「警告・禁忌を含む使用上の注意」等はDIをご参照ください。
本試験におけるニボルマブの用法及び用量には、現在承認されている用法及び用量と異なるものが含まれます。
食道癌に対する薬物療法として、食道癌診療ガイドライン2017年版4)では、cStage Wb食道癌でPS良好かつ通過障害がない場合、化学療法が推奨されている。切除不能進行・再発食道癌に対する1次治療では、フルオロウラシル(5-FU)+シスプラチン(CDDP)の併用療法などが標準的に使用されてきた。2000年代以降、他がん種では分子標的治療薬の臨床導入が進む中、食道癌では開発が進まず治療選択肢が限られていた。しかし、ニボルマブなどが2次治療として承認された2020年以降、術後補助療法を含めて食道癌に対する薬物療法の選択肢が増えてきている5-8)。2022年5月には、国際共同第V相試験(CheckMate 648試験)1,2)の結果に基づき、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブが「根治切除不能な進行・再発の食道癌」に対する効能又は効果を取得し、1次治療として使用可能になった。今回は、CheckMate 648試験の結果とともに、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブの臨床応用や日常診療における注意点などについて紹介する。
抗腫瘍免疫応答の一連のサイクルを示す概念として報告されている、がん免疫サイクル9)において、抗CTLA-4抗体のイピリムマブはプライミングフェーズで作用し、抗原提示細胞によるT細胞のプライミングや活性化に寄与する9,10)。また、抗PD-1抗体のニボルマブは主にエフェクターフェーズで作用し、活性化されたT細胞ががん細胞を破壊することにより、併用療法として抗腫瘍効果を発揮すると考えられている9,10)。そこで、切除不能進行・再発食道癌に対する1次治療の標準治療として使用されてきた5-FU+CDDP(化学療法)に対して、ニボルマブ+化学療法またはニボルマブ+イピリムマブの有効性を比較し、安全性を検討するためにCheckMate 648試験が実施された。同試験では、化学療法未治療の根治切除不能な進行・再発の食道癌患者970例を対象に、ニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法群の3群に1:1:1で無作為化された。主要評価項目はPD-L1≧1%の症例における(OS)と無増悪生存期間(PFS)であった。
主要評価項目のPD-L1≧1%の症例におけるOSにおいて、ニボルマブ+化学療法群の化学療法群に対する優越性が検証された[中央値:15.44ヵ月 vs 9.07ヵ月、HR=0.54(99.5%CI:0.37-0.80)*1、p<0.0001*2、有意水準0.005](図1)。また、ニボルマブ+イピリムマブ群の化学療法群に対するOSの優越性が検証された[中央値:13.70ヵ月 vs 9.07ヵ月、HR=0.64(98.6%CI:0.46-0.90)*1、p=0.0010*2、有意水準0.014](図1)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
もう1つの主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例におけるPFS*3については、ニボルマブ+化学療法群の化学療法群に対する優越性が検証されたが[中央値:6.93ヵ月 vs 4.44ヵ月、HR=0.65(98.5%CI:0.46-0.92)*1、p=0.0023*2、有意水準0.015](図2)、ニボルマブ+イピリムマブ群の化学療法群に対する優越性は検証されなかった[中央値:4.04ヵ月 vs 4.44ヵ月、HR=1.02(98.5% CI:0.73-1.43)*1、p=0.8958*2、有意水準0.015](図2)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
副次的評価項目の全症例におけるOSについて、ニボルマブ+化学療法群は化学療法群に比べて有意な延長が認められた[中央値:13.21ヵ月 vs 10.71ヵ月、HR=0.74(99.1%CI:0.58-0.96)*4、p=0.0021*5、有意水準0.009](図3)。また、ニボルマブ+イピリムマブ群は化学療法群に比べてOSの有意な延長が認められた[中央値:12.75ヵ月 vs 10.71ヵ月、HR=0.78(98.2%CI:0.62-0.98)*4、p=0.0110*5、有意水準0.018](図3)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
副次的評価項目のサブグループ解析であるPD-L1≧1%の症例における奏効率(ORR)*3は、ニボルマブ+化学療法群53.2%、ニボルマブ+イピリムマブ群35.4%、化学療法群19.7%であった(表1)。副次的評価項目の全症例におけるORR*3は、ニボルマブ+化学療法群47.4%、ニボルマブ+イピリムマブ群27.7%、化学療法群26.9%であった(表1)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
