OHPの上乗せ効果を検討しているが、これらの試験では対照群に比べ急性毒性が高頻度で、pCRの改善もみられていない。
　今後主要評価項目であるDFSがL-OHP併用群で5-FU単独療法と比較し、有意に延長するのか、その結果が楽しみである。

監訳・コメント　岐阜大学医学部　��橋 孝夫（腫瘍外科・臨床准教授）