2014年 米国臨床腫瘍学会年次集会 現地座談会 CRC編

肺切除および肝切除

#3584:肝転移切除後のUFT/LV
肝転移切除後の補助化学療法としてのUFT/LVの有効性を検証

室:続いて、肝転移切除後の補助化学療法として、UFT/LVの有効性を検討した試験です。

中村:2004~2010年に大腸癌肝転移R0切除例の180例が登録され、手術単独群とUFT/LV群に無作為に割り付けられました。なお、UFT/LVを5サイクル完遂できた症例は54.9%となっています。

 主要評価項目のRFS (recurrence-free survival) は、3年時点でUFT/LV群38.6%、手術単独群32.3%、5年時点でそれぞれ35.6%、32.3%と、UFT/LV群で有意な延長を認めました (HR=0.56, p=0.003)。一方OSは、3年OSがUFT/LV群81.6%、手術単独群82.8%、5年OSがそれぞれ66.1%、66.8%で、有意差を認めませんでした (HR=0.80, p=0.41)。なお、再発形式として、肝転移のみ、肺転移のみ、肝および肺転移、肝および肺転移以外に分けて比較しましたが、両群で差はなく (p=0.51)、再発後の切除率についても両群に有意差は認めませんでした (p=0.10)。

 以上より、肝転移切除後のUFT/LVによる補助化学療法は再発予防に有用だと結論づけられました。ただ、OSには有意差を認めなかったため、2年後に最終解析を行うということです。

室:大村先生、お願いします。

大村:患者の集積に6年10ヵ月かかっていますが、それだけR0切除が行われた孤立性の肝転移症例を集積することの困難さがうかがえます。NSABP C-06試験2) やJCOG0205試験3) の結果から、術後補助化学療法としてUFT/LVは5-FU/LVと同等とされているため、肝転移R0切除後の補助化学療法としても、UFT/LVまたは5-FU/LVは有効であると考えられます。

室:これまではエビデンスがなく、治療は施設によって異なっていたため、このようなデータが出てきたことに意義があると思います。大村先生、UFT/LVは標準治療ということになるのでしょうか。

大村:欧米からも肝転移切除後の術後補助化学療法に関する報告がありますが、症例数は本試験の180例未満です。標準治療ではありませんが、今後はUFT/LVを基準として考えてもいいと思います。

小松:室先生は、実臨床ではどうされていますか。

室:当院は、JCOG0603試験 (肝転移切除後の手術単独 vs. mFOLFOX6の第II/III相試験) の事務局施設ですので、手術単独がcontrol armになっています。ただ、試験に登録されない高リスク症例に対してはFOLFOXを行うことが多いです。

小松:当院では、ほぼ全例にFOLFOXを行っています。

室:JCOGでは手術単独が標準治療という位置づけで臨床試験が始まっていますが、一方で既にFOLFOXを施行している施設も多いのが現状です。本試験は、その中間的な薬剤における結果ですね。

寺島:先行研究の結果を見ると、手術単独に対してOSで有意差を示していませんが、術後補助化学療法は必要ないという結論にはならないのでしょうか。

室:EORTC40983試験 (手術単独 vs. 周術期FOLFOX4) の結果は非常にcontroversialです。長期追跡によりOSで有意差を認めなかったため、結果をnegativeと捉えている人もいますが、主要評価項目のPFSはmetしており、OSは症例数を増やせば差が開くと解釈して、FOLFOXを標準治療と考えている人も多いです。

寺島:ただJCOG0603試験は手術単独がcontrol armですよね。

小松:実臨床では肝切除後に無治療ということは少ないのに、手術単独が標準治療と言われると、疑問が残ります。

室:やはり、前向き試験をきちんと行って評価すべきですし数少ない前向き試験である本試験はマイルストーンになると思います。ただ、やはりOSのベネフィットが必要だと思いますし、今回の肺転移切除、肝転移切除の2試験から、この対象においてDFSがOSのsurrogacyとなるのかという疑問はあると思います。

佐藤 (武):本試験では、UFT/LVでさえも5サイクルの完遂率が54.9%でした。肝切除後は通常の術後化学療法とは比べものにならないほど有害事象が発現します。それも、臨床試験がなかなか進まない原因の1つだと思います。

Reference
  • 2) Lembersky BC, et al.: J Clin Oncol. 24(13): 2059-2064, 2006[PubMed][論文紹介
  • 3) Shimada Y, et al.: 2012 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3524
Lessons from #3584
  • 大腸癌肝転移切除後のUFT/LVによる補助化学療法は、再発予防に有用である。
  • 本試験の結果は、日本における大腸癌肝転移切除術後の補助化学療法のマイルストーンになると考えられる。

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