探索的評価項目のサブグループ解析であるPD-L1≧1%の症例における奏効期間(DOR)*3中央値は、ニボルマブ+化学療法群8.38ヵ月、ニボルマブ+イピリムマブ群11.83ヵ月、化学療法群5.68ヵ月であった。また、探索的評価項目の全症例におけるDOR*3中央値は、ニボルマブ+化学療法群8.18ヵ月、ニボルマブ+イピリムマブ群11.07ヵ月、化学療法群7.13ヵ月であった(図4)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
安全性に関して、副作用発現率はニボルマブ+化学療法群で95.8%(297/310例)、ニボルマブ+イピリムマブ群で79.5%(256/322例)、化学療法群で90.5%(275/304例)であった。主な副作用は、ニボルマブ+化学療法群では悪心58.7%、食欲減退42.6%、口内炎31.6%、貧血30.0%等、ニボルマブ+イピリムマブ群では発疹17.1%、甲状腺機能低下症13.4%、そう痒症13.4%等、化学療法群では悪心52.0%、食欲減退42.8%、口内炎23.4%、貧血22.0%等であった。免疫関連の可能性がある留意すべき副作用として、ニボルマブ+化学療法群では腎毒性23.9%、胃腸毒性20.6%、皮膚毒性17.4%等、ニボルマブ+イピリムマブ群では皮膚毒性34.2%、内分泌障害27.3%、肝毒性13.0%等が認められた(図5)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
*1:投与群を共変量とし、ECOG PS、転移臓器数を層別因子としたCox比例ハザードモデル
*2:投与群を共変量とし、ECOG PS、転移臓器数を層別因子としたlog-rank検定
*3:盲検下独立中央判定(BICR)
*4:投与群を共変量とし、ECOG PS、転移臓器数、PD-L1発現状況を層別因子としたCox比例ハザードモデル
*5:投与群を共変量とし、ECOG PS、転移臓器数、PD-L1発現状況を層別因子としたlog-rank検定
CheckMate 648試験ではサブグループ解析である日本人集団の結果も報告されている。患者背景として、ECOG PS 1の症例が日本人集団ではニボルマブ化学療法群で29.4%、ニボルマブ+イピリムマブ群で29.0%、化学療法群で30.7%含まれていたが、全体集団ではそれぞれ53.3%、53.5%、52.5%であり、日本人集団ではPS良好な症例が多く含まれていた(表2、表3)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
主要評価項目のサブグループ解析であるPD-L1≧1%の症例(日本人集団)におけるOS中央値[化学療法群に対するHR*6]は、ニボルマブ+化学療法群17.28ヵ月[HR=0.53(95%CI:0.35-0.82)]、ニボルマブ+イピリムマブ群20.24ヵ月[HR=0.46(95%CI:0.30-0.71)]、化学療法群8.97ヵ月であった(図6)。副次的評価項目のサブグループ解析である全症例(日本人集団)におけるOS中央値[化学療法群に対するHR*6]は、ニボルマブ+化学療法群15.47ヵ月[HR=0.73(95%CI:0.54-0.99)]、ニボルマブ+イピリムマブ群17.61ヵ月[HR=0.68(95%CI:0.51-0.92)]、化学療法群10.97ヵ月であった(図7)。
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
主要評価項目のサブグループ解析であるPD-L1≧1%の症例(日本人集団)におけるPFS中央値[化学療法群に対するHR*6]は、ニボルマブ+化学療法群7.03ヵ月[HR=0.56(95%CI:0.36-0.89)]、ニボルマブ+イピリムマブ群5.39ヵ月[HR=0.84(95%CI:0.54-1.32)]、化学療法群4.17ヵ月であった。副次的評価項目のサブグループ解析である全症例(日本人集団)におけるPFS中央値[化学療法群に対するHR*6]は、ニボルマブ+化学療法群6.80ヵ月[HR=0.76(95%CI:0.56-1.03)]、ニボルマブ+イピリムマブ群4.17ヵ月[HR=1.16*7]、化学療法群4.27ヵ月であった。
副次的評価項目のサブグループ解析であるPD-L1≧1%の症例(日本人集団)におけるORRは、ニボルマブ+化学療法群64.5%、ニボルマブ+イピリムマブ群43.9%、化学療法群16.9%であり、全症例(日本人集団)におけるORRはそれぞれ56.3%、35.9%、24.1%であった。
日本人集団における副作用発現率は、ニボルマブ+化学療法群で99.2%(120/121例)、ニボルマブ+イピリムマブ群で84.6%(110/130例)、化学療法群で93.3%(126/135例)であった。主な副作用は、ニボルマブ+化学療法群では食欲減退59.5%、悪心58.7%、口内炎52.9%等、ニボルマブ+イピリムマブ群では発疹17.7%、甲状腺機能低下症16.9%、そう痒症16.9%等、化学療法群では食欲減退60.0%、悪心52.6%、口内炎32.6%等であった。
