論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

2013年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

遠隔転移を有する大腸癌患者のfirst-line治療としてのTS-1+L-OHP vs capecitabine+L-OHP : 非劣性第III相ランダム化試験

Hong YS., et al., Lancet Oncol., 2012 ; 13 : 1125-1132

 capecitabine+L-OHP(CapeOX)併用療法はFOLFOX療法に比して非劣性であることが報告されており、遠隔転移を有する大腸癌に対する標準的な2剤併用化学療法のひとつである。しかし、その予後と毒性のプロファイルはFOLFOX療法よりやや劣ることが示唆されており、capecitabineに替わるフッ化ピリミジン系薬剤が求められている。TS-1はさまざまな消化管癌に対する抗腫瘍効果が報告され、手足症候群の頻度はcapecitabineに比べて低いが、L-OHPとの併用においてTS-1とcapecitabineを直接比較した試験はこれまで実施されていない。そこで著者らは、遠隔転移を有する大腸癌のfirst-line治療としてTS-1+L-OHP(SOX)療法がCapeOX療法に比べて非劣性であることを検討する多施設共同第III相オープンラベルランダム化試験を行った。
 対象は18歳以上の遠隔転移を有する大腸癌患者で、ECOG PS 0〜2、転移に対する化学療法歴または免疫療法歴のない症例とした。術後補助化学または放射線療法については登録の6ヵ月以上前に完了していれば適格とした。day 1〜14にSOX群ではTS-1 40 mg/m2を、 CapeOX群ではcapecitabine 1,000 mg/m2を1日2回経口投与し、両群ともday 1にL-OHP 130 mg/m2を2時間で静注し、3週ごとに繰り返した。病勢進行または忍容不能の副作用が認められない限り、9コースまで併用投与が継続され、L-OHP投与中止後はTS-1またはcapecitabineによる維持療法を行うことが認められた。主要評価項目はprogression-free survival(PFS)で、副次評価項目は奏効率、time to treatment failure(TTF)、OS、安全性、QOLとした。15ヵ月時点でのPFSが38%で、非劣性マージンを13%と仮定し、両群間のハザード比の95%CI上限が1.43を下回ったときに、SOX療法がCapeOX療法に対して非劣性であると結論づけることにして本試験が開始された。
 韓国の11施設より、2008年5月から2009年9月までに348例が登録され、適格340例のうちSOX群に168例、CapeOX群に172例がランダムに割り付けられた。年齢中央値はSOX群が61歳、CapeOX群が60歳で、両群間で患者背景に大きな差はみられなかった。データ集積のカットオフ日までに、両群それぞれ161例で、おもに病勢進行のために治療が中止されていた。L-OHP投与コース数の中央値は、SOX群8、CapeOX群6で有意差はなかった。L-OHP のrelative dose intensity(中央値)は88% vs 96%で、CapeOX群で有意に高く(p<0.0001)、TS-1とcapecitabineのrelative dose intensity(中央値)はそれぞれ93%、96%であった。SOX群では31例、CapeOX群では20例が維持療法を受けていた。
 Intention-to-treat (ITT) 解析の結果、15ヵ月時点でのPFS(SOX群vs CapeOX群)は38.7% (95%CI 31.3-46.1) vs 32.2% (25.2-39.2)、PFS(中央値)は8.5ヵ月(7.6-9.3) vs 6.7ヵ月 (6.2-7.1) でSOX群が有意にCapeOX群に対して非劣性であることが明らかになった(HR 0.79、95%CI 0.60-1.04、非劣性p<0.0001、p log rank=0.09)。TTF(中央値)は、6.9ヵ月vs 5.6ヵ月でSOX群が有意に延長していたが(p log rank=0.036)、OSは21.2ヵ月vs 20.5ヵ月で両群に有意差はみられなかった(p log rank=0.18)。評価可能310症例における奏効率は、47% vs 36%(HR 1.68、95%CI 1.05-2.69、p=0.029)でCapeOX群に比べSOX群が有意に優れていたが、疾患制御率は81% vs 81%で有意差はみられなかった。per-protocol解析を行ったところ、PFS、TTF、OS、奏効率、疾患制御率はともにITT解析と同様の結果だった。有害事象は、全グレードを通じて、SOX群で血小板減少、黄疸、食欲不振、下痢、口内炎が、CapeOX群で手足症候群(14% vs 31%、p<0.0001)が有意に高頻度であった。グレード3/4の副作用をみると、好中球減少(29% vs 15%、p=0.001)、血小板減少(22% vs 7%、p<0.0001)、下痢(10% vs 4%、p=0.045)の発症頻度がSOX群で有意に高かった。治療前後におけるQOLの変化に関しては、両群間で有意差はみられなかった。
 主要評価項目であるPFSについて、SOX群はCapeOX群に比べて非劣性で、TTFと奏効率についてはSOX群が優れていたことより、SOX療法が切除不能進行・再発大腸癌のfirst-line治療として新しい治療オプションになる可能性が示された。

監訳者コメント

SOX療法の今後

 CapeOX療法(XELOX療法)は、分子標的薬との併用が切除不能進行・再発大腸癌におけるfirst-line 薬物療法のオプションのひとつである。一方、TS-1をL-OHPと併用するSOX療法(Br J Cancer 2008; 98: 1034-38)は、本邦の日常臨床で使用されることが増えているが、ほかのL-OHP併用療法と比較したデータはほとんどなく、CapeOX療法との比較試験の結果が出されたのは意義深い。本試験は、通常の非劣性試験の主要評価項目がOSであるのにPFSであること、信頼区間幅が広いことなどの問題はあるが、PFSにおける両群間にみられた差からみて、SOX療法をfirst-line 治療のオプションとみなしてよさそうである。
 CapeOX療法は、手足症候群などの有害事象により、患者の苦痛から治療中断になることをまれならず経験する。毒性プロファイルの異なるSOX療法の有用性が評価されたことは、治療の選択肢が広がったことになる。また手術後補助化学療法におけるL-OHPの上乗せ効果が話題になっており、本邦の臨床医がTS-1による下痢・骨髄抑制などの副作用の対処に習熟していること、SOX療法がポートレスで行えることなどから、個人的には、本邦におけるSOX療法の補助化学療法における有用性についての検討・解析結果が最も知りたいところである。

監訳・コメント 名古屋記念病院 伊奈 研次(化学療法内科部長、兼副院長)

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