5-FUは1957年にHeidelbergerらによって開発され、半世紀にわたって大腸癌治療に用いられてきた。しかし、Bolus(急速静注) 5-FUでの奏効率は10%、infusional (持続静注)5-FUではbolus投与よりも約2倍の奏効率が報告されたものの、生存延長には十分に寄与しなかった1)。1980〜90年代前半にかけて、Leucovorin(LV)との組み合わせによる5-FUの効果増強が奏効し、進行再発大腸癌患者の生存期間は10ヵ月を超えるようになった(図1)。
5-FUにbiomodulatorとしてのLVを併用することでその効果が増幅することが報告され10)、5-FU/LVとしてさまざまな投与法の開発が進められた。
Bolus 5-FU / 低用量LVを5日間連続、4〜5週間毎に投与するレジメンである。Poonらの報告では初回治療例において5-FU単剤に対し、主要評価項目である全生存期間(overall survival; OS)で有意に上回り(Mayo vs. 5-FU=12.0ヵ月 vs. 7.7ヵ月, p=0.50)、奏効率においても有意に上回った(p=0.001)。また、5-FU単剤と比較し、Grade 3以上の有害事象の発生率は高くなかった。以上より、5-FU/低用量LVは、5-FU単剤に対する新たな治療として認識された11)。
Bolus 5-FU/高用量LVを週1回、6週連続投与を8週毎に繰り返すレジメンである。5-FU単剤との比較では、主要評価項目である奏効率は有意に上回ったが(RPMI vs. 5-FU=48% vs. 11%, p=0.0009)、OSでは優越性を示せなかった(各々12ヵ月 vs. 11ヵ月, p=0.6)12)。Mayoレジメンとの比較試験では、毒性のプロファイルは異なるものの、抗腫瘍効果は同程度と報告されている4, 13)。
24時間のinfusional 5-FUとLVの併用を週1回、6週連続投与・2週休薬するレジメンである。Mayoレジメンとの比較試験では、無増悪生存期間(progression-free survival; PFS)において有意にMayoレジメン群を上回ったものの(AIO vs. Mayo=5.6ヵ月 vs. 4.0ヵ月, HR=0.78, p=0.03)、主要評価項目であるOSでは有意差を認めなかった(各々13.7ヵ月 vs. 11.1ヵ月, HR=0.95, p=0.72)。有害事象発生率は、下痢についてはAIOレジメン群が高く、粘膜炎と血液毒性についてはMayoレジメン群が高かった5)。
フランスのde Gramontらにより開発されたレジメンで、bolus 5-FU/LVと22時間のinfusional 5-FUの併用を2日間連続で投与し、2週毎に繰り返す(LV5FU2)。Mayoレジメンとの比較試験では、奏効率(de Gramont vs. Mayo=33% vs. 14%, p=0.0004)およびPFS(各々27.6週 vs. 22週, p=0.001)はde Gramontレジメンで有意に良好であったが、主要評価項目のOSにおける優越性は示せなかった(各々62.0週 vs. 56.8週, p=0.067)。Grade 3以上の好中球減少、下痢、粘膜炎の発生率はMayoレジメン群で有意に高かった6)。
その後、Bolus 5-FU/LVを1日目にまとめて単純化したレジメン(simplified LV5FU2)も発表された14)。de Gramontレジメンは、のちのFOLFOXおよびFOLFIRIのベースとして、現在も広く用いられている。
UFTは5-FUのプロドラッグであるTegafurと5-FUの代謝を阻害するUracilの配合剤で、LVと併用することで、biomodulationによる効果増強を得る。
Douillardらにより5-FU/LV(Mayoレジメン)をコントロールアームとする第III相試験が実施された。その結果、UFT/LV群では重篤な有害事象の発生率が低く、またOSは5-FU/LVに劣らなかったことから(UFT/LV vs. 5-FU/LV=12.4ヵ月 vs. 13.4ヵ月, HR=0.93, p=0.63)、5-FU/LVに対するUFT/LVの非劣性が示された8)。
Capecitabine(ゼローダ®)は5-FUのプロドラッグであるが、段階的に代謝され、主に腫瘍組織内で5-FUに変換される。
初回治療として、Hoffら9)およびvan Cutsemら15)がそれぞれ5-FU/LV(Mayoレジメン)をコントロールアームとした第III相試験を施行した。主要評価項目である奏効率は、それぞれCapecitabine vs. 5-FU=26% vs. 12%(p=0.005)、27% vs. 18%(p=0.013)と、いずれの試験においてもCapecitabine群が上回った。手足症候群の発生率はCapecitabine群で有意に多かったものの、副次評価項目である無増悪期間(time to progression; TTP)やOSは同程度であり、5-FU/LVに対するCapecitabineの非劣性が示された。
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