*6:投与群を共変量とした非層別Cox比例ハザードモデル
*7:主要評価項目において、PD-L1≧1%の症例でニボルマブ+イピリムマブ群の化学療法群に対する優越性が検証されなかったため、全症例におけるPFS(BICR)について、正式な検定は行われていない
1次治療におけるニボルマブ+化学療法、
ニボルマブ+イピリムマブの位置づけ/日常診療における留意点
CheckMate 648試験の結果を受けて、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブは切除不能進行・再発食道癌に対する1次治療として承認され、新たな治療選択肢となった。また日本食道学会は、「【速報】CheckMate 648試験の概要ならびに進行食道癌治療におけるニボルマブ、イピリムマブに関する日本食道学会ガイドライン委員会のコメント」を発表し、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブを1次治療として強く推奨している3)(図8)。
実臨床では、早期の治療効果の必要性や化学療法関連の副作用に対する忍容性など複数の要因がレジメンの選択に影響を及ぼす可能性がある2)。レジメン選択においては、PD-L1発現状況(TPS)、有害事象の特徴、忍容性等を勘案し、がん化学療法に十分な知識・経験を有する医師の管理の下、実施されるべきである3)。
PD-L1(TPS)検査は必須ではなく補完的な位置づけであるが、PD-L1発現状況(TPS)により、有効性が異なる傾向が示唆されていることから、PD-L1発現率を確認した上で投与の可否を判断することが望ましい11)。なお、PD-L1発現率が1%未満(TPS<1%)であることが確認された患者では、他の治療選択肢も考慮する11)。
今回承認された2つの併用療法の投与スケジュールは図9のとおりである。ニボルマブ+化学療法において、ニボルマブは1回240mgを2週間間隔、または1回480mgを4週間間隔で投与し、化学療法の5-FU+CDDPは4週間間隔で投与する。また、ニボルマブ+イピリムマブでは、ニボルマブは1回240mgを2週間間隔、または1回360mgを3週間間隔で投与し、イピリムマブは1回1mg/kgを6週間間隔で投与する。患者の状態や利便性を考慮して投与スケジュールを検討することが可能であるが、投与開始早期は頻回に来院してもらい、全身状態や症状の変化、有害事象の有無などをモニタリングすることが重要と考える。
日常診療では、治療を継続する上で免疫関連有害事象をはじめとする副作用マネジメントに留意する必要がある。看護師や薬剤師らを含めて患者とコミュニケーションを図りながらフォローアップすることで、有害事象を見逃さないことが重要と考えられる。
1) 小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
2) Doki Y et al.: N Engl J Med 2022; 386(5): 449-462[利益相反]本試験はBristol-Myers Squibb及び小野薬品工業の支援を受けて実施された。
3)【速報】CheckMate 648試験の概要ならびに進行食道癌治療におけるニボルマブ、イピリムマブに関する日本食道学会ガイドライン委員会のコメント, 日本食道学会. 2022
4) 日本食道学会編:食道癌診療ガイドライン2017年版. 金原出版
5) Kato K et al.: Lancet Oncol 2019; 20(11): 1506-1517[利益相反]本試験は小野薬品工業及びBristol-Myers Squibbの支援を受けて実施された。
6) Kojima T et al.: J Clin Oncol 2020; 38(35): 4138-4148
7) Kelly RJ et al.:N Engl J Med 2021; 384(13): 1191-1203[利益相反]本試験はBristol-Myers Squibb及び小野薬品工業の支援を受けて実施された。
8) Sun JM et al.: Lancet 2021; 398(10302): 759-771
9) Chen DS et al.: Immunity 2013; 39(1): 1-10
10) Ribas A: N Engl J Med 2012; 366(26): 2517-2519
11) 厚生労働省:最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)〜食道癌〜令和2年2月(令和4年5月改訂)
オプジーボ
4. 効能又は効果(一部抜粋) 根治切除不能な進行・再発の食道癌
5. 効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
5.17 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.25、17.1.26参照]
