Q. リスクマネージメントについて、お話しいただけますか。
A: 抗癌剤治療ではリスク回避が一番のキーポイントですから、専任のリスクマネージャー(1名、看護部出身)を中心にスタッフによるダブルあるいはトリプルチェックを行っていますが、バーコード管理などは行っていません(病棟では完全バーコード管理が行われています)。
何らかのインシデント(ヒヤリハット)が起こった場合、担当医が電子カルテ上のインシデントレポートに入力することになっており、翌日リスクマネージャーが原因を調査します。
Q. 点滴中の看護師の役割はどのようなものですか。
A: 穿刺からずっと、患者さんの状態、特に副作用に注意して、見守るようにしています。また、処方変更があった場合は点滴投与開始後の10分間は、特に注意して患者さんの状態を確認します。可動式の衝立はありますが、一目で見渡せるようなレイアウトになっていますので、患者さんが何か変わった仕草をすればわかるようになっています。
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プライバシーを配慮した衝立を使用 |
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Q. 家庭等で患者さんの調子が悪くなった場合はどのように対応するのでしょうか。
A: 診療時間内であれば、アメニティールームに電話をいただくことが多いのですが、時間外の場合は救急室が対応します。
その時点で主治医にも連絡し、診察が必要な場合は主治医の診療科を受診していただきます。化学療法中の患者さんですから、緊急時の対応、化学療法による副作用なのか、あるいは異なる要因で緊急性のあるものなのかの判断は外来化学療法室のスタッフが最も適していると思います。
インタビュアーからのコメント 佐藤 温先生
福井県済生会病院は、「がん医療」を含む「医療のあり方」そのものに対するビジョンを明確にしており、職員全体がそのビジョンに向かい同じベクトルで進んでいました。取材では、皆、三浦將司病院長の理念、方針を共感をもって自身の言葉にしていました。包括医療制度や外来化学療法加算が制定される前より、施設基本理念の「患者さんの立場で考える」より必然的に導き出した結果から、すでに外来化学療法室に取り組んでいました。そして、「アメニティールーム」という名称の工夫、「メディカルコーディネーター」という新しい職種の活躍等とさらなる理想的な医療を作り上げていると感じました。
もう1つ感心したことは「チーム医療」の実践です。「チーム医療」が重要であることは誰でも主張することではありますが、「チーム医療」を本当に理解し実践している医療機関はさほど多くはないのでしょうか。取材中感じたことは、医師も、看護師も、薬剤師もみな、自身が患者さんに何を提供できるかを考え、それに責任をもって専門職として積極的に実践しようとしていたことです。同時に病院も「チーム医療」ができるように人材を育成しようとしていました。
昨今のまず病院経営ありき、から診療のあり方を考える風潮に対して、患者にとって良い医療こそが健全な経営基盤を作り上げるということを実践し、そして結果を出している病院に出合い、勇気づけられた取材でした。