瀧内:Cetuximabはbevacizumabを含むレジメンに比べて、間接的な比較では明らかに奏効率の上乗せが示されており、先生方はcetuximabを1st-lineにという期待感もお持ちだと思います。

山口:CRYSTAL試験の解析では、KRAS 野生型においてPFSのハザード比が 0.68と、30%強の増悪リスク減少を得ています11)。これはbevacizumabの上乗せ効果を凌ぐもので、我々も重く受け止めなければいけないデータです。これとOPUS試験の結果12) がcetuximabを1st-lineに位置づける根拠となっているのは事実です。ただ、まだ見えてこない部分もあり、KRAS 野生型患者を対象として、1st-lineでのbevacizumabとcetuximabを直接比較するのが一番かと思われます。

瀧内:「本当のことは臨床試験を行わないとわからない」というのは昔から言われていることですが、ぜひわが国でも臨床試験を行っていただきたいと思います。
 最近の抗EGFR抗体医薬のデータを見ていると、内科以上に外科の先生方の間で1st-lineへの期待感が高まってきているように感じます。植竹先生はいかがでしょうか。

植竹:肝切除という面では、cetuximab併用のレジメンも非常によい成績が得られています。とはいえ、bevacizumabにもやはり魅力があります。まず1st-lineの標準治療であることと、肝切除率が2割という現状において、残り8割の患者さんの治療としても標準治療であること。それからPFSをみると、CRYSTAL試験ではKRAS 野生型でも9.9ヵ月でしたが11)、bevacizumabではAVF2107g試験のIFL併用群で10.6ヵ月19)BICC-C試験のFOLFIRI併用群で11.2ヵ月20)という成績が得られています。さらに、bevacizumabには肝庇護作用もあります。
 これらの点を考慮すると、cetuximabを1st-lineに使うのは、特殊な患者層を選んでということになるのではないでしょうか。その症例選択ができれば、cetuximabも肝切除目的の化学療法になり得る可能性があります。

山口:ただ、cetuximabが発売されたのは2008年の秋で、我々はまだ夏を経験していません。汗をかいて皮脂が増える時期にcetuximabの皮膚毒性がどうなるのか、それまでと同じケアで対応できるのかどうか。また、cetuximabを1st-lineで使うと、それだけ抗菌薬とステロイド外用薬の使用期間も長くなりますから、抗菌薬の毒性や、日本人の皮膚がどうなるかという問題もあります。

瀧内:貴重なご意見だと思います。cetuximabが承認されたことで5剤が揃い、欧米と遜色のない治療が展開できるようになりました。唯一の遅れが、1st-lineで使えないというところです。また、現状では、海外の報告をもとに議論していますが、日本人においてどうなのかということを確かめるためには、やはりわが国独自の経験や臨床試験に基づいて、改めて議論していきたいと思います。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

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