6. 用法及び用量(一部抜粋)〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔、1回360mgを3週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
7. 用法及び用量に関連する注意(一部抜粋)〈効能共通〉
7.1 本剤は、30分以上かけて点滴静注すること。
〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
7.13 化学療法未治療患者に対する本剤単独投与の有効性及び安全性は確立していない。
7.14 他の抗悪性腫瘍剤との併用投与の有効性は、PD-L1発現率(TPS)により異なる傾向が示唆されている。TPSについて、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤を含む併用療法の必要性について慎重に判断すること。[17.1.26参照]
7.15 他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合、併用する他の抗悪性腫瘍剤は「17.臨床成績」の項の内容を熟知した上で、選択すること。[17.1.26参照]
国際共同第V相試験(CheckMate 648/ONO-4538-50/BMS CA209648試験)
目 的 | 化学療法未治療の根治切除不能な進行・再発の食道癌※4を対象に、ニボルマブ+化学療法※5群、又はニボルマブ+イピリムマブ群の化学療法※5群に対する優越性を検証し、安全性を検討する。
※4:病理組織学的検査において扁平上皮癌又は腺扁平上皮癌(主に扁平上皮癌が分化)と診断され、大動脈、気管等への明らかな浸潤を認めない患者が対象 ※5:フルオロウラシル及びシスプラチンを含む化学療法 |
|
試験デザイン | 国際共同実薬対照非盲検無作為化比較第V相試験[優越性試験] | |
対 象 | 化学療法未治療の根治切除不能な進行・再発の食道癌※4患者970例[ニボルマブ+化学療法群:321例(日本人:126例)、ニボルマブ+イピリムマブ群:325例(日本人:131例)、化学療法群:324例(日本人:137例)] | |
投与方法 | ニボルマブ+化学療法群:ニボルマブ240mgを2週間間隔、フルオロウラシル(5-FU)※2 800mg/m2/日(各サイクルの1〜 5日目まで)を4週間間隔、シスプラチン(CDDP)※3 80mg/m2を4週間間隔で投与した。
ニボルマブ+イピリムマブ群:ニボルマブ3mg/kgを2週間間隔、イピリムマブ1mg/kgを6週間間隔で投与した。 化学療法群:5-FU 800mg/m2/日(各サイクルの1〜5日目まで)を4週間間隔、CDDP 80mg/m2を4週間間隔で投与した。 |
|
評 価 項 目 |
有効性 | 主要評価項目:PD-L1≧1%の症例における全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)※6
副次的評価項目:無作為化された全症例におけるOS及びPFS※6、PD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例における奏効率(ORR)※6 探索的評価項目:PD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例における奏効期間(DOR)※6 その他の評価項目: PD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例における最良総合効果(BOR)※6 ※6:BICR(盲検下独立中央判定) |
安全性 | 有害事象、臨床検査値等 | |
解析計画 | 有効性の解析:本試験の主要評価項目はPD-L1≧1%の症例におけるOS及びPFS※6 (RECISTガイドライン1.1版による)とされた。OSについては有効性評価を目的とした1回の中間解析が計画され、化学療法群のPD-L1≧1%の症例において136件のPFSに関するイベントが確認された時点、又は最後の症例が登録されてから12ヵ月以上経過した時点のいずれか早い時点でPFSの主要解析及びOSの中間解析を実施することとされた。
複数の評価項目及び解析対象集団を設定することに伴う多重性の調整については、主要解析対象とされたPD-L1≧1%の症例のニボルマブ+イピリムマブ群/化学療法群との比較におけるPFS及びOS、並びにニボルマブ+化学療法群/化学療法群との比較におけるPFS及びOSに対してそれぞれ、0.015及び0.01、並びに0.015及び0.01の有意水準(両側)を割り当てた上で、Bonferroni法に基づくグラフィカルアプローチ(図)により、試験全体の第一種の過誤確率が両側0.05に制御されるよう調整された。なお、中間解析の実施に伴う第一種の過誤確率の制御には、Lan-DeMets法に基づくO’Brien-Fleming型のα消費関数を用いることとされた。 |
|
有効性
