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瀧内:次はJCOG 0407試験に移りたいと思います。私が発表した演題で恐縮ですが、山ア先生にサマリーをお願いします。
山ア:JCOG 0407試験は無作為化第II相試験であり、対象は腹膜播種を有する切除不能の胃癌で、なおかつ初回治療として5-FU系の薬剤に対して無効となった症例です。100例が登録され、1st-lineとは投与法を変えた5-FUを継続投与するbest available 5-FU群とweekly paclitaxel (PTX) 群に1:1の割合で無作為に割り付けられました(図6)。登録症例の97%はPS 0-1でした。
一次エンドポイントのOS中央値は両群とも7.7ヵ月で、PFS中央値はbest available 5-FU群が2.4ヵ月、weekly PTX群は3.7ヵ月です。また、3rd-lineへ移行したのは5-FU群が49例中42例で、33例 (67.3%) がweekly PTX療法を受けています(表6)。結論として、weekly PTX群のPFSが良好であるのにOSに差が出なかったのは、3rd-lineでのbest available 5-FU群のクロスオーバー率が高かったためではないかと考えられます。
瀧内:レポートの監修を担当された寺島先生はどのように思われましたか。
寺島:2nd-lineで腹膜播種を有する症例のOSが7.7ヵ月というのは素晴らしい成績で、日本の腫瘍内科の先生方の治療や管理が優れているのだと思います。
本試験の結論としては、「3rd-lineでクロスオーバーしているので、weekly PTX療法が優れている」という解釈になるのでしょうか。
瀧内:そうですね。先ほどの表をご覧いただくとわかる通り、best available 5-FU群の85.7% (42例/49例) が3rd-lineに移行し、しかも67.3% (33例/49例) がweekly PTX療法を受けている。ということは、結局「2nd-lineとしてのweekly PTX療法 vs. 3rd-lineとしてのweekly PTX療法」になってしまったわけです。
また、クロスオーバー率が高かった理由としては、我々が当初想定したよりもきわめてよい症例が登録されたことが影響していると思います。発表の際、欧米の研究者から「腹膜播腫はもっと予後が悪いのではないか」と質問され、現在の日本の状況との隔たりを感じました。
吉野:クロスオーバーの試験において、OSで有意差を得るというのは不可能ではないかと思うのです。したがって、薬効を見るうえではPFSが最適と判断し、この試験はpositiveと捉えたほうがよいのではないかと思います。進行胃癌の2nd-lineはweekly PTX療法がきわめて有望であり、みなし標準治療ぐらいに考えてもよいのではないでしょうか。
大津:私も吉野先生と同意見で、本試験は結果としてはnegativeかもしれませんが、weekly PTX療法に関してはpositiveに解釈してもよいのではないかと思います。また、AVAGAST試験でも感じたことですが、従来とは対象としている患者さんの質が変わりつつあります。昔は治療を始める時点で経口摂取も静注もできないような状態の悪い方がいらっしゃいましたが、最近ではあまり見かけなくなりました。
瀧内:本試験の登録患者も、経口摂取のできる方ばかりです。これからは腹膜播腫を別にして考える必要はないかもしれませんね。坂本先生はweekly PTX+S-1療法のSAMIT試験12)をやっておられますが、本試験についてはどのように思われましたか。
坂本:私はもともと胃癌に対するweekly PTX療法の効果を高く評価しており、一時は1st-lineで使用してもよいのではないかとも思っていました。Weekly PTX療法は、現在は日陰に追いやられている感がありますが、クロスオーバーであっても、有効性があることを世に出していただけるのは喜ばしいことです。補助療法の分野で私がSAMIT試験を支援しているのもそれが理由です。
瀧内:ありがとうございます。本試験のOSはnegativeでしたが、先生方にはpositiveに捉えていただいているようで、principle investigatorとして感謝します。
● | 腹膜転移を有する5-FU不応の胃癌に対する二次治療としてのbest available 5-FU療法とweekly PTX療法を比較した結果、PFSでは有意差を得られたものの、OSにおけるweekly PTX療法の有用性は認められなかった。 |
● | Best available 5-FU群の67.3%が3rd-lineでweekly PTX療法を受けたことが、OSに差を認めない一因と考えられた。 |
● | 2nd-lineとしてのweekly PTX療法の有用性は、臨床的には評価できるものである。 |