Point 2:安全性
瀧内:次に、安全性について議論したいと思います。先ほどのプレゼンテーションでは、FOLFOXは好中球減少等の骨髄抑制が多く認められるものの、臨床上大きな問題となることはなく、十分に対応可能であるということでした。それではXELOX派として、安全性について強調したい点はありますか。
橋:さまざまなエビデンスをみると、重篤で危険を伴うような有害事象は、FOLFOXのほうがXELOXより多い印象があります。
山ア:FOLFOXによって発熱性好中球減少症を起こす症例は少ないものの、ゼロではありません。発熱性好中球減少症に移行する危険性を減らす意味でも、好中球減少は少ないに越したことはありません。
瀧内:一方で、XELOXには手足症候群の副作用がありますが、XELOX派の意見はいかがでしょうか。
橋:当院でもXELOXを使っていますが、術後補助化学療法でcapecitabineを導入した当時に比べると、上手に管理できるようになりました。看護師・薬剤師による対応やスキンケアの指導方法も確立され、最近は重篤化せずに施行できています。
江見:先ほどのプレゼンテーションでは、XELOXは通院回数が減るので、患者さんの負担が軽くなるというお話でしたが、逆に医療者の目が届かない期間が長くなるわけです。そのぶんXELOXではFOLFOX以上にチーム医療が重要になると思いますが、チーム医療が一般病院まで十分に普及しているとは言えません。XELOXは、チーム医療による患者さんの経過を確認するシステムができ、かつGrade 2/3の手足症候群のケアがきちんとできるようになって、初めて勧めることができる治療法だと思います。
瀧内:非常に貴重なご意見だと思います。仁科先生は、チーム医療の観点からどう思われますか。
仁科:通院回数が減ると医療者の手間が省けることは間違いないのですが、それはあくまで医療者側の都合です。自宅でセルフアセスメント、セルフコントロールができるように、しっかりとチーム医療でサポートすることが前提となりますね。
また、当院の外来化学療法症例の検討では、経口フッ化ピリミジンにおいて、下痢や食欲不振による緊急入院率が高いことが明らかになっています。これは大腸癌に限ったデータではありませんが、経口フッ化ピリミジンの安全性は十分に注意すべきだと思います。
山ア:確かに他の経口5-FU薬では突然の下痢や脱水がみられることがありますが、capecitabineでは重篤な下痢の発現頻度は低く、管理はしやすいと思います。また、セルフケアの指導が重要なのは、XELOXもFOLFOXも同じです。XELOXは内服の自己管理が必要ですし、FOLFOXは自己抜針しなければなりません。FOLFOXでは、途中でフューバー針が抜けてしまったり、上手くフラッシュできないといったトラブルで電話連絡や予約外受診が来ることもあります。ですから、「セルフケアの指導が大変」という理由で、静注のFOLFOXを選ぶケースはないと思います。
橋:当院でも医師、看護師、薬剤師がチームを組んで手足症候群の対応策を講じてきましたし、セルフケアの指導も充実してきています。Capecitabineによる副作用はチーム医療で十分に対応可能です。また、対策を進めるなかで、チームの団結も固くなりました。
瀧内:元来、大腸癌ではFOLFOX、FOLFIRIのポート管理の必要性もあってチーム医療が叫ばれてきたわけですが、経口薬においても静注レジメンと同じか、あるいはそれ以上に患者教育が重要だということですね。