主要評価項目:・PD-L1≧1%の症例におけるOSおよびPFS※6 PD-L1≧1%の症例におけるOS及びPFSについて、地域、ECOG PS、転移臓器数を層別因子としたlog-rank検定を用い、ニボルマブ+化学療法群/化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群/化学療法群間でそれぞれ比較した。OS及びPFSをKaplan-Meier法によって推定し、各比較について、割付因子を層別因子、投与群を単一の共変量とする層別Cox比例ハザードモデルにより、ハザード比とその両側100×(1−α)%信頼区間を推定した。 副次的評価項目:・無作為化された全症例におけるOSおよびPFS※6 主要評価項目において有意差がみられた場合にのみ検定を行った(階層的検定)。主要評価項目と同じ層別因子及びPD-L1発現状況(≧1%/<1%[判定不能を含む])で層別化したlog-rank検定により、ニボルマブ+化学療法群/化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群/化学療法群間でそれぞれ比較した。OS及びPFSをKaplan-Meier法によって推定し、生存関数の二重対数変換により生存期間中央値とその95%信頼区間を算出した。割付因子を層別因子、投与群を単一の共変量とする層別Cox比例ハザードモデルにより、ハザード比とその両側95%信頼区間※7を推定した。 ※7:正式に検定される場合は、100×(1−α)%信頼区間も同様 ・PD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例における奏効率(ORR:CR+PR、RECISTガイドライン1.1版による)※6 主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例のPFS※6において有意差がみられた場合にのみ検定を行った(階層的検定)。Clopper-Pearson法を用いて95%信頼区間を算出し、Cochran-Mantel-Haenszel法により割付因子で調整し、ORRの差の推定値とその95%信頼区間※7、群間の層別オッズ比(Mantel-Haenszel推定量)とその95%信頼区間を算出した。 探索的評価項目:・PD-L1≧1%の症例及び無作為化された全症例における奏効期間※6 最良総合効果が部分奏効(PR)または完全奏効(CR)であった症例(RECISTガイドライン1.1版による)について、Kaplan-Meier法を用いて奏効期間の中央値とその95%信頼区間を推定した。 その他の評価項目:・最良総合効果(BOR)※6 投与群ごとにCR、PR、安定(SD)、進行(PD)、Unable to determine(UTD)、Not reportedの割合(RECISTガイドライン1.1版による)を算出した。 サブグループ解析:年齢、性別、人種、ECOG PS、病期、組織学的Grade分類、組織学的分類、病変部位、転移臓器数、病態、喫煙歴、飲酒歴、初回診断から無作為化までの期間、前治療を因子として、OS及びPFSの部分集団解析を実施した。また、投与群を共変量とした非層別Cox比例ハザードモデルを用いて、ニボルマブ+化学療法群及びニボルマブ+イピリムマブ群の化学療法群に対するハザード比及び95%信頼区間を算出し、forest plotを作成した。ORR、DOR、BORについて、日本人部分集団における解析を実施した。 OS及びPFS(BICR)のPD-L1発現状況別(PD-L1[TPS]<1%)のサブグループ解析は、事前に計画した解析ではないものの、医薬品医療機器総合機構の求めに応じて解析した。OS及びPFSの中央値とその95%信頼区間は主要評価項目と同様の方法で算出し、投与群間のハザード比とその95%信頼区間は、非層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。 |
小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
Doki Y et al.: N Engl J Med 2022; 386(5): 449-462[利益相反]本試験はBristol-Myers Squibb及び小野薬品工業の支援を受けて実施された。
安全性 (2021年1月18日データカットオフ) |
副作用は、ニボルマブ+化学療法群で95.8%(297/310例)、ニボルマブ+イピリムマブ群で79.5%(256/322例)、化学療法群で90.5%(275/304例)に認められた。
