OPTIMOX3試験
OPTIMOX3試験について教えてください。
OPTIMOX3試験は夢の試験です。対照群としてmodified FOLFOX7レジメンを用いる予定です(3カ月間の化学療法、中断、ベースラインへの増悪時に再開;OPTIMOX2の試験群を維持)。このレジメンと比較するのはmodified Xeloxレジメン(capecitabine+L-OHP、ただしcapecitabineを1週間投与し、1週間休薬する2週間の投与スケジュール)で、両群とも同じ用量のL-OHP、同じ治療戦略、同じ期間の化学療法を行って、有害事象が最小限になるようにL-OHPのデリバリーを最適なものにできるかどうかを検討します。これは化学療法に関する比較ですが、これに加えて、両試験群にbevacizumabを投与したり、EGFR阻害剤の評価を行ったりする予定です。
神経毒性の評価
神経毒性の評価にはどのような判定基準を用いていますか。
神経毒性については2つのパラメータを考慮する必要があります。1つは症状の強度で、もう1つはその持続期間です。神経毒性と急性症候群を混同しないように注意が必要です。私の判定基準では1カ月間持続する疼痛や機能障害はgrade 3の神経障害と考えています。
厚生労働省による5-FU/LV持続静注とL-OHPの承認を待って、FOLFOXの第II相試験を日本で開始する計画です。神経障害の判定基準を探しているのですが、どういったものを採用したらいいでしょうか。
そうですね、最近われわれのプロトコルに採用したNCI-CTC AE version 3を用いるべきでしょう。疼痛や機能障害を伴う感覚異常もADL(日常生活動作)の障害になります(grade 3の定義)。
ALPの判断基準
アルカリホスファターゼ(ALP)についての厳密な判断基準はありますか。
正常値の3倍とすべきでしょう。と申しますのは、私が実施した早期の試験の1つで、早期の死亡とALPの増加との間に明らかな関連がみられたからです。その試験では、患者に推定3カ月以上の余命があることを条件としたのですが、3カ月以内に死亡した患者を調べたところ、ALP値の上昇が死亡に関する大きな予測因子だったのです。OPTIMOX1試験では、適用基準を正常値の5倍までにしてみました。患者のALP値が3倍を超えていても、FOLFOX治療は安全に行えます。早期死亡のリスクが高いALPの高い患者では、積極的な治療がこれを避ける唯一の方法であるために重要といえます。他の国で試験されたことと比較するための試験を実施しようとする場合には、状態の良い患者にばかり投与しないことが重要です。Hurwitzが報告したIFL+bevacizumab試験における、患者のPSは0と1でした。臨床試験なのに、PSが2の患者は登録されていませんでした。従って、他の試験よりも良い結果が得られていますが、これはかなり限定した患者集団における結果に過ぎません。
予後不良の患者を含めるときは、良い治療を多くの患者に行うことができると思いますが、生存率としては悪くなります。OPTIMOX試験のように層別化基準を用いることが重要です。
First-lineの転移癌に対する臨床試験における私の登録基準としては、年齢18〜76歳、PS 0〜2、脳転移がなく、他癌のない患者を対象にしています。
患者登録の秘訣
フランスでは、なぜあれほど多くの患者を集めることができるのでしょうか。日本は、人口はフランスの約2倍もあるにもかかわらず、200人の患者を集めることでさえも非常に困難です。
第1に、フランスだけでなく他の地域の研究者との共同研究だからです。
もう1つ重要な点は、業界や出版物に追随しないことです。標準的な治療は通常出版されて公開されていますし、かなり以前から施行されているのが普通です。現在進行中の治療には、公開されている治療よりも、また対照群に対してもよりよい治療である可能性があります。
OPTIMOX3試験では、対照群にFOLFOX7を用いますが、これは公開されていません。
OPTIMOX3試験を始める前にOPTIMOX2試験の結果がどう出ようと、それを恐れる必要はないし、試験を平行して行うことができる訳ですね。
そうです。そのようにしており、また、このESMO会議でも患者の治療中断について述べているポスターも発表されています。予後不良の患者については化学療法の長期中断はすべきではないと思いますが、それとは違った患者にとってはかえって有用な場合もあります。このような患者の治療を中断することはむしろ治療全体としては勝利といえるでしょう。


本日は非常に有益で参考になるお話をありがとうございました。日本でも厚生労働省の承認が得られたら、直ちにいくつかの臨床試験を開始し、5年か10年かけて欧米に追いつけるように努力するつもりです。
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