Point 1:有効性
瀧内:それではディスカッションに移ります。最初に、有効性について再確認したいと思います。仁科先生はやはりFOLFOXのほうが優っているとお考えですか。
仁科:私自身、XELOXの使用経験はまだ少ないため、現時点ではFOLFOXと有効性が同等という実感はありません。エビデンスに基づくと、1つ1つの試験では非劣性が示されているので、「絶対にFOLFOXでなければならない」というほどの差はないと思います。しかし、メタ解析というエビデンスレベルの高い研究でFOLFOXのほうが優れているという結果が出ていますので、やはり有効性の面ではFOLFOXが優位だと思います。
瀧内:メタ解析ではFOLFOXの有効性が高いということですね。では、XELOX派の先生方はいかがでしょうか。
山ア:2009年のASCOで報告されたSasseらのメタ解析ではOSに有意差がみられましたが5)(図2)、メタ解析はもとになったデータを考慮する必要があると思います。解析に含まれた試験のFOLFOX(5-FU+L-OHP)の用法・用量も違いますし、またXELIRI vs. FOLFIRIの比較試験も解析に含まれており、解釈は慎重にすべきと考えます。
また、NO16966試験におけるPFS中央値は、FOLFOX±bevacizumab群の8.5ヵ月に対し、XELOX±bevacizumab群は 8.0ヵ月と少し短い傾向でしたが1)、bevacizumabを併用した患者だけでサブ解析を行うと、FOLFOX+bevacizumab群は9.3ヵ月、XELOX+bevacizumab群 は9.4ヵ月とほぼ同等ですし、OS中央値は両群ともに21ヵ月と差はありません7)。
瀧内:XELOX単独はFOLFOX単独よりも若干有効性が低い可能性があることは、山ア先生も認めておられるようですが、NO16966試験のサブ解析では、XELOX群でbevacizumabの有意な上乗せ効果が得られたことからも、bevacizumabを加えたときの効果は、FOLFOXもXELOXもほぼ同じであろう、ということですね。江見先生は、先ほどconversion therapyを考えた際のFOLFOXのメリットを指摘されましたね。
江見:手術にもっていくことが可能かもしれない症例に対して6〜8コースという短期間でしっかり奏効を得たい場合、XELOXと分子標的治療薬の併用療法では、エビデンスも我々自身の経験も不十分ですので、確実なFOLFOXを選びたいところです。
橋:当院でもFOLFOXベースの conversion therapyを20数例行っており、確かによい感触が得られていますが、XELOXでは十分なデータがありません。Conversion therapyにもっていくには、「切れ味」=腫瘍の縮小率が非常に重要になりますので、それが本当に同等かどうかを検証する必要があります。その結果、縮小率が同等であることが証明されれば、今後はconversion therapyも、利便性の高いXELOXに切り替わっていくと思います。
山ア:NO16966試験では、FOLFOX±bevacizumabとXELOX±bevacizumabでは奏効率に差がありませんし、国内の第II相試験でも、XELOXは70%程度の奏効率を示し、化学療法開始後に58例中8例が手術に移行したと報告されています8)。それらを考えると、絶対にFOLFOXを選択しなければならないほどの有効性の差はないと考えます。
瀧内:NO16966試験のデータも含めて、特にbevacizumabを併用した際の有効性には大きな差がないということですね。またどちらが conversion therapyに適しているかは、検証試験がない段階では判断できないということですね。