■ニボルマブ+化学療法群 ニボルマブ+化学療法群の310例において発現率が10%以上の副作用は、悪心58.7%(182例)、食欲減退42.6%(132例)、口内炎31.6%(98例)、貧血30.0%(93例)、好中球数減少21.0%(65例)、疲労19.7%(61例)、下痢19.4%(60例)、便秘19.0%(59例)、嘔吐18.1%(56例)、倦怠感16.1%(50例)、白血球数減少13.9%(43例)、しゃっくり13.5%(42例)、血中クレアチニン増加12.6%(39例)、血小板数減少11.6%(36例)、粘膜の炎症10.6%(33例)、脱毛症10.0%(31例)であった。 重篤な副作用は23.9%(74例)に認められ、発現率が1%以上の重篤な副作用は、急性腎障害1.9%(6例)、大腸炎1.6%(5例)、口内炎1.6%(5例)、肺炎1.6%(5例)、肺臓炎1.3%(4例)、嘔吐1.3%(4例)、低ナトリウム血症1.3%(4例)、食欲減退1.3%(4例)、発熱性好中球減少症1.3%(4例)、下痢1.0%(3例)、悪心1.0%(3例)、疲労1.0%(3例)、貧血1.0%(3例)であった。 投与中止に至った副作用は34.2%(106例)に認められ、発現率が2%以上の投与中止に至った副作用は、血中クレアチニン増加3.5%(11例)、末梢性感覚ニューロパチー2.6%(8例)、肺臓炎2.6%(8例)、慢性腎臓病2.6%(8例)、腎クレアチニン・クリアランス減少2.3%(7例)であった。 ニボルマブ+化学療法群で死亡に至った副作用は、腸壁気腫症1例、肺炎1例、肺臓炎/気道感染1例、急性腎障害1例、肺臓炎1例であった。 ■ニボルマブ+イピリムマブ群 ニボルマブ+イピリムマブ群の322例において発現率が10%以上の副作用は、発疹17.1%(55例)、甲状腺機能低下症13.4%(43例)、そう痒症13.4%(43例)であった。 重篤な副作用は32.0%(103例)に認められ、発現率が2%以上の重篤な副作用は、肺臓炎3.7%(12例)、肝機能異常2.5%(8例)、副腎機能不全2.2%(7例)であった。 投与中止に至った副作用は17.7%(57例)に認められ、発現率が2%以上の投与中止に至った副作用は、肺臓炎2.5%(8例)であった。 ニボルマブ+イピリムマブ群で死亡に至った副作用は、肺臓炎2例、急性呼吸窮迫症候群1例、肺塞栓症1例、間質性肺疾患1例、急性腎障害1例、全身健康状態悪化1例、内出血1例であった。 ■化学療法群 化学療法群の304例において発現率が10%以上の副作用は、悪心52.0%(158例)、食欲減退42.8%(130例)、口内炎23.4%(71例)、貧血22.0%(67例)、便秘21.7%(66例)、しゃっくり17.4%(53例)、好中球数減少17.1%(52例)、疲労16.4%(50例)、嘔吐16.1%(49例)、下痢15.1%(46例)、倦怠感14.8%(45例)、血小板数減少10.5%(32例)、血中クレアチニン増加10.5%(32例)、脱毛症10.5%(32例)であった。 重篤な副作用は16.1%(49例)に認められ、発現率が2%以上の重篤な副作用は、嘔吐3.0%(9例)であった。 投与中止に至った副作用は19.4%(59例)に認められ、発現率が2%以上の投与中止に至った副作用は、血中クレアチニン増加3.6%(11例)、腎機能障害2.3%(7例)であった。 化学療法群で死亡に至った副作用は、急性呼吸不全1例、敗血症性ショック1例、敗血症1例、急性腎障害1例、死亡1例、肺炎1例であった。 小野薬品工業 / ブリストル・マイヤーズ スクイブ:国際共同第V相(ONO-4538-50/BMS CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料
|
オプジーボ
4. 効能又は効果(一部抜粋) 根治切除不能な進行・再発の食道癌
5. 効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
5.17 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.25、17.1.26参照]
6. 用法及び用量(一部抜粋)〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔、1回360mgを3週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
7. 用法及び用量に関連する注意(一部抜粋)〈効能共通〉
7.1 本剤は、30分以上かけて点滴静注すること。
〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉
7.13 化学療法未治療患者に対する本剤単独投与の有効性及び安全性は確立していない。
7.14 他の抗悪性腫瘍剤との併用投与の有効性は、PD-L1発現率(TPS)により異なる傾向が示唆されている。TPSについて、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤を含む併用療法の必要性について慎重に判断すること。[17.1.26参照]
7.15 他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合、併用する他の抗悪性腫瘍剤は「17.臨床成績」の項の内容を熟知した上で、選択すること。[17.1.26参照]
※オプジーボ® Drug InformationのPDFはこちら
※ヤーボイ® Drug InformationのPDFはこちら
2023年2月作成
7356-JP-230013007
GI cancer-net
消化器癌